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白馬の魔王様  作者: あむ
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第15話 淫魔とメガネ

 さて、どうしよう?


 一人残された魔王改めコクヨウの部屋で途方に暮れる。

 私の暗い気持ちをよそに、日は燦々と降りそそいでいてなんだか現実味がない。これからどうしたものか…とりあえず、部屋を見回してみる。


 何度見ても広い部屋は、私の部屋が4~5個は入るんじゃないだろうか?ってほどの広さ。

 そんな広い部屋の真ん中に置かれた馬鹿でかいベッド。ベッドのほかは今居るテーブルセットと、壁際の棚、あとはソファーセットがあるだけのシンプルな部屋。すべて高級品でしつらえられてはいるけれど、それも嫌味にならない落ち着いた部屋。くやしいが、私の好みだ。

 それにしても…やっぱりベッドはひとつだよね? 昨日は客間が用意できなかったとか言われたし、眠かったからつい一緒に寝ちゃったけど、このままなし崩しに一緒に寝るわけにもいかない。客間がダメなら、あっちのソファーででも寝よう。大きさも私が寝るくらいはあるし。いざとなれば絨毯だってこんだけフカフカなら絨毯の上だってかまわない。自分の身は自分で護らねば!!

 あんな奴の子供なんて作ってたまるか!!





「后様、失礼いたします」


 ひとりで握りこぶしを突き上げていた背後からの呼びかけに、心臓が飛び出るかと思った。

 振り返ればそこにはコーラルの姿。そういえばいつの間にか部屋を出てたんだ。


「お茶のおかわりいかがですか?」

「あ、ありがとう」


 にっこり微笑む白銀の侍女は、日の光のもとで見ても美しい。

 白銀だと思っていた髪は、光に透けて淡いピンクに見える。瞳もきれいなピンク色。コーラルという名の通りの珊瑚色だ。癒しの微笑みを浮かべる様は天使か妖精かと思えるほど。

 それか、コーラルが精霊さんなのではなかろうか?

 精霊がどんな姿をしているかわからないけど、私の想像では人型なら美形に違いないと踏んでいる。


「コーラルって精霊なの?」

「いいえ、私は淫魔ですわ」

「インマ…??」


 疑問はとりあえず聞いてみようと問うてみたら、あっさり否定の言葉が返ってきた。

 っていうか、インマ? 淫、魔……?? 淫らな、魔族…???

 聞こえた単語を脳内変換させて、愕然とする。この清楚そうな美女が、淫魔ですと??


「はい、淫魔でございます。ヒトの精を糧に生きております」

 そんなステキな笑顔で、精とか言わないで頂きたい。


「あ、后様の精を奪うことは禁止されておりますのでご安心を」

「え、あ、はい…」


 一瞬、笑顔が獲物を狙うものになった…気がした。

 っていうか、禁止されてなかったら奪う気ですよね? チラリと見えた舌がなんかすんごいエロいんですけど!? 隙あらばみたいなそんな感じ?? さっきまでの可憐な天使はどこに???




「ところで、どうして精霊などと?」

 私の怯えた様子を察したのか、コーラルが話題を変えてきた。

 笑顔も元の天使の笑顔に戻っていて安心する。


「私は魔力が使えないから、精霊の力を借りればいいってコクヨウが言ってたから」

 なんとなく、元の世界に還るためとは言わないほうがいい気がして、ニュアンスを変えて聞いてみる。まぁこれでも間違いではないしね。


「コクヨウとは魔王様のことですわね!! もう名前で呼び合う仲だなんて!! ステキですわ!!」

「え、ちょっと…」


 言った内容とは違うところに食い付いてきた。何、名前で呼ぶってそんなにたいそうなことなのか?? やっぱ魔王と呼んだほうがいいんだろうか?


「あ、精霊のことでしたわね」

「そうそう。精霊。 どうやったら力を借りれるか、魔王は教えてくれなくて。

コーラルは知ってる?」

「いえ…。私も精霊を見ることは出来ませんから…。

精霊は魔力が高いものでしか姿が見れません。また、魔力が高くても精霊に嫌われていては姿が見れません。魔族は自分の魔力が使えることもあって、精霊の力を必要としていません。そのせいか、精霊にも好印象は持ってもらえないらしく、魔族で精霊の姿を見れるものはほとんど居ないと聞いています」

「そうなの…」


 がっくりと肩を落とした。

 姿も見せない精霊たちの力を借りるなんてどうしたらいいんだろう?



 とりあえず、コーラルが注いでくれた紅茶を飲む。

 ほんのり甘いお茶にほっこり落ち着いたところで、ひとつ思い出した。


「コーラル、私のメガネ、持ってる?」

「あ、はい。お預かりしております」


 すっと出されたコーラルの手が淡い光に包まれたと思ったら、その手に見覚えのあるメガネが現れた。何度見ても魔力ってすごい。こんなすごい力があるのに、私には使えないなんて…。


「わずかにですが、こちらに魔力が感じられましたので、一時お預かりさせていただいておりました」

 メガネを差し出しながら言われた言葉に、目を瞬かせる。メガネに、魔力??

 そんな気もしてたけど、ホントにそんなメガネだったとは。


 一応コーラルに礼を言って受け取る。

 中学から使っている相棒は、少しくたびれているけれど、それも愛着がある。


「后様はそのようなもの掛けないほうがお美しいと思うのですが…」

 コーラルのお世辞を聞き流しながら、メガネをかける。と、世界が一瞬でクリアになった。





 



『こんにちわ♪』


 クリアになった視界に、背後から覗き込むように入って来たひとつの影。

 それは、うっすら透けた、美しい少女だった。


次回、精霊さんの登場です。

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