【3杯目】ウイスキー
⚠注意事項です⚠
小さじ程度の鬱要素やリアリティの追求
現実の生きづらさ等を描いていますので
気分が悪くなってしまったり、
読みにくいと感じる可能性がございます。
もし、精神的に不安定な状態にある方や、
深く共感しすぎてしまうと感じる方は
ご無理なさらず、閲覧をお控えいただくことを
お勧めします。
混ざる。溶ける。混ざる。
俺は、変なのだろうな。
こうして飲み会をしていても
ふと、仕事が頭をよぎったり、
通知音が聞こえた気がして
スマホを手にとったりしてしまう。
俺はプライベートと仕事の境目が消え
混ざって溶けて一緒になっていた
混ざる。溶ける。混ざる。
美優『ストレートじゃ飲めないです…。』
剛流「ストレート…?」
美優『あ、はい。やっぱりウイスキーってストレートより、こう何かと割ったりした方が飲みやすいなって思いまして…』
真莉『あたしもストレートよりはロックで飲むわね…』
翔『ストレートも好きだけどなぁ僕は…』
剛流「そう、だよな…俺もストレートのがいい気がする。本来の味が楽しめるし…な。」
ストレート…か。色んな事が混ざった俺とは大違いだと思う。カラン…と氷が小さく音を立てるのを聞いてグラスを見つめれば、俺の飲んでいたハイボールが”混ざっている”と自身を嘲笑しているように聞こえ息を吐く。
美優『あ、あのぉ…剛流さん?大丈夫ですか?』
剛流「え?あぁ、酔ったかな…。なんでだ?」
美優『その…元気がなさそうだったので…』
真莉『次はあんたの番ってわけね?吐きなさーい』
翔『剛流、辛いのなら言ってしまうと楽になるよ。僕も楽になったし…』
剛流「…だな。皆も言ってるし俺も言うか。実はだな…主任にもなってと思うかもしれないが、プライベートと仕事の差を上手くコントロール出来てないんだ。飲み会の席である今でさえ、頭の隅には必ず仕事の事が思い浮かんでよ…」
翔『…なるほど。』
真莉『あーね、何もかも忘れてパーッとしたいってのに忘れられないっていうの。あるわぁ〜』
美優『それって…剛流さんが責任感があるからじゃないでしょうか?…素敵な事だと思いますが…』
翔は唐揚げを1つ取り皿に置いてレモンを掛けてから意味ありげにこちらを見つめてくるものだから、首を傾げて彼の言葉を待つ
翔『そうだね、僕も素敵だと思う。別に混ざってても良いんじゃない?だって君が君であることに変わりは無いんだし…この唐揚げもレモン掛けたからってレモンになる訳じゃないだろ?』
剛流「はは、たしかに。っつーか取り皿に取ってるとか偉いな…」
翔『偉いんじゃないよ。レモン嫌いがいるだろ?』
翔に言われて見られる彼女は口を尖らせ
美優『むぅ、で、でも、それこそ、ウイスキーも色んな割り方があるからこそ輝いてますし…!私コークハイ好きです』
真莉『あたしはバニラアイスにウイスキーをかけるの好きね。』
剛流「そう…か。混ざっても良いか…。はは、言われてみれば確かに。俺もハイボールが好きだしな…つーか、バニラアイスにも合うのか?」
翔『合うよ。リキュームって言うらしい』
真莉『やっぱりシェリー樽が一番よね。フルーティーだしバニラアイスが掛けてって言ってる気がするわ…香りも美味しすぎるもの。』
美優『バーボン樽も結構…合いますよ?そもそもバニラっぽい風味のもありますし、キャラメルみたいに甘いのもあるから合いますよ。』
翔『僕はどっちも好きだなぁ…選べないや』
剛流「俺も今度試してみるかな、気になる。」
そんな話をしながら、ハイボールを1口飲み炭酸の泡が喉を優しく弾いた。その時にハッとした…今この時は仕事の事なんて考えずに話に集中していたからだ。飲み仲間と話していると、心が軽くなる。
真莉『絶対にシェリーにしてね?』
美優『そ、その、シェリーもお、美味しい…ですから』
剛流「分かった分かった。」
軽く返事をしながら、小さく”ありがとう”と口にする。もちろん飲み仲間には聞こえていないようで、リキュームについて熱く語っていた。
剛流「やっぱ、飲み仲間ってのは良いもんだな」
翔『なんだよ急に…まぁ、僕もそう思うけど』
真莉『今更って感じじゃない?ふふ』
美優『えっと、私も良いなって思います…。皆さんがいると落ち着きますし、たくさん話せますから』
剛流「俺はあんまプライベートで悩んでも口にしない事が多いからな…こういうのは凄く助かるよ」
翔『俺も君の言葉に救われたし…やっぱり飲んでると話せるようになる事もあるよね』
真莉『分かる。酔いから来る告白?そう言うのってあるわよね』
美優『こ、ここ、告白ですかぁっ!?』
剛流「あー、美優が想像してる告白じゃねぇがな」
真莉『ほんと純粋よね美優って。』
美優『え、へへへ…そ、そうでしょうか…』
翔『見ていて微笑ましいよ』
そういえば、とハッとする。俺も、翔も、真莉も…こんな風に悩みを打ち明けたが、1人だけ打ち明けて無い人がいた。
剛流「にしても、ついつい話しちまうな…。酒のせいかもしれねぇが…」
翔『…無理に話してないんなら良いんじゃない?』
美優『…そうですよぉ、いっぱい飲み語りましょ〜』
真莉『ほんと、美優は酒強いわよね。甘いお酒だーいすきな癖に』
美優『へ?それ関係あるんですか…??』
翔『甘いお酒は度数が高いものが多いからね』
剛流「たしかに、カルーアミルクとかはな…地味に度数高いんだよ」
美優『へぇ…そうなんですね…知らなかったです』
真莉『ふふ、でもやっぱり甘いお酒は最高よねぇ?ガブガブ飲めちゃうっ。』
翔『おいおいやめとけ、弱いんだから水も飲んどけ〜?』
真莉『はいはーい…』
美優『酔うのも良いと思いますよ?私も何となく、楽しくなってきちゃいました…えへへ』
剛流「だな、俺も酔えたら良いと思う。」
そんな話をしている中で、俺は美優の笑顔の奥にほんのわずかだが揺らぎを感じた。それが何かはもう少し酔いが進んだ頃にわかる話しだ。
【ご挨拶】
こんばんは、星彩 宙です。
3作品目が完成しました。
見て分かるとおり、4作品で終わろうと思っております。