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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
22 メルヴィル立志編
242/302

242話 メルヴィル1年目(春・来客2)


マーラー商会員、マホームズ達の合流の後、大々的に建物を作り始めた。

流石にジークフリードだけでは無理なので、アンナに土魔法使いの商会員を回して貰った。


第四商業エリア(食堂、酒場)

宿泊エリア  (商人向けホテル、冒険者向け宿屋)

娯楽エリア  (レストラン、バー、娼館)



これを優先して作った。



娼館は設計だけで無く、建設も費用もマホームズに任せっきりにしたところ、凝った作りの建屋が出来上がった。

水回りはシャワーヘッド完備が基本で、温水が出るようになっていた。

さらには遊ぶだけでなく、宿泊と食事の提供もデフォルトだという。

昔の吉原みたいなものか。

その分、客単価は跳ね上がる。


食事は誰が作るのか謎だったが、ウチに頼みにきた。

仕出しをして欲しい。

まあ、ウチも本格稼働前なので余力はある。

稼働率を上げるには丁度良いか。



すると不思議なもので、すぐに客が付いた。


なんで?


姫自ら営業をしていた。


上得意の中のさらに上得意。

ほんの上澄みの客に声を掛けたらしい。

みなさん立場があるらしく、顔を隠して来訪していた。



◇ ◇ ◇ ◇



ある日の夕方。

使い魔が客の来訪を告げた。


来たのは古森の3巨頭。

アイシャ、エリス、アリアドネ。


川渡り隊の隊長がなぜ?

ああ・・ 

ハーフォード川を渡ったのね。


早速下にも置かぬおもてなし。

私はもちろんのこと、エマを始め我が子達によるヒールを掛けながら全身マッサージのおもてなし。

王侯貴族でも味わえない超贅沢マッサージ。

お三方とも大変に満足されていた。


リックのお目見え。

リックはアイシャの前に連れてこられた。眠っているけど。

アイシャは眠っているリックを胸に抱き、魔眼で鑑定。

やがて祝福の言葉を頂戴し、リックを退出させた。



「あなたの子供達はみな素性がよいですね。アルマの痕跡が微かに見られますが悪い影響を受けておりません。すくすくと育っています」


「ありがとう存じます」



ウチの館の賓客第二号として広間を使った正式な晩餐に招待し、シークレットゲストルーム宿泊第二号になって頂いた。



翌日。

アイシャの神託の時間。



「私に何を聞きたいのですか?」


「私が最も注意しなければならないことをお教え下さい」


「北よ」


「北と言うことはイルアン?」


「ではありません」


「南のダンジョンは気にしなくても良い?」


「今さらあんなの気になりますか?」


「う~ん」


「駆け出しの冒険者の腕を磨く場にしなさい。適度に突ついてやらないと、あのダンジョンは自然消滅するわよ」


「え~」


「イルアンの対価としてハーフォード公爵に下賜されるものは、黒森からメルヴィルの間の土地になるでしょう」


「対価と言う割には利用価値のない荒野が広がっていますが?」


「そうね。価値があるかどうかは私は判断しないけど。誰が管理することになると思いますか?」


「まさか私ですか?」


「貴方以外に誰がいるの?」


「・・・」


「アイシャ様の言われる『北』とはこの土地のことですね。ここに何かがある。毒にも薬にもなる何かがある、と?」


「ふふふ」



それから具体的に何があるのか聞き出そうとしたが、答えてくれなかった。



お土産に「ハーフォードの月」と「レントの誉れ」を6本ずつ持たせると、ほくほくしながらアイシャ達は帰って行った。



◇ ◇ ◇ ◇



すぐに会議。

北に何かがある。


ということでウォルフガング、ルーシー、マロンの子供達ノワとネロを偵察に出した。


途中、ルーシー、マロンの子供達はキャスに挨拶してから探索に向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



それからほどなく、正式にイルアンが王領となったという知らせがきた。


ほぼ同時にハーフォード公爵から呼び出しを受けた。

私とソフィーでハーフォードへ向かう。


公爵、騎士団長と面会。


言い難そうにしていたが、こちらからは余計なことは言わずにいた。

やがてやっと「イルアンを王に譲渡した」とだけ言った。



「左様でございますか」


「・・・」


「・・・」


「異論はないのか?」


「閣下がお決めになったことです。少し懐かしさを感じないわけではありませぬが、身共が口を差し挟むことでは御座いますまい」


「そうか・・・」



私が特に反応を示さなかったため、公爵は急に気が楽になったように見えた。



「イルアンを譲渡した対価として、黒森からメルヴィルまでの広大な土地を得た」


「・・・」


「これをスティールズ子爵の管理下とする」


「はっ」



下手なことを聞いて自分の手を狭めることはするまい。


それ以上の話が無いことを確認し、一言御礼を述べて退出した。



「閣下がお任せ下さった地。必ずや輝かせて御覧に入れたいと存じます」



それだけ述べて即座にメルヴィルへ撤収した。


役人達は「領都ハーフォードにおける私の館の選定」の打ち合わせをしたかった様だったが、「どーも、どーも」と煙に巻いて撤収した。


領都に館を持つ必要性はない。

貰ったら貰ったで維持費が馬鹿にならない。


江戸時代の参勤交代じゃあるまいし。




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