エルフの聖域編 4話授かりもの
ナセータは驚いた顔を見せる。
「えっ!?ネックレスって……………これ?」
ナセータは祈にネックレスを見せる。祈は頷きながら答える。
「そう!それ!」
ナセータはネックレスをじっと見つめ、口を開く。
「これはね、お母さんからもらったものなの……………」
「お母さん?」
祈は問う。それに対してナセータは頷く。
「うん。」
数年前 ナセータの家
「あっはは〜!」
笑顔で家を走り回る少女。ナセータだ。
「ほ~ら捕まえた。」
笑いながらナセータの肩に手を置く男性。ナセータの父、ソールドだ。
「あはは。捕まっちゃった〜」
ソールドの方を向きながらナセータが答える。
「ほらほら、もうご飯だから片付けして手洗ってきてちょうだい。」
のれんの奥からやってくるナセータと似た女性。ナセータの母シリカ。
『はぁ~い』
ナセータとソールドが同時に返事をする。
立ち上がったナセータがシリカの方により明るくきく。
「お母さん!お母さん!今日のご飯はなぁに?」
シリカが笑顔を見せ答える。
「今日はナセータの好きなハンバーグだよ〜!」
ナセータは目を輝かせ喋る。
「やった!やった〜!」
走って手洗い場に向かうナセータ。それを追いかけるソールド。そしてそんな2人を笑顔でシリカは見ていた。
「そんなに早く食べて〜。よく噛んで食べろよ?」
ソールドがナセータに言う。
「だって!だって美味しいんだもん!」
口にいっぱい詰め込みながらナセータが言う。
「そんなにたくさん食べてくれるなんて、お母さん嬉しいな~。ケーキも買ってあるから、ご飯のあとに食べようね。」
シリカが笑顔で言う。
「ほんとぉ?!やったぁ~!私チーズケーキがいい!」
「父さんはぁ〜」………………………………………
深夜
「……………だから…………………………やっぱり…いじょうぶよ……………」
シリカとソールドが小声で話している。
奥の部屋で寝ていたナセータは話し声で目が覚め、トイレに行くことにした。
「う~ん」
ナセータが目を擦りながら部屋に来た。
「あ、あらナセータ。どーしたの?トイレ?」
シリカが少し焦りながらきく。
「うん……………」
「そぉ〜か。じゃあ父さんと一緒に行くか?父さんもこれからお風呂に行くところだったんだよ。」
ソールドが言う。それに対してナセータは頷く。
「うん……………」
「じゃあ行くか〜」
ソールドはナセータと部屋を出ようとする。その時ソールドは後ろを振り返りシリカと頷きあった。
ガチャッ
ナセータがトイレを終え、個室から出てきたとき、シリカは家で一番大きな窓を見ていた。
「?、お母さん?」
「ッ!シリカ…………!」
ハッとしたような顔をし、ナセータに近寄り、問う。
「おトイレはもういいの?」
「うん」
ナセータは頷きながら答える。
「そっか。じゃあもう、寝ないと……………っ」
シリカが言い切る前にシリカの目から涙が出て来た。シリカは必死に目を手で押さえた。
「お母さん?大丈夫?」
「え、えぇ…大丈夫よ」
そうシリカは言い、ナセータを抱きしめた。
「ごめん。ごめんね。…………」
抱きしめられたナセータは不思議そうな顔をした。
「?お母さん?」
何も言わず抱きしめるシリカ。だが少しして、
「ナセータ。これをあげるわ。」
そう言って自分がつけていたネックレスをナセータに渡した。
「これ……………いつもお母さんがつけてる……………」
ナセータがネックレスをみながら言った。
「えぇそうよ。これはね、お母さんのお母さん、つまりナセータのおばあちゃんからお母さんがもらったの。代々私の方の家系で受け継がれているネックレスなの。次はあなたが持っておく番よ。」
ナセータは何も言わずにネックレスを見つめる。シリカはナセータの手を自分の手で包み口を開く。
「なくさないようにね。ほら、もう寝なさい。」
ナセータはシリカの顔を見て、ネックレスを持ち寝室の方へ走って行き、部屋を出る前に振り返りシリカに言う。
「おやすみなさい……………!お母さん………」
シリカは微笑み応えた。
「えぇ。おやすみ。ナセータ。」
「その次の日からお母さんは姿を消したの」
ナセータは下を向き、ネックレスをギュッと握りしめ続ける。
「ずっと会えてないの……………」
「…………………………」
祈はなんて声をかけるのが正解か分からなかった。だが、祈が声をかける前にナセータは祈に笑顔を見せ言った。
「ごめんね。こんな話して…」
「ナセータ……………」
ナセータを見つめる祈。祈が何かを言いかけたその時。
ドガンッ!
大きな音が聞こえる。
「っ!?なに!?」
祈が周りを見渡しながら言う。ナセータも周りを見渡す。
「っ!あれ!」
ナセータが指を差しながら祈に声をかける。祈はナセータの指の指す方向をみる。
「っ!?な、……………」
そこにいたのは背の高い獣人。大きなハンマーを振り回し叫び散らかしている。
「あいつを倒さないといけないってこと?」
ナセータが聞く。祈は唾を飲み込み、少し笑いながら答える。
「うん。そうみたいだね。戦闘スタートってとこかな!」