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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
03 出国編
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039話 ラミアの里1

私たちを救ってくれたラミア族は3人。

挨拶をしてくれたペネロペがリーダーらしい。

ペネロペの前で片膝を付き、感謝を込めて挨拶。



「お初にお目に掛かります。人間族のビトー・スティールズと申します。 この度は危ういところを救って頂き、感謝の念に堪えません」


「ビトー様。私にそのような丁寧なご挨拶は必要御座いません。 とにかく安全の確認が取れるまで、我らの里でお休みくださいませ」


「ありがとう存じます。 ところで、なぜ私がビトー・スティールズであるとわかりましたか?」


「コスピアジェ様が教えてくれました。 そちらはレイ様、マキ様、ユミ様ですね」


「申し遅れました。レイと申します」

「マキと申します」

「ユミと申します」



3人も尋常に挨拶。

さっきまで腰を抜かすほど驚いていたのに、ずいぶん慣れるのが早いな。




ラミアの里へ移動する前にペネロペにお願いをする。


「奴らの死体が見つからないようにしたいのです」

「どんな感じで?」


「ブラックサーペントに呑ませるとか、地中深く埋めるとか。 

 衣服は燃やして欲しいです。

 彼らの得物は地中深く埋めるか、鋳つぶすとかしたいです。

 馬は皆さんが使って頂いてかまいません。 放馬しなければ大丈夫です」


「ふむ。厳重なのですね」

「ええ。かなり執拗でタチの悪い連中に命を狙われておりまして。 あの殺し屋どもの任務失敗の報が届くのを極力遅らせたいのです」

「わかりました。 ところで誰に追われているのですか?」

「ミリトス教会です」

「・・・余計なことを聞きました。それは族長の前で話すとしましょう」



ペネロペは他の2人に指示を出すと、我々を岩の森の中へ案内した。



◇ ◇ ◇ ◇



この森はなぜ岩の森というのか。

それは森の中に奇岩が林立し、異様な風景を見せているから。


いや逆か。

奇岩が林立する土地に木が生えたのだろう。


ペネロペの話では、岩の森の中心にラミアの里があり、岩の森のほぼ全域をラミア達が支配している。


岩の森の南をイプシロン~ミューロン間の街道が走っている。


街道が通行止めだったのですが何故でしょう? と聞くと、おおむね次のような答えが返ってきた。


ラミアは自分達にちょっかいを出されない限り、街道の往来は邪魔しない。

そしてここ100年ほどラミア族に絡む輩はいない。

一方、ラミア達が狩りを行う際、獲物が岩の森の外まで逃げる事がある。

森の外まで追いかけて仕留める事がある。

街道に居合わせた者がその様子を見れば、何やらラミア達が暴れている、と思うかもしれない。


納得しました。



ペネロペはうねうねと岩と巨木の間を縫うように進む。

ラミア族の美女の先導で岩の森の奥へ案内される。

レイ、マキ、ユミは不安顔。

でも途中でマロンが合流した時はほっとしたようだった。


マロンの首を抱きしめて「よくやった」と激賞した。

レイ、マキ、ユミもマロンのもふもふを堪能していた。


「ふふ。あなた優秀ね」


ペネロペがマロンに話し掛ける。

マロンも尻尾を振って喜んでいる。



◇ ◇ ◇ ◇



ラミア族の族長にお目通りした。


族長アレクサンドラ。


妖艶という表現がぴったりの黒髪の美魔女。

年齢は怖いので聞かない。

鑑定もしない。


ラミア族の最年長なのだろうが、人間で言うと三十路の女盛りにしか見えない。

上半身は。


上半身はビキニで良いので何かを着て欲しい。


一生成長し続けるのだろうか、個体差なのだろうか。

族長の胸は正しく爆乳。

ただし垂れていない。

見事な張りとフォルム。

(一部の)男の夢だろう。

レイ、マキ、ユミが少々やさぐれているように見える。


だがその下半身は恐るべき姿。

輝く編み目模様の鱗。

直径約70cm、長さ約4mの大蛇。

ペネロペより一回り大きい。



