128話 ウォーカーの現状
私とソフィーがイルアンとヒックスの間を行ったり来たりしている時は、いつも通りウォルフガングに後事を任せている。
ウォルフガングは私とソフィーが不在の間にジークフリードとクロエを鍛え上げ、B級冒険者に仕立てていた。
ルーシーもD級冒険者になっていた。
なんとウォーカーの現状は、
ウォルフガング B級冒険者(魔法剣士)(火)
ソフィー B級冒険者(魔術師・魔法剣士)(水)
ジークフリード B級冒険者(魔法剣士)(土)
クロエ B級冒険者(魔法剣士)(風)
ルーシー D級冒険者(戦闘斥候・魔法斥候)(水)
マロン 階級の外にいるが、実質D級冒険者(斥候)
私 (ビトー) E級冒険者(斥候・治癒士・賢者)
私だけ置いてけぼり。
「お前は貴族の端くれだろう。無理するな」
「このところ鍛錬をする時間が無かったからな。仕方なかろう。ダンジョンに潜れるだけで十分役に立っているし、対ゴースト戦ではお前の右に出る者はいない」
ウォルフガングとソフィーにそう言われてなだめられている。
マロンは3匹の子犬を産んだ。
女・女・男。
毛並みはマロンそっくりで、『ノワ』、『ネロ』、『カイ』と命名。
マロンに聞くと、今は足取りも覚束なく、コロコロして子犬そのものだが、成長するに従ってマロンのように木に登り、人の言葉を理解するようになるという。
一通り初等教育は済んでおり、今は人間との信頼関係を構築する時期にあたる。
なるべく一緒に遊び、一緒に仕事をすることが推奨される。
ということで、エマと一緒に育てることにした。
イルアンダンジョンの管理について。
ウォルフガング、ジークフリード、クロエ、ルーシーで中層階(3層~5層)の魔物の間引きに精を出していた。
ジークフリードとクロエとルーシーは3層のブルーディアー、4層のマミー、5層のオーガで徹底的に鍛え上げたと聞かされた。
「マミーの毒は受けなかったのですか?」
「受けた」
「どうしたんですか」
「お前からクリムゾンリザードの魔石を預かっていたからな。あれで解毒した」
「あれは解毒だけで体力回復はしなかったはずですが?」
「安全地帯でポーションで回復させた」
「なるほど。かなりスパルタンな訓練をされていたんですね」
「極めて楽なダンジョン攻略だが?」
「え・・・?」
「普通は毒を受けると解毒ポーションを使う。だがポーションはクソ高い。使いたいが使えない。大抵は中級ポーションで毒の回りを抑える。効果が現れるまでに時間が掛かるし、結局解毒ポーションが手に入らなければ、冒険者自体をあきらめざるを得なくなる」
「そういえばクロエがそんなことを言っていたような・・・」
「クリムゾンリザードの魔石はお前の『キュア』と同等の即効性がある。全冒険者垂涎のアイテムだ。A級冒険者でさえ所持している者は少ないのだぞ」
そんなに凄い魔石とは思わなかった。
6層で苦労して入手したかいがあったというものだ。
「ところでリッチはどうしました?」
「ジークフリードとクロエの合わせ技で封じた」
今度見せて貰うことにした。
そして逆にウォルフガングから問い合わせがあった。
「7層で深層階の魔物の気配がある」
「まさかスタンピード・・・」
「スタンピードでは無いと思う。だが、何が起きているのかわからない。アイシャ様に相談してくれないか」
「わかりました。 ところで4人で7層まで行けたのですか!?」
「ああ。極力戦闘は避けて、な。ダンジョン内では魔物に見つからないように移動した」
「そんなこと可能なのですか?」
「ハザードマップがあるからな。可能さ」
と言う訳で、またしても古森へ急行した。
まったく人使いが荒い。
挨拶もそこそこに、早速事情を話してアイシャの見解を聞いた。
「それはスタンピードではないわね」
「何だと思われますか?」
「8層の魔物が7層に進出しようとしている。それだけね」
「普通では起こらない現象ですよね?」
「6層、7層で魔物の手入れをしたでしょう? 6層、7層の魔物密度が下がったからよ」
「6層も7層も魔物はかなり凶悪でした」
「そうね。凶悪な分、もともと魔物密度は低いのよ」
「・・・」
「その顔ではわかっていないわね」
「はい」
「6層、7層の魔物は量より質(脅威度)で階層を支配する魔物なのよ。それをあなた方が減らしたから、一時的に6層、7層の魔物の勢力は落ちているの。
引き続き8層でも間引きを行えばバランスが取れていたのよ」
「あー 私とソフィーに呼び出しが掛かって、一時的にダンジョンの深層階の手入れを止めていたからですね」
「そう。でも放っておいても問題無いわよ。相性で言えば、8層の魔物は6層、7層の魔物を苦手とするから結局落ち着くわ」
「ただし・・・」
「生き残った魔物は、その分強力になるわね」
「ということですね。それも困りますね」
「今のうちに手入れをした方が良いでしょうね」
「8層の魔物ってなんですか?」
「巨人族よ」
巨人族って何だろう?
アイシャの前を辞するとヒックスの冒険者ギルドに立ち寄り、資料を見せて貰った。
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巨人族とは『トロール』『ゴーレム』『アルゴス』の総称
亜人族の中でも特に巨大化する魔物も該当する
『ミノタウロス』が該当する
種族:トロール
魔法:無し
特殊能力:無し
脅威度:B
種族:ゴーレム
魔法:無し
特殊能力:無し
脅威度:B
種族:アルゴス
魔法:無し
特殊能力:無し
脅威度:A
種族:ミノタウロス
魔法:無し
特殊能力:無し
脅威度:B
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いずれも特殊能力は無いが、脅威度はB~A。
超パワー系と言うことらしい。