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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
15 王国高等学院編(休暇)
172/270

172話 乙女隊


クリムゾンリザード討伐を今回のクエストのクライマックスとし、地上へ戻ることにした。


6層を引き揚げる途中でバジリスクの魔石を3個追加。

レッドサーペントの素材を2個追加した。


そして5層の安全地帯で一泊した。

乙女隊の面々は、



「早く帰りたいです」


「久しぶりにお風呂に入りたいです」


「お父様とお母様に無事を知らせたいです」



と口々に休まずに戻ることを主張したが、やさしく却下した。



「駄目ですよ」


「どうしてですの?」


「ダンジョンで死者が出る原因をご存じですか?」


「強い魔物と戦って敗れるのでしょう?」


「ダンジョンで亡くなる原因を調べた記録を見たことがございます。それによると 死因の第一位は撤退時に格下の魔物から受ける不意打ちです。これが6割。

第二位は強い魔物に敗れるが3割。第三位が原因不明で1割です」


「それがどう関係しているの?」


「いま、皆さんは精神が高揚してるので疲れを感じていませんが、その内に疲れてきます。その時が魔物達のチャンスタイムなのです。これを防ぐためにも安全地帯で疲れを抜いてから地上に戻るのがセオリーです」


「そうなの?」


「そうです。私もマキも、特に炎帝の皆さんは疲れておいでです」


「あ・・・」



それからは素直に5層の安全地帯で休息した。




5層の安全地帯からは一気に引き揚げた。

ダンジョンの外に出るとお日様は高かった。


皆には先にイルアンの拠点に戻って貰い、私とソフィーはイルアン冒険者ギルド・ダンジョン出張所に立ち寄った。



「テレーザ殿。お疲れ様」


「ビトー様。ダンジョン攻略お疲れ様です」


「変わったことはないかな?」


「全て順調ですわ」


「シルビアというB級冒険者は立ち寄っていないかな?」


「シルビア様ですね・・・ 入ダンジョン記録はありますが、出ダンジョン記録はありませんわ。まだ入っていらっしゃるみたいです」


「実は私達と一緒に入ったのですが、『用事があるので先に帰る』と言われて単独行動をされてしまったのです」


「まあ・・・」


「ここのダンジョンの魔物は強いので、ダンジョン内で単独行動をさせるのはちょっとまずいと思いまして、お供を付けたのですが捲かれてしまって・・・」


「そうですねぇ。B級冒険者がその気になって姿を隠してしまったら後を追うのは不可能に近いですわねぇ・・・」


「そのうちに出てくると思いますので記録の方はその時にお願いしますね」


「はい。いつもご丁寧にありがとうございます」



うん。これでテレーザも問題なしと。



イルアン冒険者ギルドに立ち寄ると皆さん私を待っていた。

そうか・・・

得物は私の背負い袋に入っているんだっけ。


ギルド建屋内の買取コーナーでは狭すぎるのでナオミの解体場まで出向いた。



レッドサーペント5。

オーガキング1。

オーガウィッチ1。

ブルーディアー1。

ストライプドディアー8。

トレント10。

大量の魔石。



スケルトンとゴブリンは魔石だけ抜いてダンジョン内に置いてきた。

オーガも魔石だけ抜いて置いてきた。



「レッドサーペントって見慣れましたねぇ」


「オーガキングも珍しくなくなりました」


「ブルーディアー、ストライプドディアーの毛皮の値段もひと頃より落ち着きましたねぇ」



ナオミ(解体)とアドリアーナ(ギルド長)とカレン(会計)が嬉しそうに話している。

そんなことは無いぞ。

命懸けだぞ。



早速炎帝とウォーカーと乙女隊で山分け。

各パーティが倒した魔物の買取金を受け取る。


乙女隊は私が倒したレッドサーペント1体と魔石多数。

それでも結構な金額になった。



アドリアーナが私だけギルド長室へ招き入れた。



「浮気だわ」


「まあ!」


「浮気よ」



乙女隊がひそひそ言う。


ちが~う。

でも躍起になって否定して良いものか悩む。

