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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
20 タイレルダンジョン編
227/301

227話 新ダンジョン探索8


ボス部屋の中央に巨大な赤いトカゲがいる。

全長5mくらい。

確かにクリムゾンリザードよりも二回りはでかい。



種族:エンシェントリザード

年齢:12歳

魔法:無し

特殊能力:全身毒

脅威度:A-



12歳で長寿なのか?

よくわからない。


作戦は事前に決めていた。

3人同時にボス部屋に入ると、すぐにソフィーがエンシェントリザードを氷のドームで覆った。


エンシェントリザードがドームに激突する振動が伝わってくる。

ドームにヒビが入るとすぐにカトリーヌがヒビを埋める。

ソフィーはドームの強度を保ちながらドーム内を冷やし続ける。




ボス部屋全体が冷えてきた。

ドーム内は急激に温度が下がり、氷の厚さが増しているらしく、エンシェントリザードの暴れる音が聞こえなくなった。


死んだかな?


私の鑑定では死んでいないが、何をしようとしているのかがわからない。


エミリオ先生に測定して貰う。



「ふむ。動きは殆ど無いがHPはまだ2/3ほどある。冬眠状態じゃ。ここで止めると奴は復活するぞ。このまま冷やし続けるのじゃ」



うん。

先生はそう言うが、冬眠に入られると冷やすだけではなかなか死なないのではないかな? 体の芯まで凍らせれば死ぬのだろうが、凍るかな?



「ソフィー、奴の体が凍っていく手応えはある?」


「いや。ない」


「では・・・」



デ・ヒールを掛け始めた。


奴から生体エネルギーを奪う。

どしどし奪う。

自分でも不思議なくらい簡単に奴のエネルギーを奪っていく。


おそらく冬眠状態が鍵なのだろう。

抵抗できない相手からエネルギーを奪うのはなんとたやすいことか。

なんだかタチの悪いジャイアンになったような気分。

あっという間にエンシェントリザードのHPを奪い切った。



鑑定。

エンシェントリザード。死亡。

エンシェントリザードが凍り始めている。



念のためエミリオ先生にも測定して貰い、HPがゼロであることを確認した。




ソフィーが氷のドームを消すとエンシェントリザードが現れた。

全身に霜が降りてうっすらと白くなっている。



「・・・」


「・・・」



ソフィーと私は黙ってエンシェントリザードを見ている。


何か変。


何が変なのだろう?

クリムゾンリザードを討伐したときってどうだったろう?

あのときは全身に厚くビッシリと霜が付いて真っ白になっていた。


このエンシェントリザードは・・・



「ソフィー!!」


「ッッッ!!」



ソフィーは前面に氷壁を展開した。

その氷壁にベッタリと奴の体液が付いている!

危なかった!


ソフィーはそのまま氷壁を半球状に展開しようとしているが、エンシェントリザードが逃れようとして抵抗している。



「カトリーヌッ!!」


「はいっ!」



ソフィーが叫ぶと同時にカトリーヌがエンシェントリザードの背後の空中から氷槍を3連射した。



ドスッ! ドスッ! ドスッ!



