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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
05 ハーフォードの呪い編
60/302

060話 (閑話)カルロ

俺の名はカルロ。


ハミルトン村の若造だ。


若造だが目端は利く。


ちなみに村の近くでディアー系魔物を目撃して報告したのは俺だ。


手柄だといわれた。



“せいぎゅう” とかいうワケ分からん物を作るのに駆り出されたのも俺だ。


良い小遣い稼ぎになった。


俺は村の一大事に役に立っている。


仲間内で胸を張って自慢した。



だからといって全員一致で「夜間のルーン川監視役」(通称:決死隊)に俺を推薦するのはいかがなものか?




助役さんが村で4つしかない魔道具「ライト」を貸してくれた。


松明代わりの照明器具だ。


暴風雨の中では松明も消えてしまうし、もし消えずに飛ばされたりすると火事の恐れがあるからだ。


初めて触れる魔道具にわくわくして点灯していたら怒られた。


無駄に魔力を消費すると朝まで保たないらしい。



◇ ◇ ◇ ◇



初めて経験する水龍の呪いの真っ只中の夜間監視は、何もかも衝撃的だった。


ルーン川の水位が突然上昇した。


本当に突然だった。


最初はライトをケチケチ使いながら見ていたが、ケチケチしている場合じゃ無かった。


途中から点けっぱなしにしたが、見る見るうちに水位が上がった。




俺は堤防の上にいたが、身の危険を感じた。


だが悲しいかな逃げ場は無かった。


ここが一番高いから。




上流の方から腹に響く轟音が聞こえてきた。


そちらにライトを向けるとルーン橋に巨大な流木が激突していた。


流木は水にもまれて何度も何度も橋に打ち付けられていた。


ああ、あれじゃ橋は壊れるな、と妙に納得してしまった。



だが、橋が壊れていくのを見ているうちに大変なことに気付いた。


橋を壊した流木は俺の方に来るじゃないか!


うおおおっ!

逃げ場がねぇ!!




俺を守ってくれたのはせいぎゅうだった。


川はせいぎゅうの周りに来ると何となくおとなしくなった。


壊れた橋や流木がせいぎゅうにぶつかるが、堪えてくれた。


だが、後から後から流木が来る。


せいぎゅうも限界が来て壊れ始めた。


ここまでか・・・ と思ったら、2番目のせいぎゅうが役目を果たしていた。


なんだか猛烈に感動してしまった。




時折稲光が走る豪雨の中、俺は誓った。


命の恩人のせいぎゅうを直す。


そしてもっと頑丈に作ってやる。




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