ムキになって否定したらアドリアーナに失礼なような気がする。

こっちの世界ではどうなのだろう。



「お時間が掛かってしまい申し訳ありません。レザーアーマーができあがりました」


「おお・・・」



ミノタウロスの皮で作ったレザーアーマー(1着)。

トロールの皮で作ったレザーアーマー(5着)。


デザインもかなり力が入っている。

ノーブルな逸品に仕上がっている。

マキのブラインダーと比べても遜色ない。


私の希望でデザインはユニセックス。

女性陣が着用すればキリリとした仕事の出来る女。

男が着用すれば柔らかな雰囲気の穏健派。


ただしミノタウロスの皮で作ったレザーアーマーだけは胸回りと腰回りをゆったりと作って貰った。ソフィー専用。



「お代は・・・」


「残りの皮でお願い致します」


「では今アドリアーナ殿がお持ちの皮でよろしいですね」


「はい」



ギルド長室から戻ると炎帝は出発の準備をしていた。

炎帝は次のクエストのためイルアンを離れる。

ちょっとセンシティブなクエストだとか。

別れを惜しみつつ、炎帝は意気揚々と次の仕事に向かった。



「これ(クリムゾンリザードの魔石)でやっと俺たちも一人前のパーティになった気がする。本当に恩に着るぞ」



そうジョアンに言われ、腕をブンブン振られて別れた。



◇ ◇ ◇ ◇



新学年が始まるまで1ヶ月弱。

マリアン達は一足先にハーフォード公爵寮に戻る。



「仕掛けた罠がどうなっているのか気になりますし、逆に敵の罠が仕掛けられている可能性もありましょう。全て綺麗にしておきますわ」


「お金や道具が必要になったら言うんだよ」


「そんなことを言われるのはビトー様だけです」



マリアン達もイルアンの拠点を閉めてジルゴンに向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



乙女隊とウォーカーはハーフォードに戻った。

お嬢様が「絶対祝勝会をするっ!」といってきかないから。

何の勝利か良くわからないが、ダンジョンでは相当ストレスが溜まっただろうから気晴らしは必要だろう。


ということで、公爵邸でパーティー(祝宴)となった。


お嬢様がパーティーをすると言えばすぐにパーティーの準備が整う公爵家のスタッフが凄いと思う。



パーティーは公爵ご夫妻、マチルダお嬢様も参加された。

パーティーではオルタンスお嬢様が怪気炎を上げられ、微に入り細を穿ってダンジョン内での自分達の活躍を報告された。


マグダレーナ様は何とも微妙な表情をされていた。

貴族の子女がダンジョンに潜るなんて・・・という貴族教育上の憤慨と、これで王立高等学院へ戻っても少しは安心できるという親心がせめぎ合っているような顔をされていた。


マグダレーナ様は会話の戦力になりそうもないので、代わりにマチルダ様が頑張られていた。



「それでどんな魔物と遭遇したの?」


「ゴブリン、スケルトンから始まりまして、トレント、ストライプドディアー、ブルーディアー、ゴースト、マミー、リッチ、オーガ、オーガウィッチ、オーガキング、レッドサーペント・・・」


「ちょっとオルタンス。知っている魔物を順番に並べているのではなくて?」


「違いますわ。お姉様。全て遭遇した魔物ですわ」


「遭遇したって・・・ 全て倒したの?」


「いいえ。流石に私達では無理ですわ。殆どの魔物は炎帝の皆様に討伐して頂きました」


「まあ! 炎帝と言えばリッチを倒したという高名なパーティですのね」


「そうですわ。 今回リッチを倒したのはソフィー様ですけど」


「え・・・」


「ソフィー!!!」



突然マグダレーナ様に火が付いた。



「あなたっ! まだそんな野蛮なことをっ!」


「お母様。誤解ですわ」


「何が誤解ですのっ!?」


「ソフィー様は貴族女性らしく優雅にリッチを葬り去りましたの。そのあまりの凜々しさにカトリーヌが心服してしまったほどですわ」


「・・・カトリーヌ、そうなのですか?」


「マグダレーナ様。実際にその目で御覧になられないと信じられないと思います。わたくし、ソフィー様の右後方におりましたが、ソフィー様は眉一つ動かさずリッチと3体のマミーを蹂躙致しました。わたくしも自分の目で見なければ到底信じられなかったと思います」


