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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
17 オリオル辺境伯領編
187/269

187話 熊狩りならぬ・・・2


夜。


私とマキがトーチカの中にいる。


このトーチカの近くにホーンドラビットの死体が埋められていたのだ。

レッドベアはここに戻ってくる可能性が高い。

トーチカ頼みで急遽マキ発案の作戦を実行に移したのだった。


私とマキが潜むトーチカから少し離れたトーチカの中にソフィーとエマがいる。

アルは好き勝手に上空を飛翔してよし、とフリーにしている。


私とエマは各々のトーチカの中で索敵をしている。

エマの索敵はソフィーに共有できる。

だが私の索敵はマキに共有できなかった。



「私のことを愛していないのでしょう?」


「そんなことはないです。共に異世界に飛ばされた身。共に神と交流した身。その女性が妻になってくれるって言って下さってどれほど嬉しかったことか」


「ならなんで共有出来ないの?」


「う~ん」


「私に子供を産ませていないからでしょ?」


「そういう非科学的な理由付けには同意致しかねます」


「じゃあ何でよ?」


「わかりません」


「じゃあ実験よ。ほら、脱いで」


「こんな時に何を・・・ あっ・・・ どこを掴んで・・・」


「いいからさっさと脱ぎなさい。男でしょ?」



男かどうかは関係ないと思うのですが・・・

結局擦った揉んだの末、あぐらをかいた私の上に座るマキさん。



「う・・ん 具合がいいわね。ほら索敵、索敵」


「マキさん、暴れないで」


「いいから索敵しなさいって」


「・・・」


「ちょっと! 鷲掴みにするんじゃ無いわよ」


「・・・」


「さきっちょ! 集中出来なくなるからやめないっ!」


「・・・」


「揉むなーーーー!」



マキが暴れないように鷲掴みにしながら何とか索敵。

索敵。

索敵・・・



「あら・・・ 見えるわ・・・」


「・・・」


「みえる・・ いい感じ・・・ って、ちょっと何してるのよ。 あ・・・ やめるんじゃ無いわよ」



無事に索敵が共有でき、思いも遂げたので終わろうとしたら、マキさんがどいてくれない。



「違う向きでどうなるかテストよ!」



今度は抱っこされるように座ってくるマキさん。

完全に楽しんでいる。

それからしばらくテストが続き、なんかもうレッドベアなんてどうでもいいや、と思い始めたとき、索敵の端っこに引っ掛かる物が出て来た。



「・・・」


「・・・」



こっちに近付いてくる。



「出たね」


「出たわね。じゃあね・・・」



マキの破天荒な計画を実施することになった。



レッドベアは大変に強い。

強いがそれ以上に賢い魔物だ。

好奇心が旺盛で学習能力が高い。

個体によって持っている知識や癖が全く異なるといわれる。


そのレッドベアをトーチカに引き寄せる。

中の人間が槍を構えたり、魔法を撃つ準備をしていたら、きっと近付かない。

中の人間が怯えていたらやっぱり警戒する。

いったい中の人間は何をしているんだ? と好奇心が警戒心を上回る必要がある。


ということで、引き続き索敵の共有の練習を続ける。

すぐそこにレッドベアがいるとわかっているのに、トーチカの壁一枚で守られているというだけで子作りに専念できるのだから、私もマキも度しがたい。

一心不乱にマキを愛した。


気付いたらトーチカの銃眼からこっちを覗いているレッドベアらしきものがいる。

鑑定。



種族:レッドベア

年齢:8

魔法:-

特殊能力:-

脅威度:Bクラス



「マキ・・・ 鑑定・・・ 見えてる?」


「見えてるわ。だから続けて・・・」



それからレッドベアに見せつけるように「これでもかっ!」と励んだ。


気付いたらレッドベアがトーチカの銃眼に爪を掛け、鼻先を突っ込もうとして暴れていた。鼻息が荒い。

何とか参戦しようとしているらしい。



「もうっ! 無粋なんだから。 これあげるから静かになさい」



そういってマキが気だるげに何かを銃眼の隙間から突き出した。


レッドベアは引ったくるように奪っていった。



「続けるわよっ! 今日こそ仕込むわよっ!」



なにやら遠くの方で暴れているような音がしたが、気にせず励んだ。

やがて2人とも疲れ果てて眠ってしまった。



◇ ◇ ◇ ◇



朝。

トントンとトーチカを叩く音で目が覚めた。



「ビトー。起きろ。済んだぞ」



ソフィーの声だった。

マキと2人、モゾモゾと起きてトーチカの外に出た。



「昨夜は随分とお楽しみだったようで」



エマを抱えながらしらけた目でこっちを見るソフィー。



「ソフィーさんはエマちゃんがいるからいいの。これからは私のターンよ」


「ところで『済んだ』と言ってましたが?」


「ああ。向こうにレッドベアの死体が転がっている」



レッドベアの所へ行く。

周囲にかなり暴れた痕がある。

レッドベアの死体を見ると歯を食いしばり、口元から泡を吹いていた。



「これを見ると毒で死んだようだ。どうやって毒を盛った?」


「焦らしたのよ」


「焦らした?」


「ええ。芋をふかして作ったまんじゅうの中にレッドサーペントの毒袋と鬼菱をたっぷり仕込んでおいたの。熊は雑食だからお芋が好きだと思ったのよ」


「うむ」


「熊は私達を覗くのに夢中で何とか中に入ってこようとしていたから、十分に焦らしてからまんじゅうを与えたの」


「そうだったのか。よく考えたな」




レッドベア。

改めて近付いて見る。

デカイ!

ざっと3m、600kgといったところか。

毛皮は臙脂色の毛並みが美しく、高値で取り引きされそうだ。

背負い袋にしまい込む。


この近辺はコイツの縄張りだと言っていたが、昨夜あれだけ騒いだので、他のレッドベアを招き寄せることはなかったかな?


アルが答えてくれた。

昨夜一晩中索敵をし続けたが、レッドベアもブラックベアもウルフの群れも現れなかった。

昨夜の咆哮は怒りに満ちていたので、しばらくは誰も近寄らないだろうとのこと。



「では帰ろう」



南ノ村に立ち寄って「レッドベアはいなくなりました。もう大丈夫」とだけ伝え、意気揚々と帰途についた。




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