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白馬の魔王様  作者: あむ
10/35

第10話 闇夜の満月


「そこへ座れ」


 可愛げなドレスに着替えて、髪も結ってもらって、プチ変身した私に向かって、魔王はそっけなくそう言い放った。

 いやさ、別に褒めて欲しいとかそういうんじゃないんだけどさ、一応今まで着た事ないような服着てるわけだし、ちょっと第3者的な人の意見も聞きたかったというかさ…。なのに人をさっと一瞥しただけで放置ってなんかヒドイと思う。

 まぁ彼氏彼女でもあるまいし、こっちではこんな服だって当たり前なんだろうけどさ。

 

 ブツブツ口の中だけで文句を言いながら、魔王に促された椅子に座った。

 若干不機嫌なまま、正面に座る魔王を見ても、彼は相変わらず表情が読めない。

 そういえば正面からこうやってちゃんと彼を見るのは初めてかもしれない。いつもなんだかんだで落ち着いてよく見れなかったし(寝てるときは別にしてだけど)。じっくり見れる余裕がなかった。

 よく見ても、やっぱりイケメンだ。

 黒い髪は短いのにキューティクルがつやつやしてるし、浅黒い肌にすっと通った鼻筋が男らしい。足も長いし、髪の間にチラリと見える(ツノ)がなければ外国のモデルっぽい。ってか、角って…ホントに魔族なんだよねぇ。尻尾とかもあるのかな?こんなモデル風なイケメンに尻尾って…機会があれば見てみたい…。

 あと、寝ている時はわからなかったけど、長い前髪に隠れている瞳は明るい金色。服も含めて全身黒で満たされる中、瞳だけが輝いて見える。蜂蜜色で、キレイ。


「お月さまみたい」

 思わず漏れた心の声に、魔王の顔がわずかに歪んだ。しかも、負の方向に。

 昨日こっちに来てから嘲笑か無表情のどちらかしかなかった彼が見せた初めての表情。

 興味なさ気だった視線が一転した。

 とたん、魔王から黒い霧のようなものが溢れ出す。


 なんなのさ?? 私そんなに気に触ること言った??

「あなたの目、満月みたいですごくキレイだと思っただけなんだけど…」

 黒いオーラに押されて、恐々告げる。

「キレイ…この目が?」

「うん。夜の闇を照らす満月って感じで、キレイ。

前髪なんかで隠さずもっと見せたらいいのに」

 キレイなものをキレイと言って何が悪い?せっかくキレイな色なのに、隠したらもったいないじゃんか。そう言うと、魔王の表情が少し、和らいだ。

「やっぱりお前は変わっている」




「で、何が聞きたい?」

 なんだかわからないままに勝手に変わり者扱いされて、気が付いたら黒い霧もなくなっていた。

 そして、無表情に戻った魔王からの質問。

「何がと聞かれると…とりあえず…」


きゅ~~ぐりゅるるぅ~~


 質問をしようとしたところで、お腹がなった。うん。もちろん、私の。

 だって、しょうがないじゃない。

 そりゃ、昨日の夜バームクーヘン食べたけど、もう朝だし、私は朝からしっかりご飯食べる派だもの!!

 …恥ずかしいのは恥ずかしいけどね。


 羞恥に下を向いた私の耳に届いたのは、魔王の馬鹿にした笑い。

 これで何回目だろうか、こうして鼻で笑われるのは…!!

 まぁさっきみたいになんかどこか悲しそうににらまれるよりはいいけど。

 ―――って、大変だ、イケメンに惑わされてる!!


「また何を一人で百面相してるんだ。 食わないのか?」

 一人あわあわしてる間に、目の前のテーブルに朝食が用意されていた。

 い、いつの間に…。


「食わないなら片付け―――」

「食います!!」

 魔王が言い終わる前にさえぎり、食事にかかる。

 腹が減っては戦は出来ぬってね…って、これ前にも言った?

 まぁともかく、私にとって食事はかけがえのないものなのですよ。


 朝食はサンドイッチっぽいもの。

 見た目はサンドイッチなんだけど、中身がいまいちよくわからない。やけに鮮やかなピンクとか、真っ黒いどろっとした何かとかが、パンっぽいものに挟まっている。

 そういえばここ、魔界だった。…食べれるだろうか…?


「人間が食べても支障のないものを用意した。安心して食べろ」

 そう言いながらも、魔王の前には食事はない。

 優雅に紅茶を飲んでいるだけだ。

 というか、その紅茶何杯目? 横からコーラルが給仕する様子はすごく絵になる光景だけど…お腹チャポチャポにならないだろうか?

「あなたは食べないの?」

「俺はお前が腹を出して寝ている間に食べた」

「あ、そう…」

 いちいち嫌味が癇に障る奴だ。


 怒りに後押しされて、サンドイッチもどきに手を伸ばす。

「おいしぃ…」

 ピンクはさっぱりとした甘さのジャムっぽいものだった。黒いのは予想外にタマゴっぽい。どちらも意外とおいしい。他にも黄色いキュウリっぽいものとか、緑のシーチキンっぽいものとか。

 結局”っぽい”わからないのがくやしいところだけど、またおいおいコーラルにでも教えてもらおう。

 





「私、元の世界に還りたいのだけど」

 朝食を無事に胃に収めて紅茶を頂いてから(紅茶は元いた世界のものと変わりないものだった)、やっと魔王に切り出した。

 魔王の答えは…



「それには、条件がある」

ようやく魔王様の容姿描写。個人的に男性の長髪って苦手なので短髪設定なのですけどいかがでしょ?

主人公のが自由すぎて話がなかなか進みません…。

次話、魔王様の出す条件とは?



誤字脱字の指摘・感想等お待ちしてます!

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