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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
15 王国高等学院編(休暇)
169/270

169話 ジョイント(その2)


(オリオル辺境伯家令嬢 カトリーヌ・オリオルの視点で書かれています)



4層ボス。

いよいよリッチ戦です。



「今回は誰が倒す?」



そう言いながら炎帝の皆様とウォーカーで話し合っています。


話が見えないのですが、リッチ戦ですよね?

リッチは炎帝が倒すのではありませんか?

炎帝以外にリッチを倒した人の噂は聞いたことがないのですが。



「人数が多いので時間を掛けずに少人数で倒したい。その方が『事故』が少ない」


「そうですね・・・」


「ソフィー、頼めるか?」



ウォルフガングがソフィー様に声を掛けます。

何というか・・・

すごく軽い調子で声を掛けました。


一方ソフィー様は、



「ああ。任せて貰おう」



簡単に引き受けましたっ!!

リッチ戦のことを話し合っているのですよね?



「いよいよソフィーさんの本気を見れるのか!」



炎帝の皆さんが盛り上がっています。

ソフィー様は何をするのでしょう?

本当にソフィー様がリッチを倒すのですか?


えっ?

本当に?


ソフィー様が私を呼び寄せました。



「カトリーヌ。ビトーとマキと一緒に私の後ろに付け。氷使いの戦い方を見せてやる」



本当にソフィー様がリッチを攻略されるのです。

背中に冷たい物が流れます。


怖い・・・

震えが止まりません。

でもそんな私を見たソフィー様は私を抱き寄せ、優しく髪を撫でてくれました。



「恐れることはない。お前は私が守る」



わたくし、ソフィー様の妻になりたいと思います。



◇ ◇ ◇ ◇



ここから先で起きたことは全て鮮明に憶えております。

忘れようとしても忘れることは出来ないと思います。

このリッチ戦は私が目指すべき姿を教えてくれました。



ボス部屋の扉の正面にスティールズ男爵が立ち、扉に手を掛けました。

スティールズ男爵の後ろにソフィー様とマキ様が並びました。

そしてその後ろに私が付きました。


スティールズ男爵がグッと力を入れ、扉を開け放ちました。



ボス部屋の中。

豪華なガウンを羽織ったスケルトンっぽい奴が1体います。

そしてマミーが3体もいる!


リッチ戦って、リッチだけじゃ無いのっ!

話が違うじゃ無いっ!

こんなの勝てっこないじゃないっ!!


私の声にならない声など気にもせず、ソフィー様はゆっくりと部屋の中に入っていきます。

スティールズ男爵とマキ様も部屋に入ります。



ソフィー様とリッチが睨み合いました。

リッチはソフィー様だけを注視しています。

私の事なんて全く見ていません。

お陰で息が出来ます。



ソフィー様とリッチはしばらく睨み合っていましたが、ソフィー様がいきなり氷槍を出しました。

リッチも火槍を出しています。

おそらく両者同時に出したのだと思います。


ソフィー様はリッチに向かって氷槍を3連射しました。

対してリッチの火槍は1本だけでした。

最初の氷槍と火槍は相殺されました。

ですが2本目、3本目がリッチを攻撃しました。

かなりのダメージを受けたらしく、リッチが怯むのがわかりました。


リッチが怯んでいる・・・

リッチが怯んでいる・・・


その事実に私は衝撃を受けました。



ソフィー様はリッチが怯んでいる隙にマミーに向かって氷槍を連射しました。

一瞬でマミー達は倒れました。


配下が全滅してリッチは我に返ったみたいです。

リッチとソフィー様の魔法の撃ち合いが始まりました。


リッチの火槍とソフィー様の氷槍。

魔法の威力は火槍の方がやや上のようです。

ですがソフィー様の氷槍を撃つ回転がどんどん上がります。

リッチが1発撃ってくる間にソフィー様は4発~5発撃ちます。


更にソフィー様は正面からだけで無く、空中からも氷槍を撃つのです。

リッチは正面の氷槍と真っ向勝負している間に背後から撃たれ、頭上から撃たれるのです。

リッチの立場になったら悪夢です。

リッチはあっという間にHPを削られ切って骸を晒していました・・・




戦いが済んで、しばらく誰も声を発しませんでした。

スティールズ男爵とマキ様がソフィー様のところへ行って、



「いつもながら見事なお手前」


「さすが第一夫人だわ」



そう言って労っておられました。



私は自分が見たものを理解しました。

ここに全水魔法使いが目指すべき姿があります。


ソフィー様。

何というお方でしょう。

そしてソフィー様は魔術師では無く、魔法剣士なのです。



炎帝の皆様がソフィー様の元へ駆け寄ります。



「すげぇな・・・」


「いや、B級試験のときに凄いことは知っていたけど、更に凄みが上がっていないか?」


「ソフィー様。全女性冒険者の希望の星です!」




リッチの死骸とマミーの死骸はすぐにダンジョンに呑み込まれ、魔石が残されました。

魔石を拾っているとリッチの杖が落ちていることに気付きました。


ソフィー様にお渡ししますと、ソフィー様はそのままスティールズ男爵に渡されていました。



「ソフィー様がお一人で倒されたのですからソフィー様の物ではありませんか?」


「普通はそうなのだろうな。だがウォーカーでは全てパーティーオーナーのビトーが決める」



本当にびっくりしました。

スティールズ男爵ってそんなに巨大な権限をお持ちだったとは・・・



「炎帝の皆様はリッチの杖は必要ありませんか?」


「う~ん。もういらないかな~」


「リッチを攻略する前だったら欲しかったんだがな~」


「そういう物なんですね」


「うん。今使っている杖の方が馴染むんだ」



炎帝に断られたスティールズ男爵は、今度はアナスターシアに聞いています。



「アナスターシアは使わないかな?」


「よろしいのですか? リッチの杖ですよね・・・」


「うん。性能はね・・・」



【リッチの杖】

 リッチが標準装備する魔法の杖

 火魔法の威力強化および詠唱の省略



凄い杖です!

売ればかなりの額になるでしょう。

それをあっさりとアナスターシアに下賜しようというのです。


私は恐る恐る周囲のメンバーの表情を見て回りました。


・・・


「うらやましい」とか「新入りが生意気な」という表情がありません。

スティールズ男爵の御判断は絶対のようです。



アナスターシアがオルタンスお嬢様を見ました。

オルタンスお嬢様が頷いたのを確認して、アナスターシアは杖を受け取りました。




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