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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
08 ダンジョン探索編
92/334

092話 イルアンダンジョン4層ふたたび

2025/4/22 誤字修正


私とソフィーが不在の間、ウォルフガングたちはダンジョン城下町の点検をしてくれていた。

万事順調。不具合は報告されていない。


冒険者達は年貢(果実類)の輸送の護衛のため、大半がイルアンを去っていた。



ダンジョンの探索は3層の探索が意外と進んでいない。

安全地帯の周辺のみマップが充実している。

冒険者達はトレントとの戦いで魔力を消耗してしまい、その先の探索が厳しいのだ。


安全地帯で魔力を回復し、トレントを倒し、また安全地帯で魔力を回復する。

このループに嵌まっている。

とは言え無駄ではない。

鍛えられ、レベルが上がれば楽にトレントを倒すことができるようになる。



今、ダンジョンは空いている。

ではダンジョンを探索しても良いかな。

アイシャ様の言葉によると、今のうちに深層まで潜った方が良いらしいし。


そう言うと、留守番組(ウォルフガング、ジークフリード、クロエ)が食いついてきた。



「アイシャ様から何か言われたのか?」


「なに? 何て言われたの?」


「4層は様相が変わっているはずだから注意しろ。お前たちでも苦労するぞ、と言われました」


「そうか・・・」


「ただし、大きな変化はこれで終わりかな、とも言われました」


「うむ。やる気が湧いてくるお言葉だ」


「冒険者ギルドから『3層で見慣れない魔物を見た』と言う報告があったんだが、このことか。変化した4層の魔物が流れてきているのだな」


「よし、明日から潜るぞ。準備をしておけ」


「「 おおっ 」」



◇ ◇ ◇ ◇



明日からのダンジョン攻略に向けて、私は炎杖を持ちながらイルアン郊外の川沿いの草原を走っている。


全力で10分走。

800mダッシュ。

走りながら火球を撃つ。


火球は川面に撃ち込む。

今は冬枯れの時期なので、草原に撃ったら火事になる。


炎杖が高性能なお陰なのだろう。

長ったらしい呪文を唱えることなく、無詠唱で火球を撃てる。


そして剣戟。

転がりながら剣戟。

再び全力で10分走。

気付いたら2時間も経っていた。


帰り道、ちょっと考えた。

走りながら火球も使えたし炎杖は私が持つようだ。

ということはソフィーの言うとおり、私はウォーカーの治癒士(兼)魔術師か。

メインは治癒士で魔術師はおまけだが、そうはいっても火力が欲しいときはきっとある。

魔力の節約対策が必要かな。


食材屋に立ち寄った。



「あら、お兄さん。あんた料理するの?」


「とてもとても。命令された物を買って帰るだけです」


「何を買ってこいと言われたの?」


「小麦粉です・・・」


「どのくらい必要なの?」


「3kgくらいかなぁ」



5kg一袋を買った。



道具屋に立ち寄った。

木製の筒を買った。


河原に戻って試してみた。

なかなか思った通りにならない。

風があるとうまくいかない。

色々不満はあるが、実戦で試してみることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



ウォーカーは4層の再攻略に向けて、3層の階層ボス部屋の前にいる。

ここまでは変な魔物には遭わなかった。

トレントもストライプドディアーもきっちり探知できている。



「前回はブルーディアーがいた。今回は何がいるかわからん。心して掛かれ」



ウォルフガングはそう言うと、扉を開け放った。


いたのはやはりブルーティアーだった。

ダンジョン内でホッとしてはいけないけど、ホッとした。



3層の階層ボスを倒して4層へ繋がる通路を進む。

前回はスケルトンメイジがいたが、今回は・・・ いない?


