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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
02 メッサー冒険者ギルド編
32/302

032話 報告

日付も変わって大分時間が過ぎてから冒険者ギルドに到着した。

不寝番へ帰還の報告をして、一端全員に処置室へ来て貰った。

そしてコスピアジェから貰った宝物をフェリックスとレイとユミにお裾分けした。

マキはコスピアジェに会う前に出た品を装備しているから、今回は無し。



「え・・ 悪いわ」

「これはビトー君がコスピアジェさんを治療したお礼でしょ」



私が独り占めしても売るだけだ。

どこかの金持ちがコレクションにして喜ぶだけだ。

それなら彼女らに装備してもらった方が良い。

優秀な装備品は使ってこそ意味があるし、何より生存率が上がる。

それにマキと同じレベルの装備にしないと釣り合いが取れない。


レイは水属性の斥候なので、【氷雪剣】【氷雪盾】を装備して貰った。

レイも魔法を使えるようになった。


ユミは火属性の魔法使いなので、【フレイムロッド】【サラマンデルローブ】を装備して貰った。



「フェリックスは人間の作った武器なんか使わないと思うけど、これ、道具として使わないかな?」


そういって、フェリックスに【ダガーオブジルフェ】を差し出した。


「うん。ありがとう。これコスピアジェから貰った装備の中で一番価値がある。大切にする」


攻撃のためには使わないけど、逃げるときに使うそうだ。

曰く、


「ブラックサーペントに不意打ちをされた時は、凄く使える」


だそうです。

それ以外の装備。


【藍玉の首飾り】

【ダークレザー】

【タクト】

【ロングソード・アクセル】×10本

【ショートソード・アクセル】×5本

【ロングボウ・アクセル】×4張

【トレントの樹皮】3m×3m(4枚)

【ハーピーの羽根】150本

【レッドサーペントの皮】8m×1m(3枚)


