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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
07 原始ダンジョン偵察編
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071話 ジェームス子爵


呪いに気付いたのは偶然だった。


リオーズ商会が献上してきた首飾り。


創業10周年記念?

日頃の御愛顧に感謝?

俺はお前のところを贔屓にしたことなど無いぞ。


母上と姉上が上得意?

そうか。

なら良い。


だが俺に首飾りなど似合うものか。

そう思って放置していた。




3ヶ月後。


突然お気に入りの侍女が暇をくれといってきた。

あれはいい女だ。

なぜ辞めたい?

給金ははずんでいたはずだ。



「だめだ。お前は手放さない」


「身分が違うので側室にすることはできぬが、俺はずっとお前を囲い続ける」



そう言うと女は黙って俯いた。



女は突然死んだ。

他の侍女に聞くと凄惨な死に様だった。

自分の体に火を放ち、叫ぶように何かに謝りながら焼け死んだ。


俺の首飾りを俺に黙って身に付けていたらしく「呪われた、罰が当たった、お許し下さい」と叫んでいたらしい。


俺の首飾り?

俺はそんなもの持っていたか?


数日後、リオーズ商会から献上された首飾りのことを思い出した。

だがどこに仕舞ったのか思い出せない。

そもそも仕舞った記憶も無い。


呪われたとはどういうことだ?


他の侍女に聞くと、死んだ侍女は体中に青黒い痣が拡がり、見るも無惨な姿になり果てていたらしい。


夜伽に呼ばれる日が近づき、どうにもならないことがわかり、自殺したのだという。



侍女に聞いた。

死んだ侍女が身に付けていたのはリオーズ商会から献上された首飾りか?


そうだった。

俺が放置した首飾りを、呪われた侍女が片付けるフリをして自分で着けていたらしい。




まずリオーズを探らねばならん。


呼び付けたら逃げられる可能性が高い。

こちらから出向いてやろう。


いきなりリオーズ商会へ乗り込んだ。

リオーズの表情を見て理解した。

奴は知っている。



リオーズ、なぜ俺がここに来たのかわかるな?

貴様は秘密を守れるな?

よし。俺の子飼いにしてやる。


あの首飾りだが、誰に贈った?


ほお・・・


お前が俺に忠誠を誓う限り、俺が何かを言うことはない。

その代わり呪いを祓う手段を言え。


わからない?

馬鹿もん。すぐ調べろ。




母上と姉上が呪われた。


さてはリオーズが献上した首飾りを着けたな。


俺とリオーズにとって幸いなのは、母上も姉上も大量の首飾りを取っ替え引っ替え着けているので、どれが原因かわからない。


そもそも首飾りが原因なのかどうかもわからない。


父上はアレコレ手を回して解呪ポーションを手に入れようとしている。

だが解呪ポーションなど噂ばかりで、実際に効いたためしが無い。

そんなことは貴族の常識だろうに。


父上も耄碌した。

そろそろ俺に公爵位を譲って引退されてもいい頃だ。


ここは俺が母上と姉上の呪いを祓って差し上げ、その功績をもって父上に引退を迫るべきだろう。


リオーズ。さっさと解呪の方法を調べろ。



◇ ◇ ◇ ◇



普段王都に常駐する宗教査問官と王都騎士団がハーフォードに立ち寄った。


ヒックスでミリトス教会が暗躍していたらしく、宗教査問官と王都騎士団がヒックスへ出張し、奴らを根絶した。


その帰り道とのことだった。


ミリトス教会?


まさかリオーズの首飾りはミリトス教会絡みなのか?


リオーズ!

リオーズはどこだ!


リオーズ商会はもぬけの殻だった!!


くそっ!!

はめられた!!



◇ ◇ ◇ ◇



母上と姉上の呪いは、宗教査問官と一緒に来たビトーとかいう冒険者があっさりと解呪してしまった。


俺が公爵に陞爵する計画が一介の冒険者風情に台無しにされた。


許せん。



そもそも奴が二ヶ月早く来れば、俺のお気に入りの侍女も解呪できたはずだ。

なぜ遅れてきた?


絶対に許せん。




宗教査問官の調査の結果、呪いの原因はリオーズの首飾りだったことがバレた。

そしてリオーズはミリトス教会の手先だったことが判明した。


リオーズは既に雲隠れしている。

リオーズが捕まらない限り、俺とリオーズの関係はわかるまい。

大体リオーズが捕まって何か証言しても所詮は平民。

貴族の俺が否定すればそれまでだ。

ひとまず安心だ。




どうも雲行きが怪しい。


宗教査問官と一緒に来たマキという女。

あれほど優秀とは予想できなかった。

潜伏したリオーズの関係者が次々に挙げられている。

俺も気付かなかった隠れ信徒が続々と捕縛されている。


俺は奴らの前で何かを話したかも知れない。

平民が何を言っても知らぬ存ぜぬだが、マキが平民を尋問し、マキが代弁すると話は別だ。


放っておけば俺まで累が及ぶ。

マキは殺らねばならん。

だが、今マキを殺るのは不可能だ。必ず俺までたどり着いてしまう。


まずはビトーという腐れ冒険者だ。

コイツはマキと親しい。

情報共有している可能性が高い。


まずはこいつから殺そう。

暗殺では無く、事故に見せかけて殺さねばならん。


クソっ! また無駄な出費になる。


許せん。



◇ ◇ ◇ ◇



国全体で反ミリトスキャンペーンが始まってしまった。

俺も俺の子飼いも駆り出されることになった。

事故に見せかけて殺すには要員が足りない。


命拾いをしたな。



◇ ◇ ◇ ◇



父上は例の冒険者にハミルトンのトラブルに当たらせるという。

あんな腐れ冒険者風情に何が出来る。


無駄、無駄。


ハミルトンも馬鹿にされたものだ。気の毒に。


俺の露払いにもならん。




例の冒険者はハミルトンのトラブルを解決したという。


ハミルトンの件は無能な伯父上をダシにして、俺を引き立たせる演出だったのに。

俺がハミルトンに赴いて問題を解決するはずだったのに。

俺の功績を横取りするとは・・・


絶対に許すことはできん。



父上と母上はハミルトンにおける功を愛でて、あんな腐れ冒険者風情に大金を与えるという。

本来俺がもらうはずだった金だ。



もう許せん。


腐れ冒険者は殺し、父上も母上には退場してもらおう。




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