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平凡勇者の異世界渡世  作者: 本沢吉田
10 風変わりな依頼主編
116/269

116話 家族が増える


このところ、私は異世界に飛ばされてから初めて落ち着いた時間を過ごしていた。


アイシャからの呼び出しもなく、公爵からの呼び出しもなく、この年は水龍の呪いもなく、穏やかに季節が移っていった。



ソフィーは徐々にダンジョンに潜らなくなり、とはいえ毎日の走りながらの素振りと氷魔法の射撃は欠かさず行っていた。



ルーシーの訓練は続いている。

ルーシーは自分が強くなった実感はある。

だがダンジョンに潜る度に自信を打ち砕かれる。

逆にウォーカーのメンバーの強さ、引き出しの多さに目を見張り、彼我の差を思い知らされ、しょげている。


そして、気合いを入れ直して訓練に取り組んでいる。



炎帝は時折イルアンに立ち寄る。

我々に挨拶し、ダンジョン3層で腕試しをして、また護衛クエストに戻っていく。



鉄壁は遂に3層の階層ボスの攻略に成功した。

だが槍士がブルーディアーと相打ちになり、前衛が欠けた。

そして『イルアンダンジョンの3層初攻略パーティ』の栄誉とともにイルアンを去った。




王都からマキが婚約したという連絡が来た。

相手は王都の伯爵家嫡男。


マキは女子爵の爵位を持ったまま嫁ぐ予定だという。

マキは貴族としての経験や常識が全く足りない上、側仕え、護衛騎士などもいないため、至急人選を行うらしい。



めでたいことである。

しかし身の危険が増えるだろうことが予想される。

しかも信用できる側近も(まだ)いないので、自分の身を自分で守らねばならない事態に遭遇しないとも限らない。

そこで「かつての冒険者仲間のウォーカーから」として、メッサーダンジョンの未踏破エリアで入手した『ノームの首飾り』を贈ることにした。


マグダレーナ様に確認したところ、個人名で贈るのは問題となる可能性があるが、グループ名で贈るのは問題無かろうとのこと。



『ノームの首飾り』

トパーズに似た美しい魔石の付いた首飾り

土魔法の効果UP

土魔法の魔力消費半減



◇ ◇ ◇ ◇



ソフィーのお腹が少し大きくなって、ダンジョンに潜らなくなった。

もっともっと大きくなるのかと思っていたがそうでもない。

ソフィー自体が大柄なので、目立たないだけなのかもしれない。



私はなるべくソフィーのそばにいてできる限りのことをしようとしたが、特に何かを頼まれる事も無かった。


料理・掃除・洗濯はマリアン以下、ハウスキーパー部隊が全てこなしてくれるので特に大変なことはない。


ソフィーは自分のことは全て自分でして、それでも手持ち無沙汰なのだろう。

出産の当日まで剣の素振りと水魔法の訓練と私へ冒険者ギルド経営の講義をしていた。




出産は夜始まった。

珍しくソフィーが夕食は要らないといい、様子が変だなと思っていたところ、ああ、そうかと気付いた。


すぐサマンサを呼ぶと、サマンサ、ミカエラ、メリンダが駆け付け、私は部屋の外に放り出された。


1時間後に出産。

入室を許可されて対面。


女児。健康。大柄。頭髪の色は薄い。

いかにもソフィーの娘らしい。


サマンサによると「初産なのにこんなに楽な出産は初めて」。


多分ソフィーの痛みに耐えるレベルが高すぎるのだと思う。




産後のドタバタが収まると、ソフィーはすぐに自分で赤子の面倒を見ようとしたが、サマンサに怒られた。



「あなたは野生動物ではありません。貴族の女性なのですから周りに任せなさい」



しゅんとするソフィー。

オロオロするだけで何をして良いかわからない私。



「ソフィー、何かして欲しいことは?」


「ない」


「肩揉むとか腰揉むとか?」


「剣を持ってきてくれ」


「持ってきてあげるけど、壁に掛けるからね」


「手元に・・・」


「駄目」



ソフィーにとって剣は冒険者の象徴であり、商人を断念した後の心の拠り所。

精神安定のために見るだけなら良いが、振るうのは駄目。


ウォーカーの面々やギルドの女性陣が駆け付け、お祝いを述べていく。

全員が壁に掛けられたロングソード・アクセルとショートソード・アクセルを見て、何とも言えない顔をして帰って行く。


サマンサに「私は何をすれば良いの?」と聞くと、


「男なんざ出産の時は酒場で祝杯を上げてるもんだ。邪魔だ」


と言われ、ソフィーの横にいることにした。




2日後、公爵と公爵夫人から祝いの手紙と品が届いた。

公爵からは、準男爵から男爵へ陞爵すると連絡が来た。


王都のマキから祝いの手紙と品が届く。

ヒックスのユミとレイから祝いの手紙と品が届く。


アンナは本人が来て、直接祝いの言葉を述べると共に、豪華な品々を持ってきた。



私は何故か切なくなってしまってソフィーに慰められていた。

しばらくソフィーと私と娘とマロンが一緒の寝室で寝た。




出産翌日にはソフィーは普通に動いていた。

本当に子を産んだのだろうか?

私が無理矢理椅子に座らせ、あれこれ世話を焼いた。

ソフィーに大名の気分を味わって貰った。



赤子の首が据わった後、真っ先にハーフォードへ出向いた。

ジークフリードとクロエとマロンの護衛付き。


公爵とマグダレーナ様へ挨拶と顔見せ。

貴族の身分証(ミスリル製)も更新して貰った。


そして公爵に名付け親になって貰った。


エマ(多才・博識を象徴。あなたの両親にあやかりますように)。



私、ソフィー、エマは、マグダレーナ様の側仕え&護衛騎士になったときに用意して頂いた部屋に宿泊した。


私は男爵になったので王家に引き抜かれる心配は無くなったが、ソフィーは引き続き引き抜きを警戒する必要がある。


ということで、公爵夫人の側仕え&護衛騎士は継続。



翌日ソフィーとエマとジークフリードとクロエとマロンはイルアンへ帰り、私はアンナの元に2日逗留してからイルアンへ戻った。




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