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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
07 原始ダンジョン偵察編
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076話 マーラー商会ハーフォード支店始動


ウォルフガングとジュードと騎士団長は冒険者ギルドに場所を移し、今後想定されること、今できることの検討をすることにした。


私とソフィーは公爵の館に残った。


今、私とソフィーは公爵夫人の居間にいる。



「ダンジョンの報告を受けている間に仕立屋を呼びました。あなたの採寸をします」



そう言って公爵夫人はソフィーだけを控えの間に連れていった。

控えの間からは「カチャ、カチャ」「ドスッ」と鎧を外す音がしていたが、やがて静かになった。

今頃ソフィーはあられも無い姿を晒しているに違いない。


しばらくすると話し声が聞こえてくる。

何やら興奮しているようだ。

何だろう?


まずいことが起きていなければ良いが・・・



そわそわしていると扉が開き、公爵夫人がでてきた。



「ビトー、入りなさい」



公爵夫人は猛禽類のような目をされている。

無礼があったのだろうか・・・



控えの間に入ると公爵夫人と夫人の侍女とソフィーと仕立屋(採寸師・女性)がいたが、皆さんそわそわされている。


ソフィーは私とユミ発案の下着を身に着け、あざといまでにメリハリの利いたプロポーションを披露している。


乳房は1/4ほど見えている。

うん。見事な美巨乳だ。


お尻は・・・ 今日履いているパンティはハイレグタイプのビキニショーツだな。

お尻の肉が下から持ち上げられ、ほんの少しプリッとはみ出している。

何時間でも見ていられそうだ。


肌は傷一つ無い、シミ一つ無い、玉の肌。


うん、ソフィー。

いつにも増して美の化身だ。



私が入ってきたのに気付いたソフィーが泣きそうな目で私を見る。

なにがあった?



公爵夫人の詰問が始まる。



「何ですか、これは!」


「ソフィーです」


「違います。このブラジャーです!」


「あ・・・ これは私から妻となったソフィーに贈ったものです」


「どこで求めたのです」



それから、どこでこんなデザインのブラを売っているのか、この色は何だ、どんな機能なのか、と厳しい尋問が続いた。



「これは既製品ではございません。ソフィーは既製品が合わなかったので、私がソフィーのためにデザインし、オーダーメイド致しました」


「乳房の形が崩れぬよう、下がらぬよう、アンダーの位置を決めて下から乳房を支えるように、包み込むようになっております。これによって乳房の形を整えるとともに、全力疾走時も、激しい戦闘時も乳房の揺れを抑えます」



私の説明を聞いた公爵夫人は、つくづくソフィーのブラジャーを見ていたが、ふとパンティに目を落とすと、



「あなたっ! これを説明なさいっ!!」


「ハイレグタイプのパンティでございます。ソフィーは冒険者ですので魔物と相対する時は全力で走ります。また、はしたのうございますが、足を上げて魔物を蹴り飛ばすこともございます。足を動かしやすくなるようデザインされております」



布面積が小さく、鋭角的に股に食い込んでいるパンティ。


一分丈パンツしか見たことのない人にとって、革命的に扇情的なパンティ。


公爵夫人が喉の奥で 「なんて破廉恥な!!」 という言葉を辛うじて飲み込んだのがわかった。



なかなかソフィーのブラジャーとパンティから目を離せない公爵夫人(と侍女と採寸師)。


気持ちはわかる。


機能性と扇情性を高レベルで実現した上下セットの下着。


色もなかなか・・・

今日は濃いピンクに白の刺繍の入った上下セットね。


私だってずっと見ていたい。




やっとの思いで目を離した公爵夫人は私をジト目で見てきた。


(こいつにこんな甲斐性があったのか?)


と言う猜疑の目と、


(にもかかわらず、あんな事務服で “良し” としたのか?)


という軽蔑の籠もった目で見られた。



気を取り直した公爵夫人と「どこであつらえたのだ」の話になり、ヒックスのマーラー商会であつらえたという話になり、「ヒックスですか・・・」とちょっとがっかり。


ともかくソフィーの採寸はされ、ドレスも忘れずに注文されたが、関心はすっかり下着に移っていた。




採寸屋さんが退出され、ソフィーが鎧を身に纏い、あとは退出というとき。



「マーラー商会はここハーフォードに支店を出す予定があると聞きました」


「もしお邪魔でありませんでしたら、御方様へ挨拶に伺うよう伝えましょう」



すると公爵夫人はサッと振り向き、



「ええ。都合の良い時にいつでも来るようお伝え下さい」



公爵夫人の目がキラリと光った。



◇ ◇ ◇ ◇



帰りにソフィーと一緒にマーラー商会ハーフォード支店予定地へ立ち寄った。

サビーネが忙しそうにしていたので、



「サビーネ殿、ご苦労様。支店長はおられるかな?」



と声を掛けた。



「ビトー様、ようこそおいで下さいました。アンナは奥におります。直ちに呼んで参ります」



サビーネが裏に引っ込むと、すぐに入れ替わりでアンナが出て来た。



「これはビトー様、ようこそおいで下さいました。私どもの方から伺いましたのに」


「いや、開店準備のお忙しいところ申し訳ありません」


「とんでも御座いません。本日はどのような御用を?」


「実はハーフォード公爵夫人がソフィーの下着に興味を持たれまして」


「まあ、それは名誉なことでございます」


「それでですね、もしアンナ殿の御都合がよろしければ、一度顔をお見せ下さいと伝えて欲しい、そう伝言を頼まれまして・・・」


「!!! それはいつですか!?」


「つい先ほどです」



アンナは私に一礼すると、



「サビーネ! サビーネ!!」


と大声で呼んだ。

サビーネが出てくると、



「直ちにハーフォード公爵家へ伺います」


「準備は?」


「ビトー様発案のランジェリーのカタログを。急いで!」


「はい!」



コマネズミのように動き始めた。



「アンナ殿?」


「公爵夫人へ口利きをして頂き、感謝に堪えませぬ。これでハーフォード支店は繁盛間違いございません。また改めて御礼に伺います」


「おお・・ では失礼致します」




帰り道、ソフィーに聞いた。


「アンナ殿が慌ててマグダレーナ様に会いに行ったアレは何だったのだろう?」


「マグダレーナ様が都合の良い時に来てくれと言ったでしょ」


「うん」


「あれはすぐに来い、と言う意味よ」


「都合が付き次第って言っていたけど」


「マーラー商会の都合でしょ。マグダレーナ様はいつでも来いと言われたからマグダレーナ様の都合は付いているの。マグダレーナ様の都合とマーラー商会の都合、どっちが重要か考えるまでもないでしょ」


「ソフィー、あなたは戦略家だねぇ」



ソフィーに小突かれた。



「馬鹿。あなたも貴族なのだからよく憶えておいて」


「はい」



下着フラグが立ったので、夜はソフィーをしっかりと看護した。



◇ ◇ ◇ ◇



今年の下半期。


マーラー商会の革命的なランジェリーは、マグダレーナ様発信の流行として、ハーフォード領内の上流階級のご婦人方に爆発的に広まった。


マーラー商会はハーフォード支店だけでは生産が追いつかず、本店の応援を得て、上客の苛立ちが募る前に最初のロットの納品を済ませた。


顧客満足度は言うまでも無かった。




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