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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
07 原始ダンジョン偵察編
73/302

073話 偵察


ハーフォードの冒険者ギルドに情報収集へ行った。


腕っ節の強い受付嬢、アリス嬢に尋常に挨拶。

今日はソフィーが一緒にいるので強引なことはしてこない。

だが胡散臭げにソフィーを見ている。


このギルドは初見の者は冒険者証を確認するのだった。

ソフィーに冒険者証を提示させ「妻です」と紹介すると納得したようだった。


壁に貼り出されたクエストを見ていく。

特に変わったクエストは無い。


最近の魔物の状況を聞く。

領内全域で魔物の目撃例が増えているが、雨期の後は増えるので例年通り。

おかしな事ではないらしい。

見慣れない魔物もいない。



ダンジョンを偵察しても差し支えないと判断した。


ハウスキーパーにまとまったお金を渡して留守を頼み、出発した。

ハウスキーパーには「イルアンを偵察してきます」とだけ告げた。



◇ ◇ ◇ ◇



原始ダンジョンのおおよその位置はアイシャから聞いている。


黒森の北東部。

森の中ではなく、森から少し離れたところ。


近くにはイルアンという、ハミルトンよりも小さな村がある。

まずはそこを目指す。



今後我々は5人+1匹の冒険者パーティとして行動する。


パーティ名は「ウォーカー」。


名前の由来はかつてウォルフガングが率いていたパーティで、ダンジョン内を探索する者の意。


オーナーは私。

リーダーはウォルフガング。

副リーダーはソフィー。



このパーティの特徴は2つある。

1つ目は私が決めたパーティルール。


「ウォーカーは互助会とします」


「何だそれは?」


「運命共同体です」


「?」


「ウォーカーのメンバーは家族です。ダンジョンの内でも外でも助け合います」


「ほほう。画期的だな」


「よろしいですね?」


「わかった」


「皆さんも?」


「「「 わかった 」」」



もう一つの特徴は、状況に応じて隊列がそっくり入れ替わること。


現時点での隊列は、


(探索時)前衛:マロン、私、クロエ

     後衛:ウォルフガング、ソフィー、ジークフリード


(戦闘時)前衛:ウォルフガング、ソフィー、ジークフリード

     後衛:マロン、私、クロエ


強力な魔物に包囲された時の特殊フォーメーションとして、


(円陣) 前衛:ウォルフガング、マロン

     中衛:ソフィー、私

     後衛:ジークフリード、クロエ


中心にいるソフィーを砲台として、ソフィーを守る隊列を取る。


これ以外にも2列縦隊を数パターン取り入れた。



◇ ◇ ◇ ◇



ハーフォードからイルアンまで馬なら1日。馬車で2日。徒歩なら5日の行程。

私は馬、または馬車で行くものと思っていた。


ウォルフガングの一言で幻想は打ち砕かれた。



「走るぞ。隊列を組みながら走る訓練だ」



の一言で(探索時)のフォーメーションでイルアンまで走ることになった。


時々後ろからウォルフガングの掛け声が掛かる。



「ダーーーッシュ!!」



猛然と走り始める。

あっという間にウォルフガングとソフィーに追いつかれる。



「おらっ! チンタラ走ってると死ぬぞ!」



うおおおおおおお・・・・

全力で3分も走ると酸欠でぶっ倒れて死ぬ。


私とクロエの屍の横で、ウォルフガングが涼しい顔をして言う。



「死んだな。いい奴だったんだがな」



イジメですか?


