060話 (閑話)カルロ
俺の名はカルロ。
ハミルトン村の若造だ。
若造だが目端は利く。
ちなみに村の近くでディアー系魔物を目撃して報告したのは俺だ。
手柄だといわれた。
“せいぎゅう” とかいうワケ分からん物を作るのに駆り出されたのも俺だ。
良い小遣い稼ぎになった。
俺は村の一大事に役に立っている。
仲間内で胸を張って自慢した。
だからといって全員一致で「夜間のルーン川監視役」(通称:決死隊)に俺を推薦するのはいかがなものか?
助役さんが村で4つしかない魔道具「ライト」を貸してくれた。
松明代わりの照明器具だ。
暴風雨の中では松明も消えてしまうし、もし消えずに飛ばされたりすると火事の恐れがあるからだ。
初めて触れる魔道具にわくわくして点灯していたら怒られた。
無駄に魔力を消費すると朝まで保たないらしい。
◇ ◇ ◇ ◇
初めて経験する水龍の呪いの真っ只中の夜間監視は、何もかも衝撃的だった。
ルーン川の水位が突然上昇した。
本当に突然だった。
最初はライトをケチケチ使いながら見ていたが、ケチケチしている場合じゃ無かった。
途中から点けっぱなしにしたが、見る見るうちに水位が上がった。
俺は堤防の上にいたが、身の危険を感じた。
だが悲しいかな逃げ場は無かった。
ここが一番高いから。
上流の方から腹に響く轟音が聞こえてきた。
そちらにライトを向けるとルーン橋に巨大な流木が激突していた。
流木は水にもまれて何度も何度も橋に打ち付けられていた。
ああ、あれじゃ橋は壊れるな、と妙に納得してしまった。
だが、橋が壊れていくのを見ているうちに大変なことに気付いた。
橋を壊した流木は俺の方に来るじゃないか!
うおおおっ!
逃げ場がねぇ!!
俺を守ってくれたのはせいぎゅうだった。
川はせいぎゅうの周りに来ると何となくおとなしくなった。
壊れた橋や流木がせいぎゅうにぶつかるが、堪えてくれた。
だが、後から後から流木が来る。
せいぎゅうも限界が来て壊れ始めた。
ここまでか・・・ と思ったら、2番目のせいぎゅうが役目を果たしていた。
なんだか猛烈に感動してしまった。
時折稲光が走る豪雨の中、俺は誓った。
命の恩人のせいぎゅうを直す。
そしてもっと頑丈に作ってやる。




