174話 (幕間)暗躍1
絶対にこのままで終わらせない。
最初は適当に脅して言いなりにさせれば良いと思っていた。
だが私が手を出す前に他の派閥が手を出し、ことごとく失敗に終わった。
最後の手段は使うつもりは無かった。
もともと私の企画立案と実行の勉強の意味合いが強かった。
その分、綿密に準備ができた。
それを使った。
成功は間違いなかった。
闘技場にオークキングが姿を現したときの気持ちは少し複雑だった。
本当にこんなことをしていいのか? と。
だが父上は満足そうにされていた。
だがそのオークキングが蹴散らされた。
オークキングが壁際まで吹っ飛ばされたとき、父上は黙って席を立ってどこかへ行かれた。
父上を失望させた。
このままでは私は無能の烙印を捺されたままだ。
次は絶対に成功させる。
そのためにはオークを遥かに凌駕する魔物を準備する。
当然私個人の武力も証明しなければなるまい。
もはやジョバンニだけでは足りぬ。レオンとロメロにも手伝わせる。
奴隷落ちしたエリオとオルティスの名誉も早急に回復させねばならない。
新たなイベントを父上に奏上した。
父上は喜んでくれた。
こんな計画を待っていたのだ。お前も頼もしくなったな。
そう言って激賞してくれた。
父上が余りに乗り気なので逆に不安になったが、父上の全面的なお力添えを頂けたので計画は成功間違いない。
ピントゥー二家のスキャンダルは王宮から目を付けられ、この火消しに多大な散財を強いられた。当然ピントゥー二家にも手伝わせる。
父上が手を加えた計画を聞く。
間違いない。
ただし私の役目は重要になる。
私が成功しないと武闘派貴族の納得感を得られない。
私はかなり鍛えないといけない。
腹心を集めた。
計画を伝えた。
腹心達は震え上がった。
馬鹿者!
昨年奴らはオークを倒した。
今年は我らもオークを倒す。
それでは昨年と同様で新味はないのでは? だと?
昨年のあれはオークに扮したゴブリンだったと断定された。
父上がそう断言された。異論は許さない。
昨年の不祥事を雪ぐため、2年生は学期開始早々荒神祭をやり直す。
オークと戦う・・・本当に勝てるのでしょうか? だと?
確かにオークにも個体差がある。
ハイオークに近いオークでは困る。
その時はオークに細工をする。
観客から気付かれぬよう足に怪我をさせた状態で闘技場に解き放つ。
それに確実に勝つのだ。
奴らにはオークを出すといいつつ、オーガを出す。
オークと思ったら実はオーガ。
気付いたときにはどうしようもあるまい。あっという間に殺される。
そのくらいオーガの戦闘力は高い。
オークとオーガはピントゥー二伯爵に生け捕りにさせる。
スキャンダルもみ消しにかなり金を払ったのだからそのくらいは当然骨折って貰わねばならぬ。
だがな、今ピントゥー二伯爵から泣きが入っているのだ。
昨年のオークの捕獲だけでピントゥー二騎士団はそれなりの数を失ったらしい。
あいつら本当に武闘派なのか?
仕方なく身分を隠してベルトゥーリ騎士団を派遣することになっている。
ピントゥー二への貸しがでかくなった。
◇ ◇ ◇ ◇
思わぬ知らせが入った。
派遣したベルトゥーリ騎士団の半数が死んで、まだオーガを生け捕りに出来ていないという。
計画崩壊の危機だ!
このままでは何のためにベルトゥーリ騎士団を投入したのかわからない。
ベルトゥーリ騎士団全軍派遣せよ。
ピントゥー二から指揮権を奪え。
情報漏洩を恐れてためらってきたが、冒険者ギルドに応援要請をしろ。
冒険者ギルドは断ってきやがった。
「無理だ」という。
ええい。臆病者に用はない。
騎士団だけでやる。
結局100名超の犠牲を出してやっとオーガを3匹生け捕りにした。
これを隠して王都に運び、闘技場地下へ運び込み、エサを与えてその日に備える。
エサは生きた人間か?
どうやらオーガは長期間隠しおおせるような魔物では無いことがわかってきた。
すぐに荒神祭を行わせなければならぬ。