族長の前で片膝を付き、自己紹介。



「お初にお目に掛かります。ビトー・スティールズと申します。人間族です。どうぞお見知りおきを」

「レイと申します。人間族です。どうぞお見知りおきを」

「マキと申します。人間族です。どうぞお見知りおきを」

「ユミと申します。人間族です。どうぞお見知りおきを」

「こちらはマロンと申します。犬族です。どうぞお見知りおきを (ワウッ)」



そして背負い袋からコスピアジェの布を取り出し、広げて見せる。


「私の身元を証明するものでございます」


族長は目を見張り、一言。


「見せなさい」


ペネロペにコスピアジェの布を預け、ペネロペから族長に渡してもらう。

族長はじっと検分していたが、やがてため息をついて返してくれた。


「私はアレクサンドラ、ラミアの族長じゃ。ゆるりとして行かれるが良い。 しかしよくぞこれを貰うたの」


予想はしていたが相当貴重な品であり、コスピアジェの信用が付いているらしい。

師匠の信用とともにコスピアジェの信用も裏切れないな・・・



コスピアジェは巣に戻る途中でラミアの里に立ち寄り、私のことを話していった。

魔物を治癒することに躊躇いのない人間がいる、と。

そこでラミア族は私がこの近くを通るなら招き入れようと、継続して街道を見張っていたとのことだった。


私たちが追われているのはかなり前から見ていた。

ただし、追われているのがビトー一行なのかどうかわからなかったため、様子を見ていた。

マロンが岩の森に飛び込んで救援要請をかけたため、ビトー一行と判断して救援に駆け付けた。

ビトーは人語を解する犬を連れていると聞いていたので、判断は早かった。



◇ ◇ ◇ ◇



族長の希望は、ラミア族の古傷の治癒および病の治癒だった。


ラミア族は脅威度A(災害級)の魔物で、アラクネと同等の戦闘力を誇る。

ただし、コスピアジェの脅威度は通常のアラクネと異なるらしい。


ラミア族は長命だ。

そのこと自体は良いのだが、長年生きて何度も戦い、何度も怪我を負うと、そのうち体が元に戻らなくなる。

いわゆる古傷というやつだ。

そして古傷を庇ったまま戦い続けると体が痛む。歪む。

体が歪むと慢性的に痛む上、全力を出せなくなる。


肉食メインで長生きすると病になる。

具体的には痛風。


族長を鑑定すると尻尾の関節がやられ、炎症が激しい。

骨も変形しかけている。

これは相当痛いだろう。



「ラミア族の治癒は初めて手掛けます。どこまでご期待に添えるでしょうか・・・」

「コスピアジェ殿のご推薦じゃ。問題なかろう。 私で試してみよ」



鶴の一声で族長から治癒を手掛けることになった。


族長の家に招かれ、早速治癒開始。

この治癒の出来で私たちの扱いが決まる。

出来が悪ければ黒焼き、姿刺し、丸煮などが予想される。


レイ、マキ、ユミが不安そうに見守る中、横になって体を楽にした族長の体の状態を詳細に鑑定していく。

能力や年齢は怖いから鑑定しない。



古傷は人間の体から蛇の体に変わる境目あたりから下に集中している。

人間の体で言えば腹から腰に掛けてだろうか。

上半身は人の体。下半身は蛇の体。

もし『中半身』という言い方があるならそのあたり。


痛風の症状は尻尾に収集している。



まず傷の無い部分を鑑定する。

健全な皮膚・筋肉・腱、軟骨・骨のイメージを掴む。

次に古傷の鑑定をする。

なにしろ傷が古く、自然治癒した跡も古いし、治癒の形が悪い箇所がある。


正しい組織とどうつなげたら良いのかな・・・と、族長の体の周りをウロウロしながら鑑定していった。


「あら。そこは怪我していないわよ」

「はい。靱帯を再建したときに繋がる部分を確認しておりました・・・ が」

「どうしたの? なにか問題?」

「大変申し上げにくいのですが・・・」

「ええ。何でも言って」

「アレクサンドラ様の・・・ その・・・ 豊かな乳房の・・・ 下を確認させて頂きたいのです」

「あら」


族長は両腕で巨大な乳房を持ち上げてくれた。

レイ、マキ、ユミの目が険しくなった。

族長の爆乳の下に潜り込んで確認を終えて出てくると、治癒に取りかかった。



蛇の体。

膝や股関節のような難しい関節は無いため、スムーズに治癒がはかどった。

とは言え巨体。

