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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
07 原始ダンジョン偵察編
74/334

074話 侵入


守衛のスケルトンが倒されても他のスケルトンがダンジョン内から出て来ないことを確認し、次の段階に進むことにした。


ウォルフガングが指示を出す。



「これより原始ダンジョンへ接近を試みる。

 ターゲットは初層のみ。しかも途中までだ。

 ダンジョン内の魔物を狩り尽くす必要は無い。間引く程度だ。

 スケルトンが出てくると予想されるが、スケルトン以外の魔物に注意せよ。

 一応地図を作成するが、これは後日改編される物だ。


 隊列は、前衛は儂、ソフィー、ジークフリード。

 後衛はマロン、ビトー、クロエだ」


「「「「 了解 」」」」


「ソフィー、何か気付きはあるか」


「ございません」


「近づくぞ」



そっと窪地に近づく。


洞穴が見える。これがダンジョンの入口らしい。


目印のため、近くに生えている灌木をダンジョンの入口に移植して布を巻いておく。


ダンジョン内の臭いを嗅いでいるマロンに聞く。



「スケルトンは?」 いる。


「スケルトン以外の魔物は?」 いない。


「予定通り前衛は儂、ソフィー、ジークフリード。後衛はマロン、ビトー、クロエだ。入るぞ」



◇ ◇ ◇ ◇



洞窟はウォルフガングが余裕で立って歩ける位の高さがあった。


天井まで4mほど。幅は5mほど。


メッサーのダンジョンと比べると遥かに狭い。

ウォルフガングやソフィーが剣を上段に構えると天井につかえるかどうか、といったところ。


ダンジョンの七不思議で洞窟内なのにほのかに明るい。

だがウォルフガングの指示で、今回は灯りを掲げながら洞窟内を進むことにした。


今回は何一つ見落とさないように、あえて洞窟内を明るくしろとのこと。

天井、壁、床、何一つ見落としの無いようにしている。


天井、壁、床は、すべて岩肌になっている。




話は変わるが、私は光魔術士としての実力がもう一つらしく、一番簡単なはずのライトでさえ、何でもよいので光源が無いと光を出すことが出来ない。

灯りはハーピーの羽根を漂わせながら、羽根そのものを光源にしている。


パーティの皆さんは「私が腰に手を当て、ニヤリと笑い、指をパチリと鳴らせば光球が現れ、柔らかな光で洞窟内を照らしてくれる」というイメージをお持ちだったらしい。

何とも言えぬ表情で、ふわふわ漂うハーピーの羽根を見ている。


いいじゃないか。

ハーピーの羽根は軽い上に魔力を通しやすいので、私の様な半人前の魔道士には大変に有り難い道具なんだぞ。




遠くから「ガシャン、ガシャン」という音が聞こえてきた。


ウォルフガングが小声で指示をする。

皆が無言で指示に従う。


私とマロンが洞窟の真ん中に突っ立って来訪者を待つ。

他のメンバーは左右に散り、壁際に身を潜めた。


びっくりしたのは壁際に散ったメンバーから気配が消えたこと。


まじまじと見ればそこにいることがわかるが、気配の上では急に人が消えたのも同然だった。これに認識阻害を掛ければダンジョンの探索は楽になりそうだ。



ライトの灯りに照らされて現れたのはスケルトン4体。


3体は門番をしていたスケルトンと同じだった。


もう1体は体が一回り大きく、良い鎧を着て、より長い剣を装着していた。


一回りデカいスケルトンが剣で私とマロンを指し、骨が軋るような音を立てて配下のスケルトンどもをけしかけた。


私は剣を抜きながら、マロンは牙を見せながら後ずさる。


スケルトンどもを誘い込む。


良い地点に差し掛かったなと思った瞬間、ウォルフガングがデカいスケルトンを脳天から真っ二つにし、ソフィー、ジークフリード、クロエがやはり一撃でスケルトンを葬った。



