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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
08 ダンジョン探索編
87/302

087話 探索は他の冒険者にお任せ


イルアン冒険者ギルドにダンジョン2層の地図、ハザードマップを報告した。


早速売りに出すのかと思いきや、今回はアドリアーナも売り方には慎重になった。


2層の様相が見えたとは言わず、一部の情報が明らかになった、とした。

地図は部分的に公開し、階層ボス部屋の情報は入れなかった。


2層では常にスケルトンパーティに挟み撃ちに遭遇する、と強調した。


3層のものと思われる魔物との遭遇も報告されていると付け加え、冒険者達の気を引き締めさせた。


ようやくハーフォードの冒険者達は初層で鍛錬に励むようになった。




イルアンの酒場で、これまでハーフォード公爵領では見かけなかった「上級冒険者風の振る舞いをする」冒険者が見られるようになった。


国内の他領地や王都から腕に覚えのある冒険者達が来ていたのだ。

彼らがダンジョンを探索してくれるならお任せして良いだろう。



ちょっと不思議だったのは、ウォルフガングやソフィーは掛け値なしの上級冒険者だが、そのようなそぶりを見せたことがなかったことだ。


ウォルフガングやソフィーから見たらあの上級冒険者達はどのレベルなのか気になったが、まあいいや。


我々ウォーカーは、探索は一休み。


メンバーはアンナとアドリアーナに頼まれて、冒険者ギルド、宿屋、武器屋、道具屋、食堂、酒場、娼館の点検・指導に取り掛かった。



◇ ◇ ◇ ◇



<宿屋>


従来の旅人向けの部屋数では足りなくなると予想して、新たに建設しておいてよかった。


従業員は常時募集中。


農村では貴重な現金収入に釣られて、農家の次男三男、次女三女が応募することを期待しているが、まだまだこれからだ。



<武器屋>


経営母体はマーラー商会ハーフォード支店。

商会を経由し、国内主要都市から武器、防具を調達できる。


イルアンダンジョンの探索が進めば、イルアンの冒険者ギルドから特殊な武器、防具を買い取り、国内に流通させる予定。


目利きと相場感はマーラー商会の得意分野なので、冒険者から文句は出ていない。



<道具屋>


経営母体はマーラー商会ハーフォード支店。

商会を経由し、国内主要都市から様々な道具類、ポーションを調達できる。

ヒックスのマーラー商会本店から直に超高級ポーションを調達できるのが強み。


イルアンダンジョンの探索が進めば、イルアンの冒険者ギルドから掘り出し物の魔道具を買い取り、国内に流通させる予定。


目利きと相場感はマーラー商会の得意分野なので、こちらも冒険者から文句は出ていない。



<食堂>


イルアンに冒険者が押し寄せるようになって食堂の数も増えた。

その食堂のうち、1軒だけマーラー商会に運営を頼み、先のイルアン攻防戦でお亡くなりになった村人の遺族を店員・料理人に採用してもらった。


スティールズ家のシェフ・マルティナが各種実験的料理に挑戦し、私が成功したと判断したレシピを横流しして、冒険者や村人の意見を聞く場になっている。


当初マルティナは我々に出す料理は貴族向け、使用人が食べるのは余り物と、メニューが二極化していた。


貴族向け料理は高カロリー、高塩分、高脂質、高糖分。

はっきり言ってウチのメンバーはこの食生活を続けると駄目だ。

太る、高血圧になる、体のキレが鈍る、ハゲる、脂ギッシュになる、吹き出物が出来る、体臭がキツくなる、口臭がキツくなる、腋臭は・・・無いと信じたい。

総じて醜くなる。


職場のおっちゃんがよく言っていた。


総コレステロールが・・・ 中性脂肪が・・・ 尿酸値が・・・


我々も貧しい食生活にしてくれ。

牛肉は減らして鶏肉を増やしてくれ。

端肉、屑肉、安い魔物肉を積極的に使ってくれ。


ハンバーグにすればだいたい何でも食える。


味に疑問があるときはチーズインにしてくれればまず問題無い。


大抵の物がおいしく食えるように揚げ物の研究と、ソースの研究を頼む。


ソースって?

タレだよ、タレ。


トマトソース、オニオンソース、デミグラスソースとか。


なにそれおいしいのって。

おいしいよ。


それらを冒険者向け食堂でも提供している。

珍しがってくれる。



<酒場>


元々あった酒場を拡張し、大量の冒険者を受け入れられる様にした。


イルアンはいい酒を産する町(レント、ハーフォード)に隣接しており、いい酒を入手しやすい。つまみも旨いと評判。


任せておいて良いだろう。



<娼館>


ここは我々もマーラー商会も経営に関与していないが、一応視察する。


サービスの質とお代の相場感については私にはわからない。

だが、とにかく清潔にすること。

これでもかと言うほど清潔にすること。


石けんはあるか? そう。体の汚れを落とす奴。

ケチるな。

湯もケチるな。潤沢に使って汚れを洗い流せ。


姫には立派な御代を保証すること。そのために客単価を上げること。


客の希望と姫の希望が相反した時は、姫の希望が優先だ。

言うことを聞かぬ客は叩き出して構わん。

暴れそうな時は冒険者ギルドに訴えること。


この業界にギルドはあるのか? 表向きはない? 実はある? そう・・・


お主は偉かったりするのか? そう・・・


今言ったことを業界スタンダードにしないか?