マロンが立ち止まって前方を見ている。

全員無言で前方を探る。


前方を鑑定。

・・・


いた。

半透明で見えにくかった。



種族:ゴースト(死霊)

年齢:―

魔法:デ・ヒール

特殊能力:物理攻撃が通りにくい、人語理解

脅威度:Dクラス



半透明で全長がわかりにくい。

シルエットは、かろうじて人型かなぁ? といった感じ。

空を飛ぶわけではないが、歩いているわけでもない。

地面すれすれを漂っている感じ。


小声で鑑定結果を告げた。



「ゴーストです。3体。打撃は効きにくいようです。デ・ヒールで攻撃してきます」


「他は?」


「ゴーストだけです」


「よし。ビトーとエナジー・ドレイン対決だな。やってみろ」



え~と。

敵は脅威度Dが3体。 私はE級・・・ 圧倒的じゃないですか。敵が。


と言うわけで敵が迫ってこないことを確認して事前準備。

トレントの樹皮の端切れ2枚とハーピーの羽根を1枚取り出す。

遠隔操作でハーピーの羽根を漂わせる。

うん。いい感じ。

トレントの樹皮の端切れに自分の魔力を吹き込む。

脇差とショートソード・アクセルを抜き、先端にトレントの樹皮の端切れをぶら下げ、自分に認識阻害を掛け、さあ出発。


脇差とショートソード・アクセルを前方に突き出す。


「さてどこからが敵さんの探知範囲かな?」 と探りながらそろそろと進む。


お・・・


ブラウン運動のように不規則に漂っていたゴースト達がピタリととまった。

こっちを見ているようだ。

3体一斉にこちらに動き始めた。

良い感じに引き寄せて・・・ 

漂わせていたハーピーの羽根をライトボム化した。


いきなり強い光を浴びせられたゴーストは硬直した。


2体のゴーストに脇差とショートソード・アクセルの先端をチクリと刺し、デ・ヒールを掛けた。

驚いたことにデ・ヒールの一撃でゴーストは魔石を残して即座に消滅した。

もともとHPは極端に低いらしい。死霊だからな。

もう1体のゴーストも脇差しを刺してデ・ヒールで成仏させた。


ハーピーの羽根とトレントの樹皮を回収する。

トレントの樹皮は私が吹き込んだ魔力が抜けていた。デ・ヒールにやられたらしい。


ちょっと驚いた感じでウォルフガングに聞かれた。



「お前、ゴーストが強い光に弱いって知っていたのか?」


「はい。ソフィーに聞きました」


「そうか」



◇ ◇ ◇ ◇



4層の攻略し直し。


まずは魔物の種類を調べる。

前回はスケルトンメイジ+ブラックサーペントのコンボだった。

変化後は・・・


はい。

階段を降りたところにゴースト達がたむろしていました。6体。

4層はアンデッドのフロアになっているようだ。

だが6体はちょっと考える。


3層の通路まで撤退。



「6体いましたね」


「ビトーでもキツイか?」


「あの・・・ 私はE級冒険者で、ゴーストは脅威度Dなのですが」


「安心しろ。お前はもうD級冒険者の実力はある」



ウォルフガングは笑って背中を叩いた。


引き続き私に任せる気らしいので考えた。

まともに突っ込んだら駄目だ。

トレントの皮で間合いをずらす方法も、数が多いとすり抜けてくるだろう。


ゴーストは物理攻撃が通り難いが、光と炎とデ・ヒールに弱いという(ソフィー情報)。


ということで、ぶっつけ本番で試してみることにした。



そ~っと階段まで戻って下を覗く。

いるいる。

こちらは階段の上。

ゴースト達は階段の下。

試すには丁度良い。


木の筒の端を口元に当てて「フッ」と吹く。

ゴースト達の頭上に白い煙がふわっと拡がり、降りていく。

そして・・・ 炎杖で火を付けた。


「ボッ!」


一瞬、ゴーストたちのいる空間に巨大な炎が拡がった。

炎の大きさの割には控えめな音がした。

そしてゴーストはいなくなり、魔石が6個転がっていた。


マロンに索敵をお願いしながら魔石を拾っていると他のメンバーも降りてきた。

ソフィーが私の背中にピタリとくっついて尋問。



「今のは何だ?」


「火です」


「火はわかった。何をした?」


「小麦粉を煙のように撒いて、火を付けました」


「小麦粉?」


「ええ」


「・・・あとでじっくり教えろ」


「はい」



クロエが重要なことを教えてくれた。



「ビトー様がまとめて片付けてくれて助かったわ。

 6体いたから普通一人一体でしょ?

