第2章 – 魔族の少女と自動販売機
よく見れば、旅人なんかじゃない。
角?鋭い。
尻尾?ピクピクしてる。
胸?デカい。
肌?めっちゃ見えてる!
――魔族だ!しかも、めっちゃ可愛い!
「まさかこんな場所で水を見つけるなんて……ほんと助かったよ、レリックくん!」
そう言って、彼女は軽くぺしぺしと叩きながら、俺の横に座り込んだ。
明らかに疲れていて、喉も乾いてる様子。よく見ると、唇は乾いていて、顔も少し青白い。
レリック?ああ、さっき“古代の遺物”とか言ってたな。
アニメやゲームでよくある、魔法のアイテムと勘違いされてるのか?
まあ……仕方ないか。どう見ても……俺は自動販売機だ。
これ、おかしいだろ。
でも、もっとおかしいのは――
俺、ぼっちの引きこもりオタクだけど、それでも人のぬくもりくらい知ってる!これは違う!
女の子に触れたのなんて、いつぶりか分からないけど……こんなに温かいなんておかしい!
ただの軽いビンタだったはずなのに……!
俺、寂しさにやられてるのか?
それとも彼女が魔族だから?
いや、もしかして……俺の体が冷たすぎるのか?
ほとんど金属でできてるしな。
「ふわぁ〜、これほんとに美味しい!水、綺麗だし!喉カラカラだったんだよね〜。もう一本!」
またお金を入れて、ゴトンと音が鳴ると同時に、俺の手(?)が勝手に動いた。
――「ご購入ありがとうございます!」
しまった、反射で喋っちゃった。いや、選択肢を無意識に押してた。これは……本格的に自販機になってきてる!?やべぇ!
「おおっ!?喋った!?ありがと〜、レリックくん!あんた、丁寧な遺物なんだね?かわいい〜」
そう言いながら水のボトルを上下に振って、笑顔で見せてくる。可愛いのはこっちのセリフだって。
「でも、喋る古代遺物なんて聞いたことないな……もしかして、超レア?」
さっきまでぐったりしてたのに、今ではすっかり元気に動き回っている。見てるだけで楽しい。
興味津々といった感じで、ガラスに顔を押し当てて中を覗いてきた。
「おおーい、中から声がしたよね?どこどこ?」
顔、近いって!全部伝わってくる!恥ずかしいんだけど……!
「レリックく〜ん?おーい、おーい……恥ずかしがらないで〜」
……
「……返事はない、か」
彼女はガラスを両手でそっと撫でながら、じっと中を覗き込んだ。
「水しか売ってないのか……いや、でも逆にめっちゃ運が良くない?これって魔王様のご加護かな?」
――「ご購入ありがとうございます!」
「やっぱり喋った!でも、自由には喋れない感じ?」
――「ご購入ありがとうございます!」
「なるほどね……そういうことか、レアレリックくん。でも、こっちの言葉は分かるんでしょ?」
名前、長くなってるんだけど……。
――「ご購入ありがとうございます!」
「そっか……なんか、ちょっと……寂しいね」
彼女はうつむいた。何かを考え込むように。まさか、俺のことで悲しんでるのか?
そんなこと、今まで誰にも――
「どのくらい、ここにいるの?」
……それ、正直、考えたこともなかった。
どれくらい、ここにいるんだ……俺……。
――やっぱり、答えられないか……
俺の目標は――みんなを、たった一台の自販機で泣かせること!
だって、俺の憧れは尾田先生だ。
あの人は、船でさえ泣かせてきたんだよ……それ以外にも、何度も何度も。