第1話 いつか王子様が…
28歳OL、現在彼氏なし。
昨日、私の後から入った後輩が寿退社していった。
後輩に花束を渡し、笑顔で見送った私に、
「青山にはいい人はいないのか」
と田舎のお父さんのごとく聞いてくる部長に
「部長、それはセクハラです」
とそっけなく返す。
このやり取りも、これで何回目になるんだろう…。
入れ替わりの早いオフィスの中、気づけば私が女性社員の最年長。
お局様コースまっしぐらさ!
田舎のお母さんからも、毎度のように電話口で「結婚はまだなのか」「早く孫の顔が見たい」なんて言われるし。微妙なお年頃なんですよ。
いつか白馬に乗った王子様が……なんて少女趣味な夢物語を見る気もないけどさ。
でもさ、そんな運命的な出会いがないかなぁなんて、ちょっとは期待したっていいじゃない?
だいだい、会社とアパートの往復をしてるだけの地味メガネが、どうやって結婚なんてできるのさ。
しかも口を開けば毒舌全開で、男性社員からも一線引かれちゃってるし。
婚活、なんて言葉も流行ってるけど……ねぇ?
私まだ28だし。
……なんてのんきに構えてるけど、仲のよかった友人達もみんな嫁いでいってしまったもんなぁ。
遊び仲間まで失ってはホント、出会いの場も激減なわけで……。
このまま一生独身??なんて未来を想像してどんよりしてしまう。
今日は、高校の仲良しグループで唯一残ってた独身組の結婚式。
結婚式が一番の出会いの場なんて聞いたことあるけど、残念ながら全くの収穫なし。
手元にあるのはずっしり重たい引き出物のみ。
熱々な2人の愛をいっぱい詰め込んで、重たいったらありゃしない。
「あ~あぁ、私にも白馬の王子様現れないかなぁ」
寒空の夜空にそうつぶやいた、と思う。
直後、くらりと世界が回った。
2次会まで出てはいたけど、そんなに飲んだつもりはないんだけど…。
暗転した世界に光が戻った後、気づけばなにやら温かいモノの上に座っていた。
あれ?もう家に帰ったっけ??
しかも何やら安定感が悪い……と見れば――――
あれ?何これ??
違和感に視線を上げれたそこにあったのは……
それはそれは端正な顔をしたイケメン様でした。
――って、どういうことさ!?