カトリーヌの氷槍はエンシェントリザードの頭、肩、腰を貫いた。

肩から入った氷槍が心臓を傷つけたらしく、盛大に血が吹き上がった。



「きゃああああああ!!」


「あぶねえ!」



何事も無かったかのようにソフィーが氷壁を拡大し、我々を守っていた。



ピリッとしない戦いだったが、どうやら階層ボスは息絶えたようだ。

エミリオ先生が鑑定し、確かに死んでいることを確認した。



腰が抜けて座り込んでしまったカトリーヌにエミリオ先生が声を掛けた。



「しっかりせい。お主はエンシェントリザードを仕留めたのじゃ。たいした偉業じゃぞ」


「それはソフィー様が・・・」


「わかっておる。じゃが力の無い者では脅威度A-の魔物に傷一つ付けられぬ。おぬしは心臓を貫いて見せたのじゃ。誇って良い」


「はい・・・」



「エンシェントリザードは瀕死の状態で生を繋ぐ。どうやらそんな固有スキルをもっているようじゃな」




全員をボス部屋に招き入れた。

まず騎士団と炎帝の火魔法使い達に、床に飛び散ったエンシェントリザードの血液、体液を焼いて貰った。足の踏み場もなかったので。

そのくらいの魔力は残っているだろう。



その後、ウォルフガングにエンシェントリザードを焼いて貰った。



「まったく。人使いの荒い奴め」



ウォルフガングは文句を言いながら頑張って焼いてくれた。


ウォルフガングは剣先で魔石を掻き出して、こちらに転がしてきた。

入念に魔石を洗って手に取って見てみる。



種類:エンシェントリザードの魔石

属性:光

魔法:治癒

特殊能力:魔力を込めるとヒール、キュア、ディスペル、エリアヒールを使える



うん。

ベノムパイソンの魔石の上位互換だ。

特にエリアヒールというのが凄い。

一定の範囲内にいる複数メンバーを同時に回復させることができる。


ただし・・・

エリアヒールの説明を読むと、術者はそれだけの魔力をいっぺんに持って行かれる。

エリアヒールを使う者は大量の魔力を持つか、魔力を温存しておかなければならない。

使いどころの難しい魔法だ。



◇ ◇ ◇ ◇



さて。

このボス部屋に宝箱はあるだろうか。

床に飛び散った毒が焼かれて消えるのを待ってから探す。


ヴェロニカ、この部屋は広いので一緒に探してくれ・・・ 魔力切れでダウンね。

カトリーヌもダウン、と。

ルーシー、マロン、一緒に頼む。



探索の結果、2個見つかった。

罠は無い。


1つ目を開ける。

出て来たのは



【超級ポーション】

 治癒魔法ディスペル、キュア、ヒールに相当する最上級のポーション



うん。

たしかにこのダンジョンの探索ではこんなポーションが欲しいよね。

マーラー商会の封印は貼ってないね?


ソフィーが言うには、ダンジョン産のポーションは効能が高いらしい。

値段もワンランク上だそうだ。




2つ目。

出て来たのは深紅のマントらしき物体だった。



【エンシェントリザードの皮】

 あらゆる毒攻撃を無効にする



毒トカゲや毒蛇に噛まれても平気って奴らしい。

これもこのダンジョンで欲しい奴だ。

できればダンジョンの入口をくぐる前に頂けると助かるのだが。



二つとも私の背負い袋に入れ、この探索の最終目的に取りかかることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



岩でできた祭壇の上にダンジョンコアが鎮座していた。


ダンジョンコア。

見るのは2度目。


直径50cmほど。

コアから淡い赤い光が脈打ちながら溢れ出ているように見える。

魔力を帯びた光だ。

これがダンジョンの心臓であり、頭脳。


鑑定する。



種族:ダンジョンコア

年齢:2歳

魔法:-

特殊能力:ダンジョンを形成する

脅威度:-



ダンジョンコアを祭壇から降ろし、火魔法で軽く炙った。

5秒ほど炙るとダンジョンコアから強い光が出て、魔力の脈動が止まった。

改めて鑑定する。



種族:宝珠

年齢:-

魔法:-

特殊能力:生命

脅威度:-



騎士団、炎帝、そしてアルベルト先生とエミリオ先生が食い入るように見つめる中、宝珠を私の背負い袋に仕舞った。



「アルベルト先生。ダンジョンは止まりましたか?」


「おお・・・ そうだったな」



ダンジョンコアに見とれて忘れていたらしい。

慌てて魔道具をいじくっていた。



「ダンジョンから魔力が消えたことを確認した。

タイレルダンジョンに付随して発生した新ダンジョンを踏破し、コアを止めたことをここに宣言する」



ウォーカーはホッと息をついた。


炎帝はへなへなと崩れ落ちた。


騎士団は喜びを爆発させた。




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