置いて行かれたジークフリードが合流し、ぶっ倒れる。



息を整え、気を取り直して駆け足行軍。

今度は全力ではない。

全員息を合わせて一定速度で走る。



「撃ち方始めっ!!!」



ウォルフガングの掛け声と共に、魔法を撃てる者は撃ちながら走る。


ソフィーは同時に四方へアイススピア(氷槍)を撃ち込む。

クロエは前方へウィンドカッターを撃ち込むが、それ以外にも私には良くわからない風の使い方を試していた。


私はパーティ全員に一瞬で認識阻害を掛けられるように訓練中。

ヒールも訓練中。



ウォルフガングとジークフリードは剣を抜き、走りながら剣戟に魔力を乗せる。

二人とも魔力はあるものの魔法の素養が乏しく、魔法が発現しにくい。


そんな者でも自分の属性に合った剣を使えば剣戟の際に魔力を乗せる事ができる。


ジークフリードは土属性の長剣を所有している。

岩弾を撃ったり、砂塵を出したりしようとしているが、成功しているとは言い難い。


ウォルフガングはロングソード・アクセルの柄に火属性の魔石を組み込んでいる。

何とか火球を撃っている。


マロンは索敵範囲を拡大し、皆が魔法を撃ち込む範囲内に人がいないことを確認しながら走っている。



「ダンジョン外は当然だが、ダンジョンの中でも隊列で走ることになる。

 特に撤退時は走るぞ。状況に応じて隊列を変えるからな。

 各自イメージを刷り込んでおけよ」



途中頻繁にホーンラビットの群れ(4~5匹)に遭遇する。


ホーンラビットは逃げず、向かってくる。

良い兆候とは思えない。



◇ ◇ ◇ ◇



イルアンの街に着く。


何と、馬車と変わらぬ速さでイルアンに着いてしまった。



イルアンは、人口は少ないが交通の要衝である。

街道が交わっており、南に領都ハーフォード。北にブリサニア王国の王都ジルゴン。 東にイルアンと同程度の村のレントがある。


南西の方角に黒森がある。

黒森方面には街道はない。



麦の収穫はすっかり終わっており、果樹の収穫期まで一休みという感じ。


冒険者ギルド証を見せて門を潜ると、村全体がピリピリしている様に感じる。

投宿して宿屋の食堂で冒険者に理由を聞く。



「ここ最近隊商の護衛が一気に難しくなった」


「いや、盗賊じゃねえ。ホーンドラビットだ」


「奴ら、今まで俺たちを見たら逃げていたんだが、向かってくるようになった」


「しかも集団でだ」


「何とか退治するんだが、大集団で襲われちまった隊商があってな。手に合わねえって逃げたんだが、冒険者が2名やられちまった」


「果物の収穫を納める時にまた護衛するが、今から思いやられる」


「あんたら腕利きだな。見りゃわかる」


「収穫が終わるまで俺たちの仲間になっちゃくれねえか?」



「いや、儂らもクエストの最中でな・・・」


「そうか、そいつはすまんかった」



◇ ◇ ◇ ◇



翌日。イルアン周辺の探索を行う。


索敵の主役はマロン。


ホーンラビットの以外の魔物の臭いに注意してくれ。

もし跡をたどれるならたどってくれ。


隊列は探索時のフォーメーション。



マロンが何かに気付いた。


マロン?

君は何の臭いをたどっているの?


ホーンドラビット? 違う?


ゴブリン? 違う?


オーク? 違う?


スライム? そう、スライムか。


スライムだけじゃない?


アンデッド? それは困るな。


マロンはジグザグに進みながら、おおよその方向として黒森へ向かっている。

遠くに黒森の影が見える。



かなり黒森に近づいたなと思った頃、マロンが足を止めた。

マロンの見る方をみると、窪地に何かがいる。

スケルトンが2体。

直立不動でいる。



種族:スケルトン

年齢:1歳

魔法:無し

特殊能力:無し

脅威度:Eクラス



身長は180cmくらい。

外見は「THE骸骨」。

見れば見るほど骨だけで動けるというのが不思議な魔物だ。


だが眼窩の奥に目玉らしき物が見えるので、骸骨の中身は詰まっているのだろう。


STRやらINTやら、細かな数字を見ようとしたら、ソフィーに止められた。


「数字は参考に過ぎない。数字は経験が反映されない。数字に囚われるな。種族、年齢、魔法、特殊能力、脅威度で判断した方が間違いない」



スケルトンは、生前の得物を携えている場合が多い。

目の前のこいつらは長剣をもっている。元々剣士だったのだろう。


スケルトンはこっちに気付いていない。

二体並んで微動だにしない。

何をしているのだろう?



ウォルフガングの合図でいったん距離を取る。



「見つけたな」


「何をです?」


「原始ダンジョンだ」


「スケルトンは?」


「あれはダンジョンの門番だな」


「門番なんて初めて見ました」


「まだ一度も外敵の侵入を許していないダンジョンは、ダンジョンの外まで支配下に置く。だから守衛がいるのだ」


「2体のスケルトンの間にある穴が・・・」


「ダンジョンの入口だ。地形から考えて下に潜るダンジョンと思って間違いない。初層にはスケルトンがいるはずだ」



一度ダンジョンから離れた。

車座になって改めて作戦を立てる。



「まず、この周囲にどのような魔物がいるか確認する」


「次に、このダンジョンに他の入口が無いか、確認する」



マロンを先頭に周囲を索敵して回った。

その結果、スケルトンは門番以外にいないことがわかった。


周辺に棲息している魔物はホーンラビット、スライム。

黒森に近づくとディアー系の気配がする。


イナゴとレッドアイはいない。

徐々に冬に向かうので卵の状態かもしれない。



ダンジョンの他の入口は見当たらなかった。


「見落としの可能性は?」


「ゼロじゃない。だがスケルトンが見当たらないので無いのだろう。だが油断するなよ。今日は無いということだ。明日以降ダンジョンが変化した時は増えるかも知れないぞ」



そう言うと、ウォルフガングはスケルトンを片づけて中に入ると言った。



「守衛の2体はソフィーのアイススピアで不意打ちする。中の魔物に気付かせるな」


「承知しました。ビトー、ダンジョン内のマッピングはお前がやれ」


「はい」



ソフィーはスケルトンから十分に離れた場所から攻撃を開始した。


なにやらゆっくりと魔力操作をしている。

何をしているのだろうと思って見ていたら、不意に2体のスケルトンの頭上に氷の槍が出現した。


頭蓋骨を貫かれたスケルトンが「ガシャッ」と崩れ落ちた。




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