031話 クエスト完遂
「アラクネが光魔法で癒やされるなんて前代未聞じゃないかしら。どんなお礼をすれば報いることが出来るのか迷うわ」
「どうかお気遣い無く・・・ 私も大変勉強になりました。私事ながら治療のスキルも上がったようです」
コスピアジェはその場で「タタタタタタタッ」と軽やかに足を踏みならしてみせた。
そして急な方向転換、ジャンプ、ダッシュを試していた。
「ふふっ。凄いわ。こんなに体が軽いなんて。100歳も若返ったみたいよ」
「ええっ! 100歳・・・」
「そうよ。これは是非御礼をしないとね。う~ん、でも私は宝珠を持っていないのよ。そうね・・・昔の冒険者が残していった品があるわ。よかったら差し上げるわ」
40年前のスタンピード時に多くの冒険者と魔物が死に、大量に残された装備品や死体がダンジョンに吸収された。
そしてダンジョンが消化しきれずに、ダンジョン内に吐き出された物だという。
コスピアジェがダンジョンに入ったのはスタンピードの収束以降だが、冒険者が来ないエリアに潜り込み、古傷を癒やしていたそうだ。
時折リハビリを兼ねてダンジョン内を探索し、弱い魔物を倒して食料とし、面白半分に宝箱を開けていたとのこと。
「つまらない物は捨てたわ。面白そうな物だけ取っておいたの」
そう言って祭壇の裏に案内してくれた。
さすがにコスピアジェが保管しておいた物はうなるような逸品揃いだった。
【フレイムロッド】
サラマンダーの爪で作られた杖
火属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
火球・火矢・火槍を発動できる
【サラマンデルローブ】
サラマンダーの皮で作られたローブ
火属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
防御力はフルプレートメイルと同じ(+20)
自動修復機能あり
【氷雪剣】
水属性の短剣
水属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
氷の刀身で刀身の長さを変えられる
剣先から氷弾を撃つことができる
剣そのものの攻撃力は、普通のショートソードと同じ
【氷雪盾】
氷で強化された小盾
水属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
防御力は大盾と同じ(+10)
氷で盾の大きさを変えられる
自動修復機能あり
【藍玉の首飾り】
水属性の装飾品
水属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
水魔法の効果UP、水魔法の魔力消費半減
【ダガーオブジルフェ】
風の精霊の加護を宿したダガー
風属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
装備者の身に風を纏い、敵の攻撃を逸らす
装備者の身に風を纏い、俊敏性が向上する
風魔法の効果UP、風魔法の魔力消費半減
ダガーそのものの攻撃力は、普通のダガーと同じ
【ダークレザー】
闇属性の革鎧
光または闇属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
防御力はプレートメイルと同じ(+15)
周囲の景色に溶け込み、気配を消せる
自動修復機能あり
【タクト】
指揮棒
光属性を持つ者が装備すると力を引き出せる
先端からあらゆる種類の光を発する
光の強さ、色、波長、直進性、方向を自在に操れる
【ロングソード・アクセル】×10振り
無属性の長剣
通常の長剣の2倍の攻撃力(+20)を持ちながら、重さは変わらない
【ショートソード・アクセル】×5振り
無属性の短剣
通常の短剣の2倍の攻撃力(+8)を持ちながら、重さは変わらない
【ロングボウ・アクセル】×4張り
無属性の弓
強弩並の破壊力(+15)を持ちながら、重さは変わらない
【トレントの樹皮】3m×3m(14枚)
使い方は使用者次第
【ハーピーの羽根】×150本
使い方は使用者次第
【レッドサーペントの皮】8m×1m(3枚)
使い方は使用者次第
「私は使わないし、ここに残していっても仕方ないから全部差し上げるわ。みんな持って行って」
「ありがとうございます。いずれも逸品揃い。ありがたく頂戴致します。
数の多いアイテムがありますが、王に献上してもよろしいでしょうか」
「あなたのものよ。あなたの好きにして」
「ありがとうございます」
有り難く背負い袋に収納した。
「それからこれも持って行って」
コスピアジェはそう言うと、2m四方もある1枚の大きな布を取り出した。
不思議な繊維、不思議な編み方で織られており、見る角度によって万華鏡のように色が変わる布だった。
心当たりがあった。
「ひょっとしてこれはコスピアジェ様の織られた布・・・」
「ええ。これを持っていれば私の縁者ってわかるわ。知性ある魔物の間の身分証のようなものね」
押し頂いた。
「何物にも代え難く存じます。最高の褒美を頂戴致します」
「ありがとう。 ところであなたのこと、誰かに話してもいいの?」
「コスピアジェ様が信を置かれる方ならどなたにでも」
「そう。ありがとうね」
最後にコスピアジェを鑑定させてもらった。
古傷が癒えて、すっかり『健康』になっていた。
名前 :コスピアジェ
種族 :アラクネ
年齢 :323
状態 :健康
職業 :-
HP :453
MP :130
STR:280
INT:115
AGI:355
LUK:中
魔法 :土魔法9
特技 :魔眼、糸術、機織り
凄いステータスだ。
これがAクラスなんだと理解した。
それからフェリックスとコスピアジェの間で長い別れの挨拶を交わした。
異種族間でも通じる定型の挨拶があるようだ。
フェリックス以外は全員コスピアジェと抱擁し、別れを告げ、部屋を退出した。
◇ ◇ ◇ ◇
帰り道。
ダンジョン内を歩きながらフェリックスに聞いた。
「コスピアジェ様はいつまでメッサーにいるかな?」
「たぶん今夜いなくなる」
「ええっ!」
「そうなの?」
「本当はもっといる予定だった」
「?」
「ビトーがコスピアジェを治して、僕が干し肉をあげたから」
「そうなんだ」
「コスピアジェの布」
「うん」
「一生大切にする」
「うん」
「誰かに譲っちゃ駄目」
「うん」
「譲ると天災が起きる」
「コスピアジェ様の怒りを買うんだね」
「うん」
フェリックスに背負い袋の中に入って貰った。
ダンジョンの外に出ると深夜だった。
日付が変わっていた。
冒険者ギルドのメッサーダンジョン出張所に寄り、出ダンジョンの記録を残した。
「ずいぶん遅くまで頑張られましたね」
「はい。ちょっと頑張りすぎて時間感覚が無くなりました」
「気をつけてくださいね。特にお食事はきちんと取ってくださいね」
「はい。済みません」
夜道を冒険者ギルドまで帰った。