古傷の治癒を終えるまでに日が暮れてしまった。


ペネロペが様子を見に来たので途中経過を説明するとともに、レイ、マキ、ユミ、マロンに夕食を提供して下さるようお願いした。


アレクサンドラと私は軽食を頂き、痛風の治療に取りかかった。

こちらの方が痛いので、早く治して欲しいとのご希望だった。


痛風の治療。

痛風の原因(尿酸値がどうしたこうした)は何とも言えないが、痛みを和らげることと、骨の変形を元の形に戻すこと、炎症を鎮めることは可能。


治癒に取りかかる前。

患部(尻尾)を冷やし、心臓より高い位置に固定。

それだけで痛みが和らいだと教えてくれる。


痛風の治癒には一晩掛かった。

尻尾といっても何しろ大きいので、大仕事だった。

治癒が半分以上進んだところでアレクサンドラは痛みから解放され、筋肉の緊張が緩むのがわかった。


よし、いい感じだ。

と思っていたら、アレクサンドラは眠っていた。

寝顔も美しい。

眠れる岩の森の美女。

ただし上半身だけ。


風邪をひいたらいけない。

上半身にコスピアジェの布を掛けて治療継続。



治癒が終わるのと、私が魔力を使い切ったのがほぼ同時だった。

魔力切れからくるとてつもない眠気に襲われ、族長の傍らで討ち死にしたらしい。

自分が寝た記憶が無かった。



◇ ◇ ◇ ◇



翌朝目覚めると、自分がどこにいるのかわからなかった。

しっとりとして柔らかく、暖かく、とにかく素晴らしい感触の布団に顔を埋めて寝ていることに気付いた。

もぞもぞ動いて起きようとすると、まろやかな声が降ってきた。


「もう少し寝ていなさい。朝食の準備中よ」


私はアレクサンドラのしなやかな腕に抱きしめられ、彼女の巨大な双丘に顔を埋めて寝ている事に気付いた。


まさかアレクサンドラの腕を振りほどく訳にはいくまい。

御厚意に甘え、世界一の寝心地を堪能することにした。


アレクサンドラに言わせると、眠っているアレクサンドラにコスピアジェの布を掛けて差し上げたことが、最高のもてなしと最高の敬意の表れであるらしい。

返礼として一族の最高の母性の上で疲れを癒やして下さったのだった。


コスピアジェの布は丁寧にたたんで返してくれた。


コスピアジェの布を受け取りながらアレクサンドラの象徴を見て気付いた。

ひょっとして、いや間違いなく、肩が凝るのではないか?

そう思って尋ねると話が噛み合わない。

どうも肩が凝るという概念が無いらしい。

しかしアレクサンドラの肩を鑑定すると筋肉疲労と出る。

肩どころか首から背中まで筋肉が強張っている。


そこでヒールを掛けながら揉みほぐしたのだが・・・



「うわぁああああ あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」



アレクサンドラが身もだえしながら奇声を上げた。


一瞬族長の家の外が「シン・・・」と静まりかえった後、突然扉をこじあけてラミア達がドヤドヤと入ってきた。


「族長!」

「族長!」

「どうされました!?」

「え・・・ 族長?」


アレクサンドラは法悦の表情で私にもたれ掛かっていたが、闖入者に気付くと、


「無礼者! 誰が入って良いと申した!」


と一喝。

闖入者達はボソボソとお詫びの言葉を述べながらスゴスゴと出て行った。


扉が閉まるとアレクサンドラは、


「後生じゃ。続けてたもれ」


その後、族長の家からは


「ほわぁぁぁぁ・・・」

「ひえぇぇぇぇ・・・」

「ほおぉぉぉぉ・・・」


中で何やってんだか、という声が響き続けた。



◇ ◇ ◇ ◇



後日。


ペネロペ立ち会いの下、レイ、マキ、ユミから厳しい取り調べを受けた。


いいえ、決して不埒な行為など致しておりません。

とんでもありません。実力が隔絶しておりますゆえ無理矢理などありえ・・・

そのような手練手管など、底辺の私めにはとても・・・

はい。前世では赤貧洗うがごとしでありまして・・・

はい。 ・・・はい。それは・・・

西方極楽浄土とはかくのごとしかと・・・

いたっ! ひどいっ! 暴力反対っ!

あつっ! わあっ! 魔法っ! マジだこの人っ!

わぁぁぁーーーー




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