は私が頂くことにした。


【ダークレザー】と【タクト】はすぐに装備した。


【トレントの樹皮】【ハーピーの羽根】、レッドサーペントの皮】は、元の世界で読んだ小説の影響でなんとなく使い方がわかる気がした。


【ロングソード・アクセル】【ショートソード・アクセル】【ロングボウ・アクセル】はギルド長と師匠へ見せて相談しようと思う。



◇ ◇ ◇ ◇



朝のクエスト受注ラッシュが一段落し、ギルド内が落ち着きを取り戻しはじめた頃。

ギルド長室に、ギルド長、師匠、フェリックス、レイ、マキ、ユミ、マロン、私が集まった。


ギルド長に報告。


「報告がございます。本日メッサー・ダンジョン1階層目の未踏破エリア3箇所を、全て踏破致しました」

「ご苦労だった。詳しい話を聞こう」


ギルド長室のでかい机に地図を広げ、新たに書き足したエリアを指差しながら説明した。


「ゴブリンエリアを再確認しました。

新たなルートは発生しておりません。

新たな部屋も発生しておりません。

ホブゴブリンとゴブリンのパーティが湧く地点も変わっておりません」


「お前らはフェリックス殿の手を借りずにゴブリンのパーティを倒せたか?」


「はい。フェリックスには見ていて貰い、全員が前衛と後衛を経験し、全員がホブゴブリンを討伐しました」


「ふむ。E級になったと見て良いかな。フェリックス殿?」

「マロンも含めて全員E級冒険者の実力を持った」

「そうか。ありがとう」



「アントエリアも前回の報告から変貌はありません。ルート、部屋ともに追加はありません。キラーアントが湧く地点も変わりありません」



「40年前にスタンピードが起きたエリアはこのような広がりがありました。

スタンピードが始まった横穴がここです。

突き当たりがここ。

途中1箇所でキラーアントが3匹出ました。この地点です」


「ふむ。それだけか」

「突き当たりに部屋がありました」

「なにっ! どのようになっていた。まさか湧き部屋か!」

「いいえ・・・」


フェリックスをチラッと見た。

フェリックスが頷いたので話を続けた。


「部屋の中に魔物がいました」

「なに。何がいた? 何匹いた?」

「一匹です。種類は・・・」

「なんだ。早く言え」

「アラクネです」

「・・・」

「・・・」



ギルド長と師匠が黙ってしまった。

しばしギルド長室を沈黙が支配した。


ややあって師匠が口を開いた。


「見たのか?」

「はい。しかと見ました。ここにいる全員が見ました」

「それで? どうして生きて帰ってこれた?」

「はい。コスピアジェ殿と友好関係を結べました」

「コスピアジェだと?」

「はい。アラクネのコスピアジェ殿です」

「・・・」

「・・・銘入りか・・・」



再びギルド長室を沈黙が支配した。

今度の沈黙は長かった。

普通魔物に名前は付かない。アラクネはアラクネだ。

銘入りとはアラクネの中でも特別な個体ということらしい。

脅威度はワンランク上と考えて良いとのこと。


やがて師匠が口を開いた。


「ギルド長。メッサーの街が壊滅していませんから、本当に友好関係を結べたのだと考えてよろしいでしょう」

「ああ・・・ だがな、これから我らにどんな選択肢があるのだ・・・ とりあえず一度お会いしないといかん」



フェリックスが口を挟んだ。


「ギルド長のご心配はもっとも。でもご心配ご無用」

「・・・どういうことかな?」

「もうコスピアジェはダンジョンを去ってる」

「なにっ! 街にくるのか!?」

「たぶん元の住処に戻る」

「元の住処? それはどこだ」

「コスピアジェの住処はわからない。巧妙に隠されてる。でもどの住処も人間の生活圏と重なってない」

「そうなのか・・・ どうしてわかるのだ?」

「本人に聞いた」


それから最後の未踏破エリアで起きたことを順番に報告していった。


フェリックスとコスピアジェが知り合いであったこと。

そのおかげで最初から友好的だったこと。

コスピアジェは傷を負い、傷を癒やすために40年前のスタンピード収束後のダンジョン内に潜んでいたこと。

私がコスピアジェの傷を治癒したこと。

傷が癒えたコスピアジェは元の生活圏に戻っていったこと。



「お前たちのレベルアップをフェリックス殿に依頼して正解だったということか」

「フェリックス殿、このたびの一件、深く感謝する。報酬を支払いたいのだが、フェリックス殿にとって価値ある物がどのような物なのかわかりかねる。教えていただけまいか」

「お心遣いありがとう。ビトーからこれ貰った。充分」


そう言ってフェリックスはおなかのアイテムボックスから小刀を出して見せた。


「「 【ダガーオブジルフェ】か!! 」」


ギルド長と師匠の声が重なった。

ギルド長と師匠の目がギラギラしている。

あの感じでは相当良い物なのね。


ビトーの奴、あんな凄い物を手に入れていたのか。

いやコスピアジェ殿から貰ったのか。

そうか治癒魔法のお礼か。

コスピアジェ殿は他に何か持っていたのか。

ダンジョン内に打ち捨てられていないか。

今から行けばまだあるか・・・


ギルド長と師匠の心の声が聞こえるようだ。

ここは私も含め、レイ、マキ、ユミがお世話になったお礼として、お土産を渡しておこう。


私は背負い袋から3種の品を取り出した。



【ロングソード・アクセル】×10振り

無属性の長剣

通常の長剣の2倍の攻撃力(+20)を持ちながら、重さは変わらない



【ショートソード・アクセル】×5振り

無属性の短剣

通常の短剣の2倍の攻撃力(+8)を持ちながら、重さは変わらない



【ロングボウ・アクセル】×4張り

無属性の弓

強弩並の破壊力(+15)を持ちながら、重さは変わらない



「コスピアジェ殿から譲り受けた逸品です。お二人とも装備されてはいかがでしょう。残った物は王宮に献上を」

「そうか・・・ すまんな。 ・・・しかし凄い剣だな」

「ギルド長、この弓も凄いですよ。強弩並のパワーを持っていながら・・・軽い!」


ギルド長と師匠は【ロングソード・アクセル】と【ショートソード・アクセル】を一振りずつ受け取った。


【ショートソード・アクセル】はレイ、マキ、私も装備した。



【ロングソード・アクセル】×8振り

【ロングボウ・アクセル】×4張り


この2種は、ダンジョン内にコスピアジェが潜んでいたこと、友好関係を結んでダンジョンから去ったことを王家へ報告する際の、コスピアジェからの献上品として扱うことにした。



さっそくギルド長は王との面会の日程調整を始めた。




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