【1杯目】ビール
⚠注意事項です⚠
小さじ程度の鬱要素やリアリティの追求
現実の生きづらさ等を描いていますので
気分が悪くなってしまったり、
読みにくいと感じる可能性がございます。
もし、精神的に不安定な状態にある方や、
深く共感しすぎてしまうと感じる方は
ご無理なさらず、閲覧をお控えいただくことを
お勧めします。
合わない。合わない。合わない。
…僕が、変なんだろうか?
僕はいろんな仕事に就いてきた。
だが、いろんな仕事を辞めてきた。
その理由は…合わなかったからだ。
合わない。合わない。合わない。
星光 真莉
『泡無い!もぉ〜!最悪なんだけど!』
賑わいにも負けないその言葉に
僕はハッとして目の前を見る。
ビールの泡が消えたジョッキを持ちながら
彼女は不満そうに口を尖らせていた。
空谷 剛流
『別に泡なんて無くていいだろ…
むしろビールの泡って邪魔じゃね?』
笑って彼女を諭しながら、
4人の中で誰よりも早く飲み終わり2杯目の
ビールに突入している彼と
水城 美優
『ま、まぁ…ビールは好みがありますからね…
私は飲めませんし…飲めるの凄いと思います。』
困り眉で苦笑いを浮かべ、
まだ1杯目のカシスオレンジをの入ったグラスを
両手で持ち少しずつ飲んでいる彼女が居た。
海林 翔
「それに、早く飲まないからでしょ?」
僕がそう口を尖らせる彼女に言えば
彼女は泡の消えたビールを見つめて小さく
”そうだけどさ〜”と周りの騒がしさに
紛れながらもに言葉を告げる。
剛流『なぁなぁ、ビールの泡ってよ
苦味成分が強いらしいぜ?
だから泡だけだとかなり苦いらしい』
翔「へぇ〜…んじゃ〜身体に良いのかな?」
真莉『何でそうなんのよ』
翔「だって、良薬口に苦しって言うから?」
美優『あながち、間違いじゃないかもしれないです』
あ、そ、その…泡はタンパク質の塊…らしいので』
剛流『じゃあ身体に良いな!ハハ』
美優『い、いえ、飲みすぎは毒です…』
そんな他愛もない雑談をしていると
俺は指されてこう言われた。
真莉『…ていうかさ、あんた最近、元気ないわよね。』
美優『あ、それは…私も、思ってました…』
翔「へ?僕???」
剛流『そうだ。どうしたんだ?
また仕事で上司にでも扱かれたか?』
予想外だった。僕が悩んでることを
皆、気付いていたんだ。よく考えてみれば
この飲み会の間に考え事をしてしまい、意識が
ぼーっとしてた時も多かったのかもしれない
おそらく限界だったのだろう。飲み仲間達の視線に
僕は観念して悩みを言う事にした。
翔「…僕は仕事を辞めてしまってから、
いろんな場所でバイトをしているだろう?
だけど…何やっても合わないって感じてしまって…
でも…本当は何年も続けるべきなんじゃないかな
とも思ってて…それでとても悩んでいたんだ。
剛流は5年も働いて主任になってるんだろう?凄いよ。」
剛流『あ〜?そうかぁ?まぁ、ありがとさん
でもよ、翔は仕事を辞めたとは言え、いろんな仕事をした
経験があるんだろ?俺には今の仕事しかねぇけどよ…
視野を広げるってのも大事な事なんじゃねぇか?
やっぱりよ、隣の芝生は青いんだよ。
俺はあんたがした、いろんな経験が羨ましいからな』
真莉『ふーん、そんな事で悩んでたんだ。
因みにあたしも色んな仕事点々としてたから
気持ち分かるよ。でもさ、合わないなら辞めるで
正解じゃない?そうじゃなかったら今働いてる仕事が
無いわけなんだし。結局は自分の合わない仕事なんて
続けてても苦しいだけだしね〜
だから、あたしはそう思うようにしてるよ。』
美優『むしろ、その…合わないからと言って
ちゃんとお仕事を辞めれるというのは…
凄いと思います。あ、け、決して貶してるわけ
ではなく…。だって、合わないと言ってもお仕事を
辞めると言うのは、とても…勇気がいりますから…』
それぞれいろんな意見が飛び交い、全てに相槌を返す
いろんな話に”なるほど”とは思ったけれど…
どうしても、飲み仲間だからこその気遣いがある
ようにも感じて…僕は困ったように微笑む
翔「そう、なのかな…。やっぱり君達は優しいね。
僕は、男なのにしっかりとした役職にも付けずにいる
そんなの、嫌じゃないかい?いろんな仕事を
転々としているなんて恥ずかしいと思わないのかい?」
真莉『はぁ?誰かがそう言ったの?は〜時代遅れすぎ
ていうかさ、そういう奴って男だろうが女だろうが、
ケチつける奴は付けるから。そういう奴らの為に
気にするとか…翔はさ、お人好しすぎるんだよ』
翔「性別関係なく?そんな事あるのかな…」
美優『あります!!!文句言いたい人は誰にだって
文句を言う人もいますから。私の経験ですけど…
お昼ご飯にお菓子にしたら…女子力無いねだとか、
逆にお弁当にしたら…毎日大変じゃない?
ってどっちにしても笑われるんです。』
剛流『ひえぇ〜怖ぇ…そんなことあるんだな。』
真莉『あー、そういうのもあるわ…そういう職場は
あたし即辞める。だから今の仕事出来てるし
そういう奴らにむしろ、感謝的な?あっはっはっは!
あ、店員さーん!ビールくださーい!』
美優『やっと泡復活ですかね?』
真莉『そーよ!ふふふ、ビールには泡がなくっちゃ』
剛流『人によるけどな…』
皆は色んな意見で僕の悩みについて答えてくれた。
それを聞いたからか…酒のせいか…ストレスのせいか…
僕は段々と涙が溢れてきた。考えてみれば
きっと自分を責めすぎていたのだろう。
美優『わ、わぁ!?翔さん??だ、大丈夫ですか?
え、えっと、私怖かったですかね…すみません……
その、ハンカチいります?』
翔「あ…れ…?ご、ごめん、何故か涙が…」
剛流『相当、自分を責めてたんだな。んだよ、
もっと早く相談しろよな〜…まったく、溜め込みすぎだ』
真莉『そーよ!こういう時はね、飲むに限る!』
彼女は笑いながら、新しく来た泡が多いビールを
こちらに寄せてくる。自分ももう飲みきりそうな
ビールジョッキを彼女の方へ寄せて
ガラスのぶつかり合う音が店内に鳴り響く
悩み苦しむ僕を見て皆それぞれ反応してくれて
僕は申し訳なく思いながら、飲み仲間の優しさに
心の底から感謝した。飲み仲間というのは良い物だ
☆ご挨拶☆
初めまして、星彩 宙と申します。
こちら初めて作る小説になりますので、
優しい目で見て頂ければ幸いです。