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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
12 ダンジョン管理編
129/270

129話 マキ合流


イルアンにマキが来た。


ハーフォード公爵とバリオス公爵のトップ貴族間の婚礼なので、本来なら穏健派の貴族をこぞって招き、武闘派の貴族も申し訳程度招き、華燭の典になる。

だが今回は花嫁にケチが付いたため、マキの要望で式典は無し。

両家の要人の顔合わせのみとした。


私もマキも元々最下層民なのでちょっとホッとした。


両家の話し合いの結果、マキの子爵位はバリオス家に返上。

マキは持参金無し。身一つで来る。

これだけ聞くとマキは身一つで放り出された様に聞こえるが、実はそうではない。

両家の間に密約があるらしい。


オーウェンはしみじみと述懐した。



「マキには辛い思いをさせた。上級貴族として恥ずかしい限りだ。マキに希望を聞くとそなたに嫁ぎたいとのことだったのだ」


「嬉しゅうございますが、オーウェン様のお手元に残すという選択はございませんでしたか?」


「一度あのような汚点を付けられると貴族の身内に置いておくのも可哀想なのだ。常に好奇の目で見られるからな」


「承知致しました。喜んでマキを娶らせて頂きます」



マキに私の現状を伝える。


正妻にソフィー。

側室にアンナ。

爵位は男爵だけど、実質ハーフォード公爵と公爵夫人の独立機動部隊的な位置付け。

イルアンの街の治安責任者。

ダンジョンの管理責任者。


マキは全部知っていた。



「上級貴族の情報収集能力を甘く見ちゃいけません。ビトー君のことなら何でも知っているからね」



新婚早々一本残らず尻毛をむしられそうです。




マキは、緊急時はハーフォード公爵の命で動くが、それ以外は好きにして良いといわれている。


マキは俄然冒険者として活動を始めた。


イルアン着任後、すぐにソフィーに頼んでみっちりと鍛え直して貰っている。

何気に私も訓練に参加している。

ソフィー自身も一緒に訓練をしている。


ソフィーも子を産み、その後何かと呼び出しが続いたので、鈍っているという。

ということで、夫婦3人で走り、剣を振り、転がり、匍匐前進をし、魔法を撃つ。

時々夜中に叩き起こされて走る。剣を振る。魔法を撃つ。

こうして文字に起こすと何か変な感じがするが、メッサーの冒険者ギルドでしていたことなので、やっている本人にとっては懐かしい。



訓練の最中にソフィーから言われたこと。

二人(マキと私)とも体が矮小なので、どれほど鍛えても冒険者としては上(B級、C級)を望めない。だが死なない工夫はある。


それは、


・誰よりも早く敵を探知すること

・必要なときに必要なだけダッシュできること

・予備動作なし、無詠唱で魔法を撃てること

・ダッシュしながら魔法を撃てること


だった。



私は、魔法は全て無詠唱で行う。

だが、いまだに走りながらヒールを掛けられない。

走りながら認識阻害とデ・ヒールは掛けられる。

炎杖を使えば走りながらの火球・火槍・火炎放射・火壁を撃てる。


走りながらヒール。

なんとかモノにしたい。

あと魔力消費を抑えるアイテムが欲しい。



マキは、魔法は全て詠唱する。

走りながら魔法を撃てない。

まずここから改善しなければならない。


マキが使う魔法は、


・ノームの短剣から小石(砂利?)を撃つ(岩弾というほど立派な物じゃ無い)

・ノームの小盾から巨大な石の盾を出す


いずれも様になっているし、ノームの首飾りの後押しもあって盾の威力は十分。

魔力消費も抑えられている。

後は訓練あるのみ。




しかしどうしてマキは冒険者を志すのだろう?

聞いてみた。



「どうして冒険者なの?」


「鍛えないと駄目だと思った」


「冒険者として?」


「ううん。一個人として」


「どういうこと?」


「この世界はね、まだまだ野蛮なの。未開なの」


「?」


「個人的な武力が物を言う時代なの」


「なにかあったの?」


「ジルゴンでね、くだらないこと、悔しいことを一杯見た」


「・・・」


「オーウェン様はね、個人的に力があればもっと幅を利かせられるの。でもね、今のオーウェン様では難しいのよ」


「どんなところが?」


「たとえば騎士団。バリオス家の騎士団は王都で一番弱いの。強くしたいのだけど、素質のある人は武闘派の貴族の騎士団に入るの。もしバリオス家の騎士団で頭角を現す騎士が出てくると、引き抜かれるの。

 私もね、最初はあちこちでおちょくられていたの。でもね、あんまりにも非道いことを言われたから、ちょっと待ちなさいよって言ったのよ。そしたら絡んできたわ。 なんだか財前を思い出しちゃった」


「犯罪者だったのか!?」


「単なる貴族の息子」


「それで?」


「他の貴族の子が大勢見ている前で得意げに『決闘だ!』って大騒ぎしたから、乗ってやったわ」


「・・・」


「女が剣を抜いて決闘に応じるとは思っていなかったみたい。ビビってたわね」


「それで、相手は強かったの?」


「全然。ゴブリンより遥かに弱かった。一撃で剣をたたき落としてやったら泣いてたわ」


「それからね、個人的に強くならなきゃって思った。ソフィーさんに鍛えられたことを思い出してね、バリオス家の中庭を走りまくったわ」


「それでか。事務方ばかりやっていたにしては体力が落ちていないな、と思った。 これならすぐに次のステップに行けるな」



そうソフィーが言ってにやりと笑った。



◇ ◇ ◇ ◇



マキとウォーカーの面々の顔合わせ。


ウォルフガングとソフィーとマロン以外は初対面。

ジークフリード、クロエ、ルーシー、エマ、マロンの子供達を紹介。

ウチの使用人を紹介。


マキのことは、私の側室兼冒険者と紹介した。



「お前は貴族のくせに冒険者や商人を娶るなぁ」



そうウォルフガングに面白そうに言われる私。


マキの実力はE級冒険者。

ゴブリン、ホブゴブリン、スケルトンと1対1で戦って勝てる。

1対多になると駄目。


ダンジョンの中は、ダンジョンという生物の体内なので土が殆ど存在しない。

従って、ノームの短剣とノームの小盾とノームの首飾りの力を持ってしても、魔法の威力は落ちる。

石弾・石盾以外の、効率の良い魔法を憶えたい。


ということで、ジークフリードに砂を使った目潰しを教えて貰い、モノにした。

熱心に自主訓練を重ね、砂袋を常備するようになった。


もう一つくらい何か欲しい。防御系が欲しい。

そう思っていたら、自分で考えて密かに練習していた。



『サンドブラスト』



基本は目潰しと一緒なのだが、砂を高速で相手に叩き付ける。

攻撃なのか防御なのかわからない技だが、敵を怯ませることができる。

風魔法で操っていないので一直線に叩き付けるだけだ。


ソフィーから空中から撃てるようにしろ、と言われて訓練中。


無詠唱で、走りながらで、空中から、と。

がんばれ、マキ。



(ps)


マキが合流して真っ先に私に要望したのが 「シャワーを作れ」 だった。

言われてみればその通り。

鍛冶屋にシャワーヘッドの試作品を作らせてみた。上々だった。


ソフィーとルーシーに試して貰った。

尋常でないほど食いついてきた。


アンナを呼んで量産化の依頼をした。


ウチと娼館に真っ先に導入した。




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