うん。私はしたいな。


何も領内いっぺんにやれと言っているわけじゃ無い。

まずはイルアンで。


なに、冒険者なんて最初は文句を言うが、2日も我慢できない。

それにボッてる訳じゃ無い。品質に対する正当な対価だ。

一度ここの娼館に慣れたら、他の街では我慢できなくなる。


いや、出来なくても罰則は無い。

監察官の希望だ。


ん? そうだ。

私が監察官だが?



<冒険者ギルド>


経営母体はマーラー商会ハーフォード支店。

建屋は元村長の邸宅なのでウチの隣。

何かあればすぐに駆け付けられるのが安心。


娼館の件を共有し、何か訴えがあればサポートするようお願いしている。


冒険者ギルドの業務は多岐に渡る(以前、紹介したことがありました)。

そしてその一つ一つが金に直結する。

冒険者ギルドで扱う金は冒険者の血と命そのものである。

この大原則はここイルアン冒険者ギルドでも引き継がれている。


時折ソフィーが訪れてチェックしている。


粗相があった場合、私はソフィーの鉄拳を喰らいながら矯正したが、さすがにソフィーもマーラー商会員は殴らない。


勘違いは許す。

怠慢は見逃さない。そしてアドリアーナに伝える。


アドリアーナはソフィーより怖い。

アドリアーナはミスを犯したギルド員をギルド長室へ呼び付け、しばらく眺めたあと、



「ヒックスに帰るか?」



と言うだけ。


皆震え上がり、死ぬほど頑張る。

見ているこちらが不安になるほど頑張る。


そこでアドリアーナの了解を得て、時々冒険者ギルド員を集めて慰労会をすることにした。

私が言い出すまでその様な習慣が無かったことに驚いた。

みんなあれほど頑張っているのに、水神信仰の年1回のお祭りしか息抜きが無いなんて、気の毒すぎる。



冒険者が威張って無理難題を言い始めたら、すぐにウォルフガングかソフィーを呼ぶ手はずにしてある。


マーラー商会の精鋭が送り込まれているだけあって、普通のクレーマーはほぼ100%追い返す。

だが、たまに呼びに来ることがある。


どうやら冒険者はフロントのキャロラインを口説きたいらしいのだ。

キャロラインはまだ若いのに「しっとりと落ち着いた大人の女」という雰囲気を醸し出しているからなぁ。

海千山千の冒険者こそ口説きたくなるらしい。

大人の関係になりたいらしい。


こういう時はギルド長が女だとうまくいかない。


ウォルフガングがおっとり刀で駆け付ける。



「あ~~ そこのお前。ウチのマドンナを口説こうたぁ大した度胸だ」


「なんだこら」


「ああ? 表に出るか?」



ウォルフガングがじわりと殺気を滲ませるとギルド全体が静まりかえるのはお約束。


滝汗の止まらぬ冒険者に心得違いを諭し、「今日はうまい酒でも呑め」と銀貨を数枚握らせて送り出すところまでお約束。


ただし、冒険者の間で「キャロラインはウォルフガングの女」と言う誤った認識が定着してしまった。


魔物解体は歯ごたえのある魔物が来ない、とナオミがぼやいている。


ゴブリンとスケルトンは解体のしようが無く、冒険者も持ち込まない。

ホーンドラビットばかり持ち込まれるが、全く手応えがない。


一度野良の鹿を狩って持ち込んだところ、大変に喜ばれた。



<イルアン冒険者ギルド・ダンジョン出張所>


ここはイルアンダンジョンの入口近くにある冒険者ギルドの出張所。

ダンジョンの入出管理と階層毎の地図の販売をしている。


ここで現在どのパーティがダンジョンに入っているか、どの階層を攻めているか、把握している。


管理人はテレーザ他2名。


彼女らには、



「警告を聞かない冒険者や、こっそり潜ろうとする冒険者を止める必要は無い。ただし、『入った/出た』はわかる範囲で記録しておいてくれ」



と言ってある。



ダンジョン出張所で把握している上級冒険者パーティは2つ。



【炎帝】

B級パーティ。

火魔法を使う魔術師がリーダー(C級冒険者)。

メンバーはC級冒険者とD級冒険者で構成。

剣士・剣士・剣士・斥候・魔術師・魔術師 の6名。

全員が火魔法を使い。

火魔法による攻撃を主体とする。

防御もファイヤーウォールを張る、完全攻撃型パーティ。

パーティの雰囲気は明るく前向きで威勢が良い。



【鉄壁】

B級パーティ。

土魔法を使う剣士がリーダー(C級冒険者)。

メンバーはC級冒険者とD級冒険者とE級冒険者で構成。

剣士・剣士・槍士・斥候・魔術師・魔術師で構成される。

全員が土または水魔法を使う。 

土壁、氷壁を主体とする、防御型のパーティ。

パーティの雰囲気は落ち着いて物静か。



炎帝は早々に初層を攻略し、2層に進んでいる。

スケルトンの挟み撃ちにも火魔法を両面に撃つことで難なく退ける。

技術的にはこのパーティは2層で難儀することは無い。


だが階層ボス部屋の前まで行くが、そこから引き返す。

その先に進めないらしい。



鉄壁は安全第一で進むため、挟み撃ちに遭ったときは必ず一方に防御壁を出し、襲われないようにしながら順番に敵を倒す。

非常に堅実にダンジョンを攻略しており、こちらも2層で難儀することは無い。


だが、やはり階層ボス部屋の前まで行き、引き返す。


一体何があるのだろう?




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