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【短編小説】魚卵ねがい魚卵

掲載日:2025/12/17

 ある日のことでございます。

 おれがスマホを見ながら自分を慰めてるいたところ、はたと気づいたのであります。

 その画面の中で気持ちが良いのは、男優の逸物であります。しかし、男優のそれは労働としての射精でありますので、果たして快楽と呼べるのか?と。

 そうであるならば、おれは何とリンクしようとしているのか。

 とりあえずスマホを置いてティッシュに手を伸ばすところから始めなければなりません。

 


 水平に時間は過ぎていきます。

 水平に明日はやって参ります。

 結局は昨日の続きでしかないのですから、放っておけばたいして新しくも無い朝がきて、やがて夕方になっていくのであります。


 ぼんやりと生きております。

 恥の多い生涯に、恥を上塗りしているのであります。

 橋を飾る垂直に活けられた花や蝶、もしくは着膨れした起立する芋虫たちの合間を縫って魚が川に飛び込んでいく。

 何を言っているか分からないのはおれですから、おれに必要なのは休養だとか頓服であると、思います。


 とにかく、橋からその景色を眺めておりましたり 

 もう何匹が飛び込んだのでしょうか?

 橋の下では、影より黒い猫たちが待ち構えていて、橋から落ちる魚を弾いては、戯れて殺してしまっております。

 なぜ魚たちが落ちていくのかと言いますと、それは願いであり、祈りであるからでございます。

 つまり、お詣りなのです。

 魚たちの流れ作業ようなお詣りは、結局のところ金額だとか真剣さの問題では無く、詣でられる側の気まぐれであったり、詣でる側の目立つ何かが重要なのだろうと思われます。


 


 本当でしょうか?

 結局は運なのです。

 叶えられた祈りや願いが、社の奥から小さな龍になって空を昇っていくのが見えました。

 あれは誰の願いでしょうか?

 おれがティッシュに捨てた願いや祈りはどこに行くのでしょうか?

 何を言っているのか分からないなら、どうぞお帰り下さい。

 セックス、セックス、秘密巨乳スパイ、アナル、乳首、生中出し。



 呼び鈴が鳴る。

 玄関を開けると運送業者の配達員が立っていた。

 定期便か?

 確か去年までは繰り上げ配送をしていて土日は休みだったはずだ。

 今年もそうだと思っていたが、何かシステムが変わったのだろうか。メールきてたか?チェックし忘れたかな。

 可哀そうな事をしたと思うけれど仕方がない。

 少し待たせて冷蔵庫にあったエナジードリンクを渡した。

 疲れ切った表情の配達員は「ありがとうございます」と礼を述べて頭を下げたが、もしかしたら有難迷惑だったかも知れない。

 なにせおれは全裸だったからな。

 



 おれは全裸のまま配達員の背中に張り付いた魚卵を見ていた。

 あれが自分の背中にも張り付いているのかと思ったが、それは孵化する事も無いまま壊死していくのだろうと言う予感もあった。

 おれは末代だ。

 玄関に立ち尽くす末代裸。

 背中に魚卵をつけた配達員は、黒い猫の描かれたトラックに乗って走り去って行く。

 彼の魚卵が孵化した時は、あの猫に悪戯されるのかも知れない。

 彼の願いは何だろうか。

 元旦の休日か、それとも働かずに済むほどの大金だろうか。



 おれが彼の幸福にリンクすることもないだろうし、彼がおれの幸福にリンクすることもないだろう。

 おれが買い物をした時が幸福のピークであって実物は大した意味を持たない。

 何だっていい。

 とにかくおれたちは救われない。

 分かろうとしていないとか、分かっているのに分からないフリをしているのかも知れない。

 とにかくこうして背中に魚卵を付けたまま生きている。

 そして死ぬ。



 相変わらず橋の下では垂直に歩く人たちがいて、その隙間を孵化した魚が泳いでいく。

 時折、龍になって空を昇っていくのもいる。

 その龍だって天網にかかって捉えられているのもいるし、願いなんて叶うもんじゃあないなとため息をつく。

 願われない願いは果たして願いなのか。 


 おれは橋を離れて家に帰る。

 そして腐りそうな魚卵を煮つけながら考える。

 こうやって換気扇から出ていく湯気、それは何かの願いだろうか。

 買春がしたい。

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