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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
08 ダンジョン探索編
93/334

093話 まだイルアンダンジョン4層


4層を進んでいる。

アンデッド階である。


ゴーストは剣士にとって相性の悪い相手で、剣ではあまりダメージを与えられない。

それでも20回ほど叩けば倒せるらしい。


ただし、剣が届く間合いにいるとデ・ヒールを喰らってしまう。

デ・ヒールを喰らうと1週間は体調不良に悩まされる。

3度デ・ヒールを喰らうと戦闘継続不能になり、4度喰らうと動けなくなり、ゴーストに囲まれてゴースト(死霊)の仲間入りをする。


最近は斥候をメインにしつつも、治癒士と魔道士(光・闇・火)を兼務する私は、強い光を当てたり、先にデ・ヒールを当てたり、火で炙ったりして、割と順調にゴーストを倒している。

相性の問題である。


ただし半透明で隠密行動が得意なゴーストなので、複数の相手をするときは、戦闘の最中に見失う可能性が高い。

そこで常にマロンが索敵し続けて、居場所を私に教えてくれる。



一方マミーはC級冒険者の剣士・槍士にとって一つの壁らしい。

割と動きが速く、力が強く、毒持ちで、スタミナのお化け。

これを危なげなく倒せるようになるとB級が見えてくる。


と言うわけで、ゴーストに対しては、マロンと私で対応。

マミーに対してはジークフリードとクロエで対応。

このパターンで4層を進んだ。


そして階層ボスの部屋が見えるところまで来た。



◇ ◇ ◇ ◇



4層のボス部屋。

前回はリッチとスケルトンメイジがいた。

今回は4層に変化があった後のボス部屋。


突入前に打ち合わせをした。



「アンデッド階なので引き続きリッチがいてもおかしくない」


「スケルトンメイジがどう変わったのか、ですね」


「ああ。スケルトンメイジではリッチと釣り合わぬ」


「この階層の傾向からするとマミーかゴーストだが・・・」


「リッチは前回同様最初のターンは儂が抑えるとしてだ。マミーかゴーストはどうする?」


「マミーが出たらはジークフリードとクロエはリッチへ行け。ビトーと私で倒す。いいな」


「はい」


「ゴーストの時はどうする?」


「ビトー、お前は何体までならゴーストを抑えられる?」


「光を使っても良いなら5~6体はいけると思います。マミーやリッチに光を当てても良いのですよね?」


「ああ。目が眩むくらいだ」




前回同様、私がガバッと扉を押し開け、そのままの勢いで前方に倒れ込んだ。

チラッと見えたのはリッチ。

そして大柄な包帯男(女?)が数体。

4人が私を踏み越えて突撃していった。


私はすぐに跳ね起きてマミーと対峙するソフィーの元へ走る。

マミーは・・・

マミーは4体いた。

ソフィーは氷槍の連続射撃で4体のマミーを壁に磔にしている。

私はソフィーの横に並ぶと、炎杖を構えて火球を撃った。

火球が着弾するとマミーの包帯が燃え上がり、マミーは耳障りな悲鳴を上げながら包帯と一緒に燃え始めた。



「マミーを見ていろ」



ソフィーはそう言うとリッチへ走った。


リッチは1体。

既にウォルフガング、ジークフリード、クロエが付いており、火の出るような連続剣戟を見舞っている。

リッチは防戦一方。

見る見るうちにリッチのHPが削れていくのがわかる。


一方マミーは・・・

マロンが警告の吠え声を上げた。

慌ててマミーから距離を取った。

4体のマミーが毒の唾をまき散らし、消滅した。


ほぼ同時にリッチも消滅した。



全員で車座になってこの部屋の戦闘の再確認。



「最初に出たリッチに比べると脆かったな」


「その分眷属がスケルトンメイジからマミーに格上げされましたね」


「今回のリッチは何が違ったの?」


「ジークはわかるか?」


「いえ、リッチ自体は変わらなかった気がしますが」


「ビトーはわかるか?」


「恐らくですが、装備が違うのではありませんか」


「ほう?」


「前回は『賢者の法衣』を纏っていました。今回はドロップ品のレベルが落ちたようですね」


「そうだ。今回は私が入らなくても楽に削っていたからな。ジークフリードとクロエの攻撃はだいぶ通っていたぞ」



ジークフリードもクロエも喜んでいた。


