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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
02 メッサー冒険者ギルド編
13/268

013話 闇魔法

相変わらず私は冒険者ギルドで治癒に勤しんでいた。


冒険者以外でも秘密を守れるケース(深夜こっそりと担ぎ込まれる重傷者。主にメッサーの町の金持ちで、魔術による秘密保持契約を受け入れる人)は治癒していた。

この世界で初めてできた会員制救急病院といった位置付けだ。


私は治癒しながら世間話。


「飛び込みで治癒を依頼できるなんてお金持ちなんですねぇ」

「まあね」(ドヤ顔)

「ちなみにお金持ちってどの辺から言うんですか?」

「イザと言うとき、飛び込みで治癒を依頼できる奴ってことかな。大金貨5枚ポンと出せる奴」

「大金貨5枚ですか(500万円)? ミリトス教会は確か1枚だったのじゃありませんか? といいながらウチは大銀貨1枚(1万円)から金貨1枚(10万円)ですけど」

「ああ、大金貨1枚っていう触れ込みだよなぁ。でもあいつら1枚で済む事なんて絶対無いからなぁ」

「そうなんですか?」

「最低3枚。普通で5枚。死んでも5枚で止めさせないとイカンぞ。ケツ毛まで毟られるからな」

「はえーー」


教会で治癒を依頼すると、まず部屋に通され、名前、住所、財産、収入を聞かれるそうだ。そこでかなり待たされる。

何をしているかというと、コイツからどれだけカネを毟れるか、奴隷として売り飛ばせる女子供がいないか、調べているそうだ。


そしてヒールを依頼しているのに「ハイヒールでないと直らない」とか「呪われている」とか言い始め、延々と押し問答が続くそうだ。


「まっ、金持ちでも商人じゃないと無理だな。言いくるめられちまう」


いやー、何と言ったら良いか。

教科書に出てくるような霊感商法じゃないですか。

ミリトス教を信じる人って奇特な人なんですね。

教会が私を付け狙うのもわかります。


「でもそこまでわかっておられるなら、ポーションで済ませるわけにはいかないのですか?」

「他人に任せられない取引があるからなぁ。1週間も寝込んじゃおれんのよ」

「大金貨5枚以上の利を見込める取引ですね」

「そんなときに限って魔物に襲われるんだよなぁ」

「持ってますね」

「はははは」



私はヒールもキュアも少しずつ効くので1回の治癒に掛かる時間が長い。

また1回で治癒しきれないときは何度も掛ける。

お客さんは不安になるのがお約束。

師匠から改めてお代を聞いて驚くのもお約束。


最近治癒依頼が増えて経験だけは積んだので、魔法のレベルはかなりアップした。

かなり非道い怪我でも『こんな順番で直るよね』というイメージ(ケーススタディ)をいっぱい持っており、だいたいどんな怪我でも対応できるようになった。


治癒魔法のレベルで言うと3に当たるようだ。

一日の終わりにはレベル0からレベル3にアップしている。

MP(魔力量)とINT(知力)の伸びも良い。

ただし翌日にはレベル0に戻っている。



◇ ◇ ◇ ◇



治癒に勤しむかたわら、ギルド長から面白い話を聞いた。


「おまえ治癒魔法を使えるなら、光魔法と闇魔法も使えないか?」


???

治癒魔法=神聖魔法=光魔法じゃないのですか?

今も使えていますが。


「違う。治癒魔法=神聖魔法だが、治癒魔法は光魔法の中の1つだ」

「そうですか。それで治癒魔法が使えるなら光魔法が使える、というのはわかりました。でも闇魔法も使えるとはどういうことですか?」

「光魔法と闇魔法は表裏一体と言われている。だから光魔法を使える奴は闇魔法も使えると言われている」


そんな言い伝えがあるらしい。

具体的にどんな魔法なのか聞いてみた。

ギルド長が知っているのは光魔法の『ライト』と『ライトボム』。


ライト。

提灯かランタンのようなもの。

松明があれば良いのではないか?