「・・・そうですか。ソフィー、申し訳ありません。あなたを信じられなくて」



ソフィーは優雅に片膝を付き、



「御方様の御心のままに」



とだけ述べた。

それから乙女隊にオーガ戦のコツを教えたことを報告した。




「ところでビトー。王立高等学院の教師が一緒では無かったのか?」


「一緒でございました」


「見えないようだが?」


「実はダンジョン内ではぐれてしまい、まだダンジョンの外へ出て来ておりませぬ」


「良いのか?」


「シルビア先生自ら単独行動を取られて身を隠されてしまったのです。シルビア先生はB級冒険者の手練れでございますので、自分のご意思で身を隠されると見つけ出すのは困難です」


「そうか・・・ ビトーは知っているのか?」


「おおよそは」


「そうか・・・」



しんみりしかけたので空気を変えるためにあれを出した。



「実は2年生で起こる騒動を見越しまして、特別にあつらえました」


「なに? 見せて見よ」


「これでございます」



取り出したのはトロールの皮で作られたレザーアーマー3着。

アドリアーナから受け取ったばかりのもの。

デザイナーが手掛けたような逸品で、一見してレザーアーマーと見抜ける者はそうはいないだろう。



「ビトー。これは?」


「乙女隊の女子、オルタンスお嬢様、カトリーヌ、アナスターシアに普段着として着用して頂けるとかなり安心できるかと思い、ご用意致しました」


「まあ、素敵なデザインね。これ頂けるのですか?」


「ええ・・ まあ・・」



オルタンスお嬢様からおねだりされてしまった。

タダで差し上げるにはちょいと高価なのだが・・・

仕方ないよね。安全には代えられない。


手に取って触れていたカトリーヌが気付いたようだ。



「これって革鎧ですの?」


「そうです」


「こんなにデザインが優先されたものは初めて見ました。防御の方は犠牲にされているのですか?」


「いいえ。プレートメールと同等の強度があります」


「どうしてですの?」


「トロールの皮で作られておりますので」



それから擦った揉んだの大騒ぎに発展した。

「いくらだ!!」と公爵の怒号が飛び、公爵がマグダレーナ様からいたく叱られ、場が落ち着いてからお話しした。



「いくらなのだ? タダで受け取るわけにはいかん」


「これはウォーカーで討伐した物から作りましたので、材料費は掛かっておりません。縫製は大変なのですが、マーラー商会には縫製費代わりとしてトロールの皮を1枚渡しておりますので、こちらも費用は発生しておりません」


「う~む。だがビトー。これも買い取らせてくれ」


「閣下のお心遣い嬉しゅうございます。ただオリオル家とバラチエ家ではすぐに用意することは難しいでしょう。ですので最初は『お貸しする』という形にしてみてはいかがでしょう?」


「そうだな・・・ 済まぬがそうさせてくれ。当面はビトーの給金を上げることで対応させてくれ」



カトリーヌとアナスターシアがおずおずと訊いてきた。



「これ・・・ 私達も着ていいの?」


「そのための物です」


「ウチの実家じゃ御代を払えないかも知れない・・・」


「乙女隊に所属されている間はお貸し致します。卒業するときに買取でも返却でも良いと思います」


「ビトー様・・・」


「オルタンスお嬢様の御学友を危険な目に遭わせるわけには参りませぬ。素知らぬ顔をして普段から着用して下さい」


「マキ様は?」


「マキは既に良い物を着用しております」



それから乙女隊女子4人組がレザーアーマーを着用し、皆の前に勢揃いした。

うん。統一感がある。

マキのブラインダーはカメレオンのように周囲に溶け込むので、一緒にいると一体感が出る。

(どうしても皮の模様によって差が出るが、デザインは統一されている)



「うむ。乙女隊正式発足だな」



公爵の言葉にワッと盛り上がった。



◇ ◇ ◇ ◇



その夜。

ソフィーにミノタウロスの皮で作られたレザーアーマーを贈った。

乙女隊のレザーアーマーより更に高い防御力を誇る。

プレートメールを遥かに凌駕する、正に革鎧の最高峰。

ソフィーの大きな乳房とお尻にぴったりとフィットして、なんだか凄くセクシー。

盗っ人三姉妹みたいな、不○子ちゃんみたいな・・・

冒険時は上にローブを着用して下さい。



そのままどちらからとも無く・・・


何度も励みました。




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