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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
13 メルヴィル廃村編
144/271

144話 メルヴィル村(まだまだ現状把握中)


対魔樹サンダルウッドの並木で一夜を明かすことにした。

ここが一番安全だ。


昨日マキが湿地の水を水路に落とす溝を掘ったが、水は順調に落ちている。

水路は遙か南に下ってグラント川に合流する。

放っておいて良いだろう。


焚き火を囲み、口糧を囓りながら皆で状況を確認する。

マロン、アル、パロにも入ってもらう。

捕捉や間違いがあったら言ってくれ。


・湿地の水は抜く事が可能

・だがここの農地(湿地)は水が溜まりやすい

・魔物はいる(ビッグトード、レッドニュート、ゾンビ、ゴースト)

・ビッグトードとレッドニュートはイナゴとスライムを食べるので、適正数なら益獣

・グラント川から東水路へ水を引くことが可能

・村の南端に魔力溜まりがある



「南端の魔力溜まりからゾンビとゴーストが湧くのよね?」


「コスピアジェ様はそう言っていたね。一応確認しよう」


「湿地なのになんで水路の水が必要なの?」


「水を抜いた後の土壌の性質がわからないんだ。もともと麦の生産地だったというから乾燥気味だと思うんだ」


「雨が降れば湿地と化して、日照りが続けば乾燥って、面倒臭い土地ね」


「そうだね。だから水を引くにも落とすにも、水路は絶対に必要」


「キャスの保護は絶対必要よ」


「そうだね」


「南端の魔力溜まりの扱いはどうする?」


「コスピアジェ様はダンジョンになるって言っていましたね。これは避けられないと思った方が良いのですか? ソフィー?」


「正直、コスピアジェ様がどうやってダンジョン化を抑え込んでいたのかわからない。コスピアジェ様の巣穴を見た方が良いだろう」


「コスピアジェ様がいなくなった以上、ダンジョン化は避けられないと思った方が良いですね」


「そうだな」


「コスピアジェ様はダンジョン化した時の規模は『小』、難易度は『初級』って言ってたわね」


「それだけど・・・」


「あら、コスピアジェ様の情報だもの。信用できるんじゃない?」


「信用するんだけど、規模は『小』、難易度は『初級』ってコスピアジェ様基準かな?」


「・・・」


「・・・」


「もしコスピアジェ様基準だとすると、我々にとっては相当ヤバイダンジョンだよね?」


「ここで悩んでも仕方ない。明日実地見聞しよう」



ソフィーの一声で夜明けと共にコスピアジェと見えた場所へ向かった。


念のため、2羽の使い魔達に空から監視させた。


コスピアジェの使っていた巣穴を確認。

強い魔力を感じるが、マロンにきくと、これはコスピアジェの残留魔力。

ここにはアンデッドどもの気配は感じられない。


巣穴の周囲を確認。


コスピアジェの巣を中心に半径20mは妙な気配無し。

その外側に出ると、なるほど怪しい気配がある。



「魔力溜まりのど真ん中にコスピアジェ様が巣を作って蓋をしたのだな。だが今夜には封印していた魔力が抜ける。どれほどのものか見ていくか」



◇ ◇ ◇ ◇



夜。

月明かりがあるので行動に支障は無い。

マロンは鼻が利くし、なによりこちらにはアル(フクロウ)がいる。

私はハーピーの羽根を並べて夜間照明の準備。

さあこい、アンデッドども。



マロンが合図をする。

アンデッドのものと思われる魔力が高まったようだ。

上空からアルも合図をする。


夜間照明開始。

四方からコスピアジェの巣の出口を照らす。

コスピアジェの巣から出てくる者がいる。

実体を持っている。

動きがぎこちない。

ゾンビか。



種族:ゾンビ

年齢:0歳

魔法:-

特殊能力:毒

脅威度:Eクラス



「普通のゾンビです。3体いるようですね」


「よし。一人一体受け持て。 イケッ!!」



ソフィーの掛け声とともにソフィー、マキ、私の3人が一斉にゾンビに襲いかかる。

3人とも無言でゾンビの首をはねた。



「引けっ!」



ソフィーの声が掛かる。

マロンの元まで下がって様子を見ると、コスピアジェの巣の出口から形の定まらない奴が出てくるのがわかる。



「ゴーストです。1・・2・・ 4体います」


「ビトー。始末できるか?」


「はい」



ゴーストの周囲を走り回りながらデ・ヒールを掛けていった。

ゴーストはデ・ヒール一発で消える。


魔石を拾っていると次の気配がある。

距離を取って見ていると、今度はスケルトンだった。

ぞろぞろ出てくる。

ソフィーがいるので心に余裕がある。

どれだけ出てくるのか見てみよう。

そう思って皆の元に下がって観察を続けた。


スケルトンは15体出てきた。

スケルトンナイトに率いられていない、素のスケルトンだけ。

バラバラに散っちゃうのかな・・・ と思ってみていると、皆さん全員集合して律儀に我々の方にやってくる。

棍棒を持ち、歯をカチカチ言わせながらやってくる。



「お前たち。一人で何体まで同時に相手できる?」


「肉薄されなければ、タクトを使えば何体でも」


「私は無理。1体」


マロンは返答に困っている。

マロンの葛藤はわかる。

自分一人だけなら走り回りながら何体でも相手できるのだろうが、回りに他人がいると勝手な動きをすると迷惑を掛けかねない。

ソフィーもマロンの困惑がわかったようで、頭を撫でながら優しく微笑んで言った。



「いいよ、マロン。今回はビトーに任せよう」



私はタクトを構える。



「なにそれ?」



そういえばマキは見たことがないのか。



「レーザーでなぎ倒します」



それだけ言って一歩前に出てタクトを構え、横薙ぎになぎ払った。

スケルトンどもはいっぺんにガラガラと崩れ落ちていった。

ソフィーがあきれたように言った。



「お前、それを使えばミノタウロスも倒せるんじゃないか?」



私も少しはそう思わないでも無いのだが。



「相手が止まっていたり、動きがゆっくりの時は有効です。警戒されると当てるのは難しいです」


「なるほどな」



スケルトンを倒したら落ち着いたらしく、すぐに次が出てこない。

魔石を拾って監視を継続した。



◇ ◇ ◇ ◇



その後、一晩中監視したが、次の魔物は出てこなかった。

夜が明けてからコスピアジェの巣に近付いて見た。

そしてすぐにわかった。



「ソフィー、この感じは・・・」


「ああ。何とも微妙だな。この感じは原始ダンジョンか通常のダンジョンか迷う。ゆうべのアレがダンジョン化前のスタンピードだったのかもしれぬ。一度ハーフォードに戻って報告した方が良いだろう」



現時点でマグダレーナ様の期待に叶っているかわからないが、クエストの前提条件が変わりつつあるような気がするので、一度中間報告に戻ることにした。


アルとパロを監視に残し、ハーフォードへ帰還した。





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