魔石とリッチの杖を拾ってから、この部屋を捜索する。



【リッチの杖】

 リッチが標準装備する魔法の杖

 火魔法の威力強化および詠唱の省略



前回は白紙の護符が20枚と魔力を帯びたインクが出たが、あれはダンジョンの落とし物というよりは、あのリッチの持ち物だったのだろう。

今回が正規の討伐だと思う。


宝箱を探索する。

壁際を丹念に調べていくが、見当たらない。


「どこを見ている。こっちだ」


ソフィーに言われたところに行くと、確かに宝箱がある。

ただし、普通に見ていては絶対に気付かない。

部屋の中央寄り。

突起は無い。

床の模様にも変化は無い。

でも鑑定するとわかる。



「罠があります。離れてください」



鑑定では毒矢と教えてくれる。

床の上に腹這いになって、アイスピックの先端でフタの部分をじわじわ開けていく。

ある程度以上フタが開くと、


ビーンッ!!

バシッ!!


バネが弾けた様な音がして、天井に何かが当たった。

短い矢が落ちてきた。

鏃が黒く染まっている。

一瞬持って帰ろうかと思ったが、背負い袋の中で手探りしている内に刺さったら洒落にならないので捨てることにした。

矢は矢尻を持って部屋の隅に放った。ダンジョンに呑ませてしまう。


宝箱の中には年代物の鞘に収まった長剣があった。

鑑定してみるが良くわからない。

呪いは掛かっていない。


手に取ってみる。

鞘から抜いてみる。

刀身に僅かに反りが入った片刃の長剣。

珍しい。

太刀みたいだ。

鑑定するが銘がわからない。


片面に美しい女性の姿が刻まれている。

反対側に炉らしいものが刻まれている。

銘があってもおかしくない逸品だと思うのだが・・・

もう一度鑑定してもわからない。


だが、見ているうちにわかってきたことがある。

この刀にはまだ銘が無いらしい。

性能は・・・ ピカイチ。

切れ味はロングソード・アクセルと同等。

自動修復機能(強)が付いている。

火属性を持っており、剣先から火球、火矢、火槍、火壁・・・といった火魔法を出せるが、それは使用者が使えるなら出せる。

使用者が使えないなら出せない。


ではこの剣の火魔法は何が凄いのか?

魔力を集中する必要が無い。

火魔法を発現する過程を明確にイメージする必要が無い。

呪文を唱える必要が無い。

剣戟の最中に(火球)と思えば、一瞬で火球が飛んでいく。



全員を集め、剣の説明をした。



「この中で火属性の人は?」

「儂だ」

「ウォルフガング、あなたは火魔法を発現するのに難儀するタチでしたね」

「そうだ」

「難儀しながらでもよいので、どこまで使えますか?」

「どこまで・・・というと、火球、火槍、火壁は出したことがある」

「この剣を振りながら火魔法を出してみてください。呪文を唱える必要はありません」

「うむ」



スイスイと火球を放つウォルフガング。

いきなりドンッと火槍を出すウォルフガング。


ウォルフガング自身がびっくりしている。

使いこなせそうだ。



「使いますか?」


「何を言う。ダンジョンで出た物はパーティオーナーの物だ。それにどうやらこれは天下に2つと無い業物だぞ」


「ええ。ですから私がウォルフガングに下げ渡したら、使いこなしますか?」


「もちろんだ。儂は剣はそれなりに極めたが、どうしても魔法が遅くてB級止まりだった。こんな剣があれば・・・と何度も夢想したものだ」


「ではウォルフガングに下げ渡します。使いこなしてください。それから銘を決めて下さい」


「銘だと・・・」


「はい。どうやらこの剣は銘を入れて初めて本来の性能を発揮できるようです。天下に二つと無い物ですので銘を入れましょう」


「と言われてもなぁ」


「この剣は女性の属性のようです。そして炉の属性も持っているので強力な自己修復機能もある。火の女神、炉の女神を知りませんか?」


「炉の女神と言えばヘスティアだが」


「では銘を入れます。あなたは『ソードオブヘスティア』です」



鑑定すると『ソードオブヘスティア』と出た。



「銘が入りました。ウォルフガング、使いこなして下さい」


「おお・・・ 感謝致す・・・」



ちなみに「ロングソード・アクセルは使い続けますか?」と聞いたら、



「これはレッドサーペントの首を落として九死に一生を得た剣だ。俺の守り本尊のようなものなんだ。腰の物は『ソードオブヘスティア』に変わったが、これは俺の部屋に飾らせてくれ」


