第19話 精霊と仲直り
召喚2日目、夜。
あのあと、大気の精霊・ソラと気まずい雰囲気のところにコーラルが帰ってきて、お昼を食べたり、ここでの生活の事なんかを聞いて午後を過ごした。
魔王は朝出て行ったきり、顔を見せもしない。いや、それは別にいいんだけど。
ソラはあのあと一言もしゃべないままに、部屋の片隅で外を見つめている。
コーラルが席を外すたび、何かしゃべりかけようと思うけれど、何と声を掛けていいかわからない。
そうこうしてるうちに、夜になってしまった。
お風呂に入って、夕飯を食べて、後は寝るだけ。
コーラルはとなりの侍女用部屋に下がっていった。
再び、ソラと2人きりになる。
チラリ、とソラを見れば、さっきの悲しそうな表情のままで、佇んでいる。
半透明の美女が、部屋の片隅で涙を流さんばかりにしている様子は、若干恐いものがある…。
そんなことはさておき…
この無垢な可愛い子を傷つけたのは私。
でも、私にも、譲れないものがある。
「ソラ」
呼びかけに振り返ったソラは、今にも泣きそうな顔をしていた。
「ごめんね」
『……』
「でも、やっぱり私は、元の世界に還りたいと思う。ソラに会えて、嬉しかった。けど、やっぱりここは私の知らない世界で、私のあるべきは向こうの世界だから。
ソラがそのための手伝いをしたくないなら、無理にお願いはしないよ。でも、還るまでの間でも、ソラと仲良くなれたら、私は嬉しい」
『ホタル…』
伝えたい気持ちは伝えた。ソラがどうするかは、ソラの自由。
仲良くなりたいのはホントだけど、別れがわかって一緒に居てってお願いするのも、ずるいと思うから…。
『私も…私も、ホタルと仲良くなりたい。
ホタルの願いも叶えてあげられないのに、ホタルは私と、仲良くしてくれる?』
見上げるようにそう尋ねてきたソラは、抱きしめたいくらいかわいい。美少女にこんな顔させたらイチコロだよ!!
「もちろんだよ!!」
『ゴメンね…ホタル』
「謝るのはこっち。ソラ、改めて、よろしくね!!」
仲直りの抱擁。
ソラは半透明なのに、ちゃんと触れて、あったかい。
あったかさに、安心する。
「仲良くなったものだな」
安心できない声がした。
ソラと仲直り。そしてまたもや魔王様降臨です。