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白馬の魔王様  作者: あむ
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第14話 精霊と俺様魔王

「精霊って、なに?」

 私のもっともだと思われる質問に、魔王は深いため息でもって応えてきた。

 つくづく失礼な奴だ。


「だって、私の世界にはそんなのいなかったんだもん。教えてくれたっていいじゃん」

 少しすね気味に言ってみたけれど、ちょっと言い方が子供っぽくなってしまってなんか若干恥ずかしい…。もう28なんだから、年相応のしゃべりをしないと。なんかこっちにきてからどうも調子が狂って困る。


「…精霊は自然界を支え、自然の力を使う。普段目には見えないが、そこかしこに存在する。

魔族は精霊の力は使えないが、人間であるお前なら力を貸してもらえるんじゃないか?」

 私の挙動不審っぷり(自分でも自覚はある)も気にせず応えてくれた。彼は案外いい奴なのかもしれない。


「どうしたら貸してもらえるの?」

「そこまでは教えられないな」

「な、なんで!?」

「何度も言うが、俺様はお前に還ってほしくはないんだ。なのにどうして還るための手助けをそこまでしなくてはいけないんだ。ここまで教えてやっただけ感謝してほしいもんだ」


 前言撤回。やっぱやな奴だ。

 でもとりあえず、還る糸口は見つかった。どうしたらいいかはまだわかんないけど、この世界の自然にいる精霊さんを捕まえて力を貸してもらえばいいんだ!

 ちょっと希望が見えてきた。


「もうひとつ補足しておいてやると、お前が還るにはそれなりの膨大な力が必要だ。精霊一匹くらいの力じゃ到底還れないから気をつけろよ」


 希望が見えて表情を明るくした私に、ニヤニヤ笑顔の魔王が補足説明をしてくれた。なんだか先は長そうだ。

 ところで、精霊って一匹二匹で数えるのか?っていうか、精霊ってそんなにたくさんいるのか? 精霊ってどんなものかもわからない私にそんなこと言われてもって感じだけど、たぶん、いやきっと、私の気持ちに水を差したかっただけに違いない。

 現に、還る道は長そうだとちょっと気持ちが落ちてしまっている。そんな私を見て、魔王は嬉しそうに、いたずらが成功した子供のように笑ってるし。

 やっぱりいやな奴だ。





「さて、他に何か聞きたいことはあるか?

俺様はお前と違って忙しい。あまりお前にばかり時間を割いているわけにはいかない」

「あ、ごめん、えっと…」


 って、そっちが勝手に私を呼んだわけだから、説明責任はそっちにあるでしょ!? 私だって元の世界でなら忙しいわい!! なんでそんな恩着せがましく言われなきゃならんのだ!

 まぁでも、仮にも魔王なんだし確かに忙しいんだろうし…なんて考えちゃう私ってお人よし…。


「あなたの名前、なんていうの?」

 そもそも魔王に名前ってあるんだろうか?とか思わないでもなかったけど、それならそれで魔王と呼べばいいわけだし。会話をする上で相手の名前を知らないってなんか気持ち悪い。


「知ってどうする?」

「え、どうするって、名前を呼ぶけど…。何、ここって名前を呼ばない文化のところ?

そしたら私はあなたをなんて呼べばいいわけ?」


 知ってどうするとか、そんな返事が返ってくるとは夢にも思わなかった。世界が違うと文化も違うってことだろうか?けど、コーラルは普通に名前教えてくれたけどなぁ? 変なあだ名で呼べとか言われたらどうしよう?

 っていうか、私も魔王に名前言ってないし。…聞かれてもないけど。


「私の名前は蛍。さっきからずっとお前って呼ばれてるけど、名前で呼んでくれたほうが私は嬉しい。

私は魔王とでも呼んだらいい?」


 魔王が返事をくれないので、今のうちに自己紹介。ずっとお前とか言われてるのに若干むかついてたしね。名前って大事だと思うわけですよ。


「俺様の名前はコクヨウだ。コクヨウ様でも魔王様でも好きなように呼ぶといい」


 散々ためといてその返事ってどうよ?

 その上から目線はなんともならんのか?

 魔王様だから無理なのか?


「じゃあコクヨウ、これから還るまでの間だけよろしく」

 魔王の意見は無視して呼び捨て。鬼畜むっつりな俺様魔王には呼び捨てで充分ですよ。


「ホントにいい根性してるな。まぁよろしく、ホタル」

 苦虫を噛み潰したような表情でよろしくとか言われても、ぜんぜんよろしくしたくない。

 ってか、初めて名前を呼ばれて鳥肌がたった。気持ち悪いとかじゃなく、なんか性的な感じで…。色気のある声で名前呼ぶのは止めて欲しい。…名前教えるんじゃなかったかも。





「あ、あと、私はどこの部屋に行けばいい? ここってコクヨウの部屋なんだよね?」

 話は終わったとばかりに席を立とうとするコクヨウに慌てて質問する。

 人の部屋にひとり残されても、居心地が悪くて仕方がない。后として召喚したわけだから、客間くらい用意してあるだろうと思ってした質問だったんだけど…


「ここに居ればいい。その方が、子供を作るにも俺様を惚れさせるにもちょうどいいだろう?」

「え、そんな、ちょっと!!」


 ありえないセリフを残して魔王様は出て行ってしまいました。

 子供作る気ないし!! 惚れさせるなんて無理にきまってるし!!

 そろりと部屋を見回しても、ベッドは昨日魔王と寝たひとつだけ。

 …私、これからどうなるんだろう…??

 

 誰も居なくなった部屋で一人、途方に暮れた。





ようやく魔王の名前が出せました。黒曜石からとって、コクヨウです。

長い名前を考えるのが苦手なので家名云々は省略で。


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