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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
15 王国高等学院編(休暇)
166/275

166話 訓練


(オリオル辺境伯家令嬢 カトリーヌ・オリオルの視点で書かれています)


イルアンダンジョン1層のボス部屋で不思議なことがおきました。


誰も何もしていないのにゴブリンメイジが倒れました。

急にホブゴブリンが目を押さえてわめき始めました。


いったい何が起きたのでしょう?


その間にスティールズ男爵、シルビア先生、マキ様が、あっという間にゴブリン10匹を倒してしまいました。

最後は恐怖にかられて逃げ惑うゴブリンを追いかけて殺していました。

どれだけ強いのでしょう。


それに比べて私は・・・



スティールズ男爵、シルビア先生、マキ様の前衛お三方は、私が呪文を唱えても安全なようにお膳立てをしてくれるのです。

それをしてくれないと私は呪文を詠唱する時間がとれないのです。

詠唱している間に魔物に接近されて殺されるのです。

たかがゴブリンですらそうなのです。


私は、完全にこのパーティの『いらない子』でした。

前衛の3人で十分でした。


全てお膳立てされて、最後の最後に私とアナスターシアが魔法でホブゴブリンを倒しました。

私って何なのでしょう?

何のためにいるのでしょう?

不甲斐なくて涙が出ます。




ところで魔法使いのようなゴブリンはどうしたのでしょう?


マキ様に聞くと、開戦と同時に消化不良で倒れたそうです。

全然気付きませんでした。

何でマキ様は消化不良とわかるのでしょう?



ホブゴブリンが目を押さえてわめいていました。

あれは何が起きたのですか?


マキ様に聞くと、開戦と同時にマキ様が目潰しを掛けたそうです。

全然気付きませんでした。

マキ様は呪文を唱えていません。

これが無詠唱なのですね。


目潰しってどうするんですか?

土魔法?

そうですか・・・



マキ様が宝箱を見つけました。

まったく宝箱に見えません。

私なら、その上に腰を下ろしても気付かないでしょう。


開けると『レッドアイの糸』と言うものが出て来ました。



「この部屋はいつもこれだね」



スティールズ男爵と話しています。

ちょくちょく来ているみたいです。



私もですが、特にアナスターシアの落ち込みが酷く、宝箱も目に入っていないようですので、いったん地上に戻ることになりました。



◇ ◇ ◇ ◇



翌日は1日寝込みました。

熱が出ているみたいでした。

スティールズ男爵がマキ様を伴って様子を見に来てくれました。



「初めてのダンジョンだったのでしょう? 誰でもこうなりますよ。気にしないで下さいね」



慰めて下さるのは有り難いのですが、私の落ち込みはダンジョンのせいではありません。自身の不甲斐なさのせいです。

そう反論しようと思ったのですが、なぜか体がほんわりと暖かくなり、眠気に襲われて寝てしまいました。


目が覚めたら夕方でした。

体も心もスッキリとしていました。


まさかスティールズ男爵に何かをされたのでしょうか?

お嫁に行けない体にされたのでしょうか?

マキ様の目が光っていましたので大丈夫と信じたいのですが・・・



◇ ◇ ◇ ◇



翌日は1日訓練に当てました。

絶対に無詠唱で魔法を撃つ。

そう固く決心してハーフォード川の堤防へ行きました。

ここなら思い切り練習が出来ます。


アナスターシアは既に来ていました。


私とアナスターシアが練習をしていると、ウォルフガング様とソフィー様が来ました。

そしてアナスターシアにはウォルフガング様が、私にはソフィー様が付いて指導して下さいました。



私が無詠唱魔法の切っ掛けを掴めず、そしてそれを上手く言葉に出来ずにイライラして落ち込んでいるところ、ソフィー様がぶっきらぼうに、でも内容は懇切丁寧に説明して下さいました。

私もソフィー様も水使い、そして氷使いです。

だからでしょうか、ソフィー様の説明が凄く良くわかるのです。

疑問は氷解します。



「ちょっとしたコツだ」



そうソフィー様はおっしゃいます。

ですがそのコツを素人にわかりやすく教えられる方はいないのです。

少しですが、もう夕方には使えるようになっていました。

あとは訓練あるのみ。




ソフィー様。

強くて美しくて一目見たときから好きでした。


私の故郷、王国の北辺は、人も魔物も生きていくのが厳しい環境で、女といえども強くなくてはなりません。

ソフィー様は私の故郷の理想の女性像なのです。

そのお方のご指導の下、私の水魔法は開花し始めています。

こんなに嬉しいことはありません。



「そろそろ切り上げよう。魔力が切れるぞ」



ソフィー様。

私の魔力量までチェックされているとは驚きです。

言われたとおり、あと1回氷槍を出したら魔力切れでしょう。



訓練の終わりに私は今日一番の氷槍を撃ちました。



◇ ◇ ◇ ◇



翌日から基礎体力向上訓練にも参加することにしました。

もうソフィー様の課す訓練に対する疑問はどこにもありません。

ソフィー様の言うことに間違いは無いのです。


朝、気合いを入れてハーフォード川の河原へ行くと・・・

アナスターシアも参加していました。

オルタンスお嬢様も参加していました。

シルビア先生も参加していました。

当然のようにスティールズ男爵とマキ様も参加されています。




全力疾走を10分。


シルビア先生は元冒険者ですのでこの様な訓練はしたことがあるそうです。

これ程の強度でしたことは無いと言われていましたが。


オルタンスお嬢様は死にかけていますが、何とか生きています。

1年生のとき、シルビア先生にしごかれた経験が生きているそうです。


私とアナスターシアは死にました。

どなたか供養塔を建立して下さい。


でもソフィー様はぶっきらぼうにフォローしてくれます。



「お前たちは貴族だ。冒険者になるわけじゃない。ついてこれなくとも落ち込むことは無い」


「でもスティールズ男爵は貴族です。ソフィー様もマキ様も貴族の妻です」


「この2人は貴族になる前に冒険者だったからな。冒険者として鍛えたので中途半端は許さない」



ソフィー様が不適な笑みを浮かべます。

スティールズ男爵とマキ様はそっぽを向いています。




結局私とアナスターシアが何とか10分走に付いていける様になるまでに1ヶ月も掛かりました。


800mダッシュは遂にできませんでした。



スティールズ男爵とマキ様は800mダッシュを10本行っていました。

シルビア先生は5本まで出来るようになりました。


きっとこの3人は人間では無いのです。




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