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 同じ夜に、旧市街の目抜き通りは上品な喧噪がそろそろ静まろうとしている。

 一等地の高級宿にはまだ青年たちが出入りをしている。一見派手に騒いでいるようで、志願する青年を迎える傭兵たちは、決して己を失しない。乱痴気に浮かれてしまうような者を、ユッタは連れてきていないのだ。

 その本隊の宿営に戻る準備で、行李(コッファー)に上官の服と小物を詰めるのはリーリである。彼女は三階に取られたユッタの寝室を支度するのも任されている。

「来月には大きな仕事が入りそうでね」

 早朝に発つため、残りの仕事は部下に任せた。少尉ヨージェフも連れ立つため、今日は喧噪の間にあの哀愁のフィーデルが聞こえない。

「その前に契約を済ませてしまいたいね。男どもを新しい宿営に突っ込まないと」

「食料の備蓄が減ってきてる。雪解けまで保つかわからない」

 リーリの報告に、ああとユッタは短く答えて、着替えた寝間着の首から長い髪を引っ張り出す。

「あったら食っちまうクルミ(あほう)ばかりだからね。酒保隊を呼ぶにも、十分困らせてから呼ぶんだよ」

 リーリは頷き、瞳を伏せた。

「なるべく早く、帰ってきて。ユッタがいないと、女の子はみんな怖がるの」

「切ないことをお言いでないよ」

 ユッタは栴檀の机から紙を取り、書かれた契約の内容を確かめて折り、灯りで蝋を温めた。

 垂れたその蝋に、封印を押す。

「すぐ戻る。本隊の男どもを連れてね」


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