表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
08 ダンジョン探索編
PR
99/367

099話 呼び出し


6層階層ボス部屋の先に通路が続いている。

先に進むと雰囲気が変わってくる。

剥き出しの岩盤のイメージから洞窟のイメージにもどる。


そして暗い。

夜の世界。


これには見覚えがある。

4層階だ。

ということは、7層はアンデッド階だな。



「魔物が4層より弱いはずは無いよな」


「でしょうね」


「ということはグール、レイス、ワイト、ヴァンパイヤといったところか」


「力を溜めて掛からないと死ぬでしょう」


「一度戻るか・・・」



5層の安全地帯で仮眠を取って、地上に戻った。



◇ ◇ ◇ ◇



屋敷に戻った我々を見つけたメリンダ(メイド)が駆け寄ってきた。

すぐにマリアン(家政婦)のもとに連れて行かれた。



「ハーフォード公爵から火急の知らせです。すぐ来いとのことです」



火急と言うことは貴族向けの悠長な話ではないな。



「ウォーカー全員で向かいましょう。何があるかわかりません」



ダンジョンから戻って休む間もなく、フル装備のままハーフォードへ向かった。



公爵の館に到着した我々は、私とソフィーのみ公爵にお目通りを願った。

それ以外のメンバーを控えの間に残した。


ほどなく公爵と公爵夫人と騎士団長が入室された。



「よく来てくれた」


「着の身着のままでのお目通り、お許し下さい」


「構わぬ。それはダンジョン攻略の装備か?」


「はい。6層よりそのまま参上致しました」


「ほほう。6層は何が出たのか?」


「レッドサーペント、バジリスク、そしてクリムゾンリザードが出ました」


「なに? 脅威度がわからぬが・・・」



横から騎士団長がそっと口を挟んだ。



「いずれも脅威度Bの凶悪な魔物で御座います」


「なんと・・・ いずれそちらのダンジョン探求の話をじっくりと聞かせて欲しいものだ。 いや、横道にそれた。そなたらに急遽来て貰った理由は、だ・・・」



そして公爵が話し始めた。


長く、回りくどく、事実を真綿に包んだ話を解読すると、以下の通りだった。


神聖ミリトス王国の王都アノールが陥落した。

これはヒックスの代官の情報、ジルゴン(ブリサニア王国の王都)の王宮の情報、諸外国からの情報が全て一致したため、精度は高い。

ただし、いずれの情報も遠慮がちに「らしい」という疑問符が付いている。


通常、王都を攻略した勢力は勝利宣言を行い、自分達の正当性を宣伝する。

今回はそれが無い。


また、通常は神聖ミリトス王国の臨時政府がどこかで立ち上がるのだが、今回はそれも無い。


つまり神聖ミリトス王国が、現状どうなっているのかわからない。




アノール陥落に伴い、ブリサニア王国と神聖ミリトス王国間の国境は全て封鎖。

難民が流れ込まないよう措置した。

最大の交易都市であるヒックスには治安維持のために騎士団が派遣された。


神聖ミリトス王国はどこかの国と戦争をしていた訳では無い。

内戦・謀反の噂も聞かない。

にも拘わらず、王都アノールが陥落した。


誰が攻めたのかわからない。

王族がどうなったのかわからない。

今、誰がアノールの主なのかわからない。

アノールを墜とした勢力が、今後どう出てくるかが読めない。

神聖ミリトス王国自身がどうしたいのか、読めない。


いずれにせよ、国境を接するブリサニア王国が矢面に立たされる危険性が高い。


一体アノールで何があったのか調べて欲しい。




思わずソフィーと顔を見合わせてしまった。

二人の間ではおおよその予想はついている。

だが、物事には順番というものがある。



「閣下。閣下は国内では顕職を占めておいでですが、それでも他国を詮索されるお立場では無いと存じます。御下命の件、閣下の御家名に傷を付ける危険性を感じます」



公爵はちょっと困った顔をされた。

が、公爵夫人に促され、急にざっくばらんに話し始めた。



「実はな、私もそれはわかっておる。陛下には『越権行為になりましょう』と申し上げたのだ。だが許されなかった」


「これはな、内情はそなたに対する指名依頼なのだ。

 ある意味私もメッセンジャーに過ぎん。

 王宮はそなたのことをよく調べておる。そなたも、そなたの妻のことも。

 そなたがアノールと関わりを持っていたらしいこともよく知っている」


「実はな、政府も調査員をアノールに潜入させていたのだ。だが妙なメッセージを最後に連絡が途絶えた。おそらく死んだものと考えている」


「誤解の無いように言っておくが、相当な腕利きだぞ」


「今からアノールに人を送り込んでも、現地に詳しい者でないと、情報収集はおろか生存も難しいようだ。

 そこでそなたらだ。王宮からの事実上の指名クエストなのだ」



