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モブキャラに転生したけど死にたくない  作者: 左京ゆり
第一章 この薄汚れた世界へようこそ
3/28

3.雨に打たれて凍えて死にそう

天の恵みだ!!!

俺は顔を上げて全身で雨粒を受け止めようとした。

(……いや、待て待て)

スマホには防水機能が付いてるとはいえ、雨に濡れちゃまずいよな。今はこいつだけが頼りなんだし。

軒下のガラクタの上に載せたところで、また気づく。


(この時代って……確かアレだよな。産業革命とかでスモッグとか酷くて大気汚染が深刻で……)


てことは。

当然、雨だって汚染されてるわけで。

俺は載せたばかりのスマホを引っつかんで、またAIを開く。


『なあ、D。この時代の雨で全身洗っても死なない?』

『ヴィクトリア朝英国の雨水で体を洗っても、即座に命の危険があるわけではありませんが、いくつかの健康リスクが考えられます。


1. **汚染物質**:雨水には工業排水や大気中の汚染物質が含まれている可能性があります。これらの物質が皮膚に悪影響を及ぼすことがあります。

2. **細菌や病原菌**:雨水には細菌や病原菌が含まれていることがあります。特に傷口がある場合は感染症のリスクがあります。

3. **冷え**:冷たい雨水で体を洗うと体温が下がり、風邪をひいたり、体調を崩すリスクがあります』


(……なるほどな)


やっぱからだに悪いのか。でも少なくとも、この汚物まみれの状態の方がはるかに感染症のリスクは高いわけで。それに今は夏ではないが、冬でもない。浮浪者みたいなおっさんも座りこんでるばあさんも、俺と似たり寄ったりのボロ布みたいな薄手の服を重ね着してる。たぶん季節は春か秋だろう。多少冷えたところでたかが知れている。


(……よし!)


スマホを軒下に残して路地の真ん中に立つ。目をつむって顔をごしごし擦って、破れた上着をはぎ取った。その上着で全身を洗っていく。

雨もなんか臭かったけど、下水の臭いよりはよっぽどマシだ。

落とせるだけの汚れを落とした後、完全なるボロ布と化した上着を軒下のガラクタ山に放り投げた。


さて、次は……。


半ズボンの片方の端を細く引きちぎる。それを左の手首にぐるぐる巻きにして固定した。ほんとはアイスノンで冷やして鎮痛剤でも飲みたいとこだが、まあ無理な話だ。冷やして--。


「ふぁっくしょん!!!」


ずび、と鼻水が垂れた。

その鼻水をすする間もなく、ぞくっと背中に震えが走る。


(……さ、さ、さ……寒っ!!!)



【冷たい雨水で体を洗うと体温が下がり--】

さっきのAIとの会話が頭をよぎる。


しまった。

俺は雨を甘くみてた。

考えてみりゃ、前世で雨に打たれたって、どうせすぐ家に帰ってシャワーを浴びてエアコンの効いた部屋でゴロゴロすんだから、そりゃたかが知れてるよな。


--ここはエアコンも熱い風呂もないヴィクトリア朝英国で、

--そのうえ俺はスラムのガキで、

--どこで着替えを手に入れて暖まりゃいーんだ?!


「……そもそも【俺】は一体、誰なんだ?」

さっき馬車で轢かれかけた大通りをながめる。

あそこに戻れば、誰か俺を--このスラムのガキを知ってるやつが見つかるだろうか。

俺はくしゃみを連発してガタガタ震えながら、スマホを手に歩き出した。


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