「一回りデカイのはスケルトンナイトだったな。魔石を回収しておけ」


「はい」



これもダンジョンの七不思議の一つで、ダンジョンを守る魔物はダンジョン内で死ぬとすぐに死体がダンジョンの床に吸収される。

後には4体分の魔石が残る。


もしスケルトンを持って帰りたいなら、ダンジョンに吸収される前に回収しないといけない。


死体の解体作業がなく、アンデッド化防止の焼却処分も必要無いので、私はダンジョンが大好きだ。


地図上に魔物が出た場所を記し、先に進む。




通路が二つに分岐している。



「左手の法則で行くか・・・」



そうウォルフガングがつぶやき、左の道を選択する。


いくらも行かないうちに前後から「ガシャン、ガシャン」という足音が聞こえてきた。

どうやら挟み撃ちの罠に嵌まったようだ。



「マロン? スケルトン以外の魔物は?」 いない。



ウォルフガングの指示に迷いは無い。



「正面を突破する。フォーメーション5」



前衛にウォルフガングとソフィー。中衛に私とマロン。後衛にジークフリードとクロエを配置。変則の3段構成。


前面に最高戦力を並べ、敵陣を突破する。


その後ろに守られる部隊を置く。


後衛は後方から襲いかかる敵を倒すのでは無く、突破されないことを目的とする。



前方から来たのは先ほどと同じスケルトンナイト1体とスケルトン3体だった。

ウォルフガングとソフィーがあっという間に潰した。


その間に後ろにスケルトンが現れた。

後方の魔物もスケルトンナイト1体とスケルトン3体だった。



ウォルフガングの指示はわかりやすい。



「前方は片付いた。背中を気にせず確実に倒せ」



ウォルフガングの指示を受けてジークフリードとクロエが安定した戦いを見せる。

2対4なのに全く危なげない。


私も少しお手伝いをする。

クロエの横に回り込もうとするスケルトンにデ・ヒールをお見舞いする。


あら。

右腕が剣を持ったまま落っこちた。

さすがは骨だけだな。脆い。


危なげなく挟み撃ちを切り抜け、魔石を拾い、魔物の出方を記録して先を進んだ。



◇ ◇ ◇ ◇



今、我々は通路に面した部屋の中にいる。


挟み撃ちに遭ったところから更に先に進むと、通路沿い右手側に部屋が出てくるようになった。


通路にもスケルトンが出るが、部屋の中には必ずスケルトンがいるので、退治しながら進んだ。


今、3つ目の部屋を攻略した後で、部屋の中で休憩している。

袋の鼠にならないように、マロンに通路の気配を探ってもらっている。



通路はまだまだ続き、部屋もいくつもあるようだ。

次の階層への階段は見当たらない。

誰も傷を負っていない。

疲労もどうと言うことは無い。


だがウォルフガングとソフィーがやや深刻そうに相談していた。



探索を再開する。


Y字路を左に折れた後、ここまで一本道だった。

通路に面した部屋は次々に出て来る。

部屋には必ずスケルトンがいて、律儀に我々を襲ってくる。


攻略した部屋を後に、通路を進む。



5部屋目に差し掛かった時。

通路を挟んで左右両方に部屋があることに気付いた。


ウォルフガングが皆を止めた。

ウォルフガングがソフィーと目配せをして、小さな声で宣言した。



「撤退する」


「「「「 了解 」」」」


「隊列は探索で行く」


「「「「 了解 」」」」


「駆け足」


「「「「 了解 」」」」



それからは探索時の隊列(前衛はマロン、私、クロエ。後衛はウォルフガング、ソフィー、ジークフリード)で、駆け足で引き返した。


マロンがいち早く魔物の気配を感じ取り、警告を出す。

私がライトで魔物を照らし、デ・ヒールを掛けて弱らせる。

マロンが牙で、クロエは剣と風魔法で、私は脇差とショートソードで、スケルトンを倒していく。