ここまで言われると逃げ道が無い。


優先調査項目は


 アノールで何がおきたのか

 アノールの主は誰か

 王族はどうなったのか

 今、政府はどこにいる

 アノールの主と交渉可能か

 政府と交渉可能か

 ミリトス教会総本山の現状



「一つお教え頂きたく。 調査員が最後に送ったメッセージとはどのような物だったのでしょう?」


「『メッサーへ行く』 それだけだ」


「調査員は冒険者上がりでしょうか?」


「いや、王宮騎士団の諜報員だ」



もう一度ソフィーと顔を見合わせる。

ソフィーはほぼ全て読めたようだ。

かすかに頷いた。



「畏まりました。 至急、必要な人材・機材を取りまとめます。明日同じ時間にもう一度お目通りお願い致します」


「わかった」



すぐに控え室に引っ込み、ウォーカーの面々と打ち合わせを開始。

久しぶりにゾーンオブサイレンスを展開する。



「ふうむ。アイシャ様の話ではメッサー・ダンジョンが原因だろう?」


「そうですね。でもそれについて、私は納得していません」


「何がだ?」


「あそこで出てくる魔物は・・・・・・・・・ でした」


 1階層:ゴブリン(F)、ホブゴブリン(E)、キラーアント(F)、オーク(E)

 2階層:オーク(E)、コボルト(D)

 3階層:キラービー(E)、キラーアント(F)

 4階層:ゴブリンキング(D)、ホブゴブリン(E)、ゴブリン(F)

 5階層:オークキング(D)、オーク(E)、コボルトキング(C)、コボルト(D)

 6階層:スケルトン(E)、ゾンビ(E)、グール(D)


「お前、1層しか潜っていないのによく知ってるな」


「勉強はしました」


「よしよし。で、疑問は何だ?」


「これらが大量に湧き出たとして、騎士団の手に余るものでしょうか?」


「ああ、イルアンくらい凶悪な魔物が出たら納得するというわけか」


「はい」


「お前はメッサーの規模がわかっていない」


「どういうことです?」


「メッサーはデカいんだ。イルアンに比べると、とてつもなくデカイ」


「?」


「イルアンでスタンピードが発生したと仮定するか。前回のイルアン攻防戦が良い例だ。ゴブリンが約250匹、スケルトンが約100匹だったな」


「はい」


「メッサーはゴブリンが3000匹。アリは3000匹ではきかないだろう」


「そんなに・・・」


「それからアイシャ様は “深層階で” スタンピードが起き始めているって言ったんだろう?」


「ええ」


「なら出てくるのはゾンビやグールだ」


「・・・」


「いいか、心して聞け。 俺は、絶対に、その場に、いたくない」



ソフィーもジークフリードもクロエも激しく同意している。


なるほど。

私はアンデッドの真の恐ろしさを知らないのか。



「わかりました」


「で、どうする?」


「行かないという選択肢はありません」


「行くのは?」


「私とソフィーの2人」


「マロンは連れていかないのか?」


「ラミアの背に乗り続ける光景しか思い浮かびません」


「ソフィーは何故連れていく?」


「死ぬときは一緒。それから公爵の口ぶりでは、どうやらソフィーも王宮の指名らしいですね」



それから準備を開始した。


ウォルフガングとジークフリードとクロエに(カモフラージュ柄のテント、寝袋、非常食、乾燥果物、パン、菓子)の買い出しを依頼。


私とソフィーとマロンは酒(レントの誉、ハミルトンの雫、ハーフォードの月)を大量買い。


それからマーラー商会ハーフォード支店に立ち寄り、ソフィーの下着・着替え、私の着替えを大人買い。



アンナから情報も仕入れた。


アンナも詳細はわからないが、ヒックスだけで無く、全ての港において神聖ミリトス王国との物流がいったん途絶した。

だが、今は細々と再開したとのこと。


難民が押し寄せる気配は無いが、いつ押し寄せても良いように対応中。



全員が戻ったので、それぞれが買い込んだ物を確認しながら背負い袋に入れていく。



「ではウォルフガング。クリムゾンリザードの魔石を託します。イルアンをお任せします」


「うむ。魔物の間引きは3層の安全地帯までにしておく」


「よろしくお願いします」


「マロン」


「わう」


「イルアンをお願いします」


「わう」



ウォルフガング、ジークフリード、クロエ、マロンはイルアンへ帰っていった。



◇ ◇ ◇ ◇



出発前に公爵にお目通りした。


出発前の挨拶だけのつもりだったが、公爵夫人に色々と気遣われてしまった。

公爵夫人はこのような任務にソフィーを指名することを内心納得されておらず、貴族女性の心得を懇々とソフィーに諭した。


私も公爵も居たたまれなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