この勇者全然寝かしてくれません!
ちょっと息抜き
私は睡眠が好きだ。
ゆらゆらふわふわ、どこまでも漂って、いろんな世界を見るのが何よりの楽しみ。
最近のお気に入りは、魔王討伐を目指して旅をしている勇者一行を観察すること。
仲間たちはそれぞれ個性豊かで見てて面白い
ただ、ちょっと連携が悪くて、危なっかしい場面が多いのが気がかりだ。
頑張ってくれないと世界が終わる。私はバレないように、陰ながら応援しているのだ
今も、勇者たちは魔物と戦っていた。
森の中、少女を庇いながら剣を振るう勇者。その背後ではヒーラーが呪文を唱えている。
しかし、草むらの影から巨大な熊が飛び出そうとしていた
危ない!
思わず木の根を伸ばし、熊の足を絡め取る。
ドサッ! 熊は派手に転倒した。
アーチャーがそれを見逃すはずもなく、すかさず矢を射る
「俺がいなかったら危なかったな!」
得意げに笑うアーチャー。
いや、違うんだけど……まあいいか。
少女の傷も無事に癒え、一行は村へ戻った。
依頼を終えた彼らは、村長の厚意で今夜は村に泊まれるらしい。
これでやっと安心して目覚められる
……と思ったのに。
勇者がふと、空を見上げた。
「……誰か、いるのか?」
その瞬間、私はドキッとした。
まさか、気づかれた?
でも、そんなはずはない。私はただの“眠っている意識”なのだから。
勇者はじっと何かを探すように視線を巡らせるが、次の瞬間、ふっと目をそらした。
――気のせい、だったのかもしれない。
安心した私は、ゆっくりと夢から覚めていった
今度こそ、ぐっすり眠れますように。