「いいですよ」



◇ ◇ ◇ ◇



ボス部屋を出て、5層へ降りる階段へ続く通路に向かう。

ふと思いついて、私は歩きながらウォーカーのメンバーを鑑定してみた。



(前衛)

ウォルフガング:魔法剣士(火)

ジークフリード:魔法剣士(土)

クロエ    :魔法剣士(風)


(後衛)

ソフィー   :魔術師(水)

マロン    :斥候

ビトー    :賢者(光・闇)



何か職種が変だ。

今言うと皆が混乱するから後でソフィー先生に聞いてみよう。




前回は5層に続く通路にオーガがいた。

今回はどうか?

やはりオーガがいる。



種族:オーガ

年齢:1歳

魔法:-

特殊能力:人語理解

脅威度:Cクラス



オーガってなんだ?

体長2mの鬼族。

魔法は使えない。


基本的に棍棒と盾で殴りかかってくる典型的肉体派の魔物で、脅威度C。

人語理解とはどういうことだろう。



「よしっ。当たるぞ」



ウォルフガング、ジークフリード、クロエがオーガと剣戟を始める。

オーガは4匹が前に出てきて、1匹が後ろに残っている。


オーガはウォルフガングには2匹付き、ジークフリードとクロエには1匹ずつ付いている。


オーガは落ち着いている様に見える。

鑑定をすると、確かにオーガは落ち着いている。

オーガに崩れる気配は無い。


戦線が膠着したのでウォルフガングが駆け引きについて細かな指示を出す。

だがオーガがそれに付いてくる。

オーガの隊列を崩せない。


ソフィーが後ろから声を掛ける。


「いったん氷槍で蹴散らす。あいだを空けろ」


ジークフリードとクロエの間が空いた。

ソフィーが氷槍を2連射した。

が、オーガは盾で氷槍を受け止めていた。


ソフィーの攻撃が読まれている?

なるほど! 特殊能力:人語理解とはそういうことか。



ジークフリードとクロエの間を空けたため、クロエが孤立した形になっている。

後ろに1匹残っていたオーガが参戦し、クロエを2対1で押し込む形になった。


咄嗟に無詠唱でデ・ヒールを放った。

効いたようだ。

効くとわかれば立て続けにデ・ヒールを放った。

後から参戦したオーガがふらついて膝を着いたところにマロンが突撃し、喉笛を噛み切った。


再び前衛3対4の叩き合いになったので、私が後ろから無言でデ・ヒールを撃ちまくった。

クロエ、ジークフリード、ウォルフガングの順にオーガを倒した。



オーガの魔石を拾い、全員で顔を見合わせた。

誰からとも言わず、車座になって打ち合わせを始めた。



「今までオーガと戦ったことのある奴はいるか?」



ジークフリードとクロエが手を上げた。



「俺たちのいた村が、一度だけオーガに襲われたことがある」


「こんな感じだったか?」


「う~ん。1体だけだったんでピンとこないわ」


「ビトー」



「はい。特殊能力:人語理解とはこういうことなのですね。

 我々の言葉の意味を理解しています。

 ウォルフガングの指示の、ソフィーの指示の裏をかこうとします。

 人間のパーティと戦っているのと変わりません。

 オーガは相当知能が高いですよ」


「う~む」


「マロン。マロンはオーガが言葉を理解しているのはわかった?」 わうっ。


「どのくらい理解していると思う? マロンと同じくらい?」 わうっ。


「ということは、かなり細かいところまで理解している?」 わうっ。


「オーガ同士で連携していたけど、奴ら会話はしていた?」 ブンブン。



マロンが首を振っていると言うことは、会話はしていない。

あうんの呼吸だけで連携したのか。凄いな。



「難敵だな」


「でも倒したぜ」


「一本道で挟み撃ちに遭ったらどうする?」


「それは・・・」


「一度戻って対策を練るか」


「それが良いでしょう」



引き揚げることにした。




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