 ゴーストのデ・ヒールを喰らうとね、そのあとでポーション飲んでも回復が遅いのよ。

 1週間くらい調子が悪くなるの。どうしようかと思っちゃった。」



エナジー・ドレイン攻撃とはそういうものらしい。

私のデ・ヒールを喰らった人たちも1週間くらいは腹具合が悪かったのかな?



4層を進む。


地図(経路)は変わっていない。

ダンジョンらしからぬ “暗さ” も変わっていない。

だが出てくる魔物は変わっていた。


次に出て来たのは病院から抜け出してきたような包帯男(女?)だった。

体中に薄汚い包帯を纏い、言葉にならないうなり声を上げながら襲いかかってきた。


コイツは単独行動が基本らしく、1体で出て来た。

そこは評価する。

だが1体でも厄介な奴で、まずデカイ(2m級、ウォルフガングとほぼ同じ背丈)。

得物は持っていない。爪が武器らしい。

そして力が強い。

スタミナのお化け。


ウォルフガング、ジークフリード、クロエが前面に立って敵を削っていく。

この間に鑑定を済ます。



種族:マミー(ミイラ)

年齢:―

魔法:なし

特殊能力:毒

脅威度:C+クラス



「毒に注意してください」


「わかってる」



ウォルフガング、ジークフリード、クロエは決して突出せず、壁を作ってマミーを抑え込んでいる。

ウォルフガングの剣なら一刀両断できそうな気もするが、あえてしないと言うことはジークフリード、クロエに慣れさせようとしているのだろう。


かなりマミーを削ったな。

そろそろ勝敗が付くな。

と思った頃、ソフィーが私とマロンを更に後退させた。

何があるのだろうと思った瞬間、マミーが唾を吐いた!

唾はもう少しで私に届くところまで飛んできた。



「唾は避けた」


「よし」



ソフィーの声を聞いたウォルフガングは満足そうにうなずくと、一撃でマミーを切り裂いた。

マミーは死ぬと同時にボロボロに風化してダンジョンに飲まれていった。

後に魔石だけ残った。



◇ ◇ ◇ ◇



4層はアンデッドゴーストとマミーになっていた。


ゴーストは目立たぬようにそっと近づいてくる。

戦闘も地味。


マミーは遠くから正体を現して、どしどし近づいてくる。

戦闘はアンデッドのくせに肉体派で毒持ち。

最後に一矢報いようとするのがイヤだ。



やはりウォルフガングはジークフリードとクロエに対マミー戦の研鑽を積ませたかったらしく、一戦終わる度に各局面を解説し、対処法を教えていった。


物凄い授業だと思う。

教える側のレベル、教えを乞う側のレベル、実践教育の場所、全てが揃わないと、どれだけ金を積んでもこの授業は受けられない。

ソフィーは涼しい顔をしている。ソフィーにとっては旧知のことなのだろう。


ソフィーはどこで研鑽を積んだのだろう。

また、私に対する教育は無いのだろうか。

暇そうにしていたので聞いてみた。



「ゴースト対策のレクチャーはないのですか?」


「教えるまでもない。お前は既に対応しているじゃないか」


「あれで良かったのですね」


「さあな」


「なんですか、その投げやりな回答は」


「一般にアンデッドには火魔法、光魔法、闇魔法が効くとされる。私はどれも使えないからレクチャー出来ぬ」


「火魔法・・・ マミーにも火魔法は有効ですか?」


「ああ。包帯を燃やすと弱体化する」


「それを早く教えてください。燃やしたのに」


「今は駄目だ。ジークフリードとクロエを鍛えているところだからな」


「確かに」



この階層は私とジークフリードとクロエのレベルアップを目指す階層になった。




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