事実、ほぼ100%の冒険者が松明を使っている。

光魔法のライトを使っているという話は聞いたことが無い。

ただし、それは光魔法使いが教会に独占されていることと、教会の連中はライトの使いどころを知らないということらしい。

私もライトの使いどころがわからない。


ライトボム。

強い光で目くらましを掛ける魔法。

こちらの世界に『光球』という魔術具があるらしい(見たことはない)。

強力な光で目くらましを掛ける道具だが、結構なお値段がする。

覚えておいて損は無い。

勉強しよう。



闇魔法はソフィーに聞け、とのことだったので、早速師匠に聞いてみた。

師匠も闇魔法はあまり詳しくない、と言いながら『鑑定』と『結界』を教えてくれた。


鑑定。

武器やアイテムの性能を教えてくれる。

人や魔物を鑑定するとスキル、特殊能力、状態を教えてくれる。

レベルが上がると性格や家族、犯罪歴などもわかるらしい。


結界。

目に見えぬバリアを張れる。

バリアの大きさ、強度は術者のレベルによって変わる。


闇魔法はどうもイメージしにくい。

師匠も実際に闇魔法を見たことがなく、それ以上の説明はできなかった。



◇ ◇ ◇ ◇



治癒しながら、書類整理しながら、光魔法、闇魔法について考えた。


ライト。

いくら魔法でも無から何かを生み出すのはハードルが高い。

まさか “無” は光らないだろう。

何でも良いので光源が必要だ。

例えば空気中を漂うチリ。

小さすぎて目視できないだけで、そこら辺にチリやホコリが漂っているのは間違いない。それは容易にイメージできる。


丹田から魔力が湧き出し、魔力を体内に充填し、指先に魔力を集める。

前方1m。何も無い空間を指差す。

指の指し示す場所にチリが漂っている、と想像する。

間違いない。

うむ。確かに漂っている。

私には見える。

さあチリよ。その身を光らせるのだ。

光の色は白が良い。

遠慮はいらぬ。

ズイッと光りたまえ。

・・・

・・・


針の先くらいの小さな1点がチカッと光った。

お、点灯した。

ふ~ん。

おお・・・ 光点が動く。思い通りに動く。

光点か・・・

ショボイな。

ホコリだからな。

ということは、光る面積が大きければ光量も多いのか?


恐る恐る壁を光らせてみた。

・・・

・・・

ちょっと日焼けした。



ライトボム。

ライトもライトボムも同じだ。

イメージはつかめた。

室内でやるとやばいので後日試してみた。

昼間で良かった。

夜やったら敵襲と間違われたかもしれない。



鑑定。

これはすぐにイメージがついた。

治癒するとき、最初は怪我の状況を目視してから治癒魔法を掛けていた。

慣れてくると傷の表面を見れば、あとは手をかざして魔力で撫でるだけで傷の深さ、傷の重さを感じ取ることができるようになった。

つまり怪我を鑑定していた。


こう考えた。

別に対象が怪我をしていなくても良い。

怪我の深さを探るのと同じ感じで見ればよい。


すぐに鑑定魔法を使えた。

もともと治癒の経験は豊富だったので、最初からかなり詳細な鑑定ができた。



阻害(認識阻害)。

鑑定を考えていて気付いた。

鑑定の反対ってなんだろう?

自分を相手に鑑定させない、と考えた。

具体的には、相手が自分を見ることを邪魔するイメージ。


割と簡単にできてしまった。

相手から見ると、私は透明人間にはなれないが、背景に溶け込むように存在感の無い、影の薄い人になる。

皆さんも「確かにその場にいたはずなのに、その人の顔や声を憶えていない。全く印象に残っていない」という経験が無いだろうか?

ちょっとした変装を施せば、ほぼ100%存在感を消せることがわかった。


ただし万能では無い。

私がそこにいると知っており、そして私を捜している人からは、なかなか姿を隠せない。



ここから調子に乗って色々考えた。

元の世界で読んだ小説から、すぐにイメージを掴むことができた。



反治癒デ・ヒール

治癒の反対。

相手の体から生体エネルギーを奪い、体調不良にさせる。

これは治癒士としてはお手の物。

しかし気付いてしまった。

これって一種の『呪い』だよね。



遠隔操作。

ライトを使うとき、直接触らずに光点を自在に動かすことができた。

対象の物、魔物、人間、武器攻撃、魔力攻撃を、直接触れずに操作する。

目に見えない魔力の手で押したり引いたりするイメージ。

実際に出来たのは、手を触れずに軽い物を操ることが出来る、という程度だった。

使い物にならないな・・・ 最初はそう思った。

ところが、直接手を触れるとかなり重い物を動かすことが出来た。

また手で直接触れなくても、棒や杖で触れていれば、かなり重い物を動かすことが出来た。

マロンを相手に練習してみた。

マロンを押さえつけ続けることが出来た。

使い方次第で面白いかも。



音阻害(無音空間)。

阻害の音バージョン。

相手がこちらの話し声を認識できなくする。

一定の空間内の音が外に伝わることを阻害する。




自分は厨二病かもしれないと思った。




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