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聖マリーエン教会の朝は早い。夜明け前から朝課に祈り、働き始める。だが、雪かきはそろそろ必要ない。復活祭の準備を始めて、僧たちは忙しくなった。
セシルもまた忙しい。だが、日々の祈りに忙しいのは快い。夜明けが少し早くなり、できること、したいことが増えたように感じる。するとやはり、朝に届けられる荷を運ぶのにも、唇が歌を含む。
メトーデとともに勝手口の荷を揃え、一つずつそれを抱えると、少女が花の水桶を天秤に担いでやって来た。
勝手口と言っても広めに造ってある。教会で使う道具や食料品を納めに、店の小僧さんなどが頻繁に出入りする。
ベッケライがブロートを、牛乳屋がケーゼを置いていった土間に、少女は桶を降ろす。桶には聖人像に捧げる花々が詰まっている。冬なのでカレンデュラ、ローズマリー等と素朴。天秤棒を外して息をつく。
花屋の新しい小遣いと思われた。だが、初めて見る顔ではない。ああ、とメトーデが珍しく大声を上げた。
「君は、修道院で……」
「あっ、司祭さま!」
少女もメトーデとセシルの姿を認め、膝を軽く折って挨拶をした。
修道院でリーリと怪我人を手当てし、懸命に働いていたあの少女だ。
「……あなたは本隊に帰らなかったのですか」
セシルが問うと、少女は朗らかに答えた。
「あたしはこの冬までの契約だったの」
日焼けした肌に汗を浮かべているが、服も髪もきちんと整えた少女は、極めて快活に見える。
「司祭さまたち、優しそうだったから、ここで働くことにしたんだ。隊からの紹介状もあったし、花屋ならたまには会えるでしょ?」
そう可愛らしく微笑んで、嬉しげに少女は去って行く。常から鬱々とした表情のメトーデが、切なげに瞳を潤ませて手を振った。
戦争が人を運ぶ。心が動き、人が出会う。
セシルは神が出会うべき者を出会わせると信じている。確かに信じている。
ならば、排斥すべき人々にも、事物にも、人ならぬ力にも、出会うべくして出会うのか。
神の真意は見えない。天の下に、神と世界を呪うように憎み合う戦いがある。
司教座聖堂の都市グロッケンシュタットは、危うい天地のあわいに今日も目覚める。




