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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
19 王国高等学院編(3年生)
202/302

202話 面会


古森から帰った翌日。

オーウェンへ面会申し入れた。

すぐに会ってくれた。



「そなた、何でこんな所におる?」



事情を説明する。



「なに、女神アスピレンナが死んだだと? それは素晴らしいニュースだ!! すぐに王都へ報告を・・・ ちと待て・・・ 女神は死ぬのか?」


「本物の神では無かった、ということでございましょう」


「本物では無い? 女神に偽物がいるのか?」


「はい。女神アスピレンナは実は『魔女アスタロッテ』でございました」


「魔女・・・」


「はい」


「ちょっと待て。魔女は災害級の魔物だろう? 誰が倒したのだ?」


「魔女です」


「まじょお? 魔女が魔女を?」


「はい。新たに生まれた『魔女アルマ様』が偽物女神の『魔女アスタロッテ』を討ち取ったのでございます。但し証拠はございません。私の報告のみでございます」


「なぜそなたはそれを知っておる」


「そのことでございます」



それからライムストーン公爵領を舞台に魔女の決闘が行われたことを説明した。



「よくわからない点がある。なぜ魔女同士が決闘するのだ? 協力関係は結ばないのか?」


「魔女には『掟』があるらしゅうございます。魔女は一世代に一人。二人目が表れると殺したくてたまらなくなるそうです」


「う~ん。それで今はアルマ様が魔女になった、と」


「その通りです」


「アルマ様は女神にはならないのか?」


「なりません」


「本当か? どうしてわかる?」


「アルマ様にとってミリトス教会は関心の外にありますので」


「それでアルマ様は今どこに?」


「わかりません。領外へ出たと思われます」




「ところでお主の抱いている美しい女の子はどなた様だ?」


「娘のエマです」


「エマと申します。よろしくお願い致します」


「おお・・・随分としっかりとされたお嬢様だ。私はオーウェン・バリオスという。ここライムストーンを預かっておる」


「公爵様でございますね」


「その通りだ。本当にしっかりとされたお嬢様だ。こちらこそよろしく頼む」



それから新たなラミアの里が成立したことを報告した。



「ところでオーウェン様。ライムストーン公爵領に新たなラミアの里が生まれました」


「何だと!!」


「ライムストーン公爵領が豊かな証かと存じます」


「ううむ・・・ そうなのか?」


「ラミア達も住みにくい場所に新たな里を作りたくは無いでしょう」


「そうか・・・ 喜ばしいことなのか」


「ラミア達が住み着いて下されば領内の治安維持に寄与されることを期待できます。喜ばしいことと存じます」


「そうなのか?」


「はい。もし厄介な魔物が現れて暴れても、ラミア達が目障りと感じて闇に葬ってしまいます」


「それは心強いな・・・」



それからカネルの森の位置を教え、一度ご挨拶に伺うことをお勧めします、と言ったところでオーウェンが私の服の裾を掴んで離さなくなった。


一緒にカネルの森に挨拶をすることになった。



ちなみにだが、オーウェンはコナハラのダンジョンの位置は掴んでいた。

コナハラのダンジョンについて実情を教えた。

終わり掛けたダンジョンだが、万一の時はカネルの森が防波堤になる。

そう教えると大層喜ばれた。



◇ ◇ ◇ ◇



新学期(3年生)の初日には間に合わないことが決定的になったので、オーウェンにお願いして、遅れる旨ソフィーとマキに通信文(伝書鳥)を送ってもらった。



「ラミアの呼び出しがあったのでは仕方ないが・・・ お主が一緒にいてくれるものとばかり思っておった」


「何かございましたか?」


「今年から息子が学院に通い始めるのだ。オルタンス様とお主とマキが在校しているので安心していたのだ」


「オルタンスお嬢様がおられれば大丈夫と思いますが」


「ウチのは男なのでな。何かと目が届かぬところがあるだろう」


「寮は?」


「ハーフォード公爵にお願いした」


「お名前は?」


「イーサンという」


「剣の腕は確かで?」


「素人だ」


「魔法は?」


「風の素養はあるが・・・」


「剣や魔法以外で得意な物は何でしょう?」


「商売について力を入れて勉強させた。わたしも一部実務を任せておった」



公爵の後継者としては有望株らしい。



◇ ◇ ◇ ◇



オーウェンがカネルの森へ挨拶に行った。

私とエマとユミとレイが付き添った。


オーウェンのラミアの里訪問は3度目なので全く問題無かった。

というか堂に入っていた。

上級貴族かくあるべし、というほどの挨拶だった。


王族、貴族、平民を問わず、ラミアに対しあそこまで胸襟を開いた立派な挨拶が出来るのだから私が付き添う必要は無いのでは? と水を向けたら、無言で服の裾を掴む。

ユミとレイも両腕を抱え込んで離さない。



「ビトー君とは一度じっくりと話す必要がありそうね」



ユミが耳元でそうつぶやくと、オーウェンが無言で頷いていた。




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