スケルトンナイトは私がデ・ヒールで弱らせ、クロエが一撃で倒した。


Y字路のところで背後にスケルトンが現れ、挟み撃ちになるところも再現性がある。



Y字路から出口へ向けて一直線の通路。

行く時は途中で1回スケルトンと出くわしたが、帰りは2回遭遇した。

特に問題は無いが・・・


Y字路から出口までの距離が伸びた様な気がする。



ダンジョンの外に飛び出すと、入る時に目印に植えた灌木が見当たらない。

ダンジョンの出入口が移動していることがわかった。


ウォルフガングはホッとしているようだった。




イルアンへの帰り道、ウォルフガングに撤退の理由を聞いた。

色々話してくれたが、まとめるとおおよそこんな感じだった。


それまで1つずつ出て来た部屋が、2個同時に出た。

ダンジョンが変化を始めた兆候と見た。

あれほどの距離を進み、部屋を攻略しても、次の階層への階段が見当たらない。

次の階層の魔物の気配も無い。

原始ダンジョンの初層階にしてはデカすぎる。

ダンジョンの変化は縮む方向に出るのではないか。

そして変化に巻き込まれるわけにはいかない。

変化は3日から1週間ほど掛かる。

あの感じだと安全を見て2週間は様子見した方が良い。

それまでは近づかない。

あのダンジョンは落ち着いた後は深くなる。



「ダンジョンが変化している時は、ダンジョン内の魔物は外に出てこないですか?」


「何とも言い様がないな。そこまで知見が無い」


「では2~3日監視した方がよいですね」


「これもお役目か」


「ええ」




イルアンの宿の予約を3日滞在コースにした。

3日間、イルアンから原始ダンジョンまでの間の麦畑や草原をパトロールした。


この3日の間に椿事があった。

「ウォーカー」は軍隊であることが判明したのだった。


イルアンの村の食堂でやや酒の入ったウォルフガングは、「俺は騎士団に負けない冒険者パーティを作るのが夢だった」と熱く語り出した。


そこまでは良かったのだが、「だからお前たちを鍛え上げる」と宣言したときは場が凍り付いた。

ソフィーは知っていたらしく素知らぬ顔をし、ジークフリードとクロエは絶望の色を浮かべ、私は「医療班だろうな」と勝手に思い、マロンは良くわからない風だった。



それから3日間。


イルアンから原始ダンジョンの間で、一日中駆け足をしている「ウォーカー」が見られた。


駆け足しながら隊列を変える訓練、ダッシュしながら隊列を変える訓練、ダッシュしながら魔法を撃つ訓練を続けた。


正直言って原始ダンジョンに潜っている方が楽だった。


ホーンラビットは出て来たが、スケルトンは出てこなかった。

ホーンドラビットには申し訳ないが、出て来た時は有り難かった。


皆さん丁寧にズタズタに、丁寧にバラバラに、丁寧に丸焼きに、丁寧に針山にして差し上げた。



つらいことばかりじゃない。

良いこともあった。

ジークフリードが土魔法に目覚めたのだ。


それまでジークフリードは何も無いところに岩弾や岩槍を出そうとして、なかなかうまくいかなかった。



「その辺の土を使えばどう?」



何気なく言った私の一言から土魔法を使えるようになった。


どうもこちらの世界の魔法使いは、”何も無いところに岩弾や岩槍を出す” ことにこだわりがあり、

既にある土を再利用しようと思わないらしい。


ジーク。君はダンジョンへ潜る時は袋に土を詰めて持っていこう。



結局イルアンから原始ダンジョンまでの間の草原はホーンドラビットしか出なかった。

スライムは気配すら無かった。


ダンジョンから魔物があふれ出すようなスタンピードは無いと見て、いったんハーフォードまで戻り、公爵へ報告することにした。




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