エルフの聖域編 2話何もできない〝わたし〟
女の子の家につき、案内された椅子に4人は座っていた。 直人は周りをキョロキョロと見渡し、女の子がいないことを確認し口を開く。
「なぁ、ついてきちまったけど良かったのか?」
里恵が答える。
「仕方ないじゃない。私達何も情報得てないんだらか」
祈と琉は何も言わない。
「なんのお話ですか?」
奥からのれんをよけ出てきた女の子。一人一人にお茶を出し女の子も椅子に座りお茶を飲む。祈が出されたお茶を見つめる。それに気づき女の子が
「アルグリーズという花のお茶なの。」
祈は女の子の方を見て、またお茶を見る。
「何か警戒をしているのね。大丈夫よわたしは何もしない、いや……………できないのほうが正しいかもね。」
祈はコップを掴み、中のお茶を飲む。
「…………………………」
それを何も言わずに見る女の子。祈は中のお茶を飲み干し言った。
「おいしい…!」
その言葉を聞いて少し嬉しそうにし女の子は祈の空のコップにまたお茶を注いだ。それを見て祈は言う。
「ありがとう」
にっこりと笑う女の子。それを見て祈も微笑む。
「みんなも飲んでみなよ。すごく美味しいよ。」
そう祈に言われ、最初に飲んだのは琉だった。
「ほんとだ。すごい美味しい。アルグリーズ?だったっけ?知らない花だな」
里恵と直人も同時に飲む。
「…………………………おい…しい」
里恵が言う。それに直人も頷く。女の子は口を開く。
「良かった、みなさんに美味しいと言ってもらえて。わたしはナセータ。この村、エスリー村の村長の娘なの。」
「村!?この規模で!?」
琉が驚き問う。
「えぇ。ここは神授の樹を中心に広がる村なの。エルフと人が共に過ごす、自然豊かで素敵な場所。聖域の管理人であるリータ様、村長であるわたしの父、ソールドをはじめとし、みんなが仲良く暮らしていた。
ですがある日、殺人ギルドという奴らがやってきて、村を荒らしたの。リータ様は操られ友達や村のみんなを何処かに連れていかれてしまった。お父さんがわたしだけでもと逃がしてくれた。この家には魔法がかかっているから見つけることは不可能。」
ナセータが自分のスカートをギュッと握りしめうつむく。
「今はわたし一人。孤独なの、あるのはたくさんの本だけ。本当であればね湖に入ってもこっちには来れないはずなの、リータ様が操られて魔法を解いてしまったから、人間界の人たちも巻き込んでしまっている。湖に落としているのはおそらく操られているわたしの友達。わたし、何もできなかったし、何もできてない……」
ナセータは涙を流す。すぐに手で涙を拭った。里恵が一つ疑問に思い口を開いた。
「一つ聞いてもいい?さっき、わたしは何もできないって言ってたよね?あれってどういう……………」
ナセータは答える。
「わたしはエルフだから魔法が使えるの。でも…………わたしだけ助けられて、お父さんたちを助けにいってない、何かわたし自身に魔法がかけられている訳でもないのに魔法を出すことが、何か行動をすることができなくなってしまったの…………」
4人は黙ってナセータを見た。なんと声をかければよいのかわからなかった、一人を除いて。
「ナセータちゃんは何かを行動することができないって、言ったけどさ、何かを行動できなければ俺たちを見つけ話しかけることはできなかったんじゃないかな?」
琉が言った。うつむいていたナセータが顔を上げ琉を見る。
「お父さんたちを助けたいって気持ちも、行動する勇気も、ナセータちゃんはちゃんともっていると思うよ。」
「琉……………さん…………」
ナセータはじっと琉を見つめる。
「わたしでもお父さんたちを助けることができるの?」
口角を上げ頷く琉。
「わたし、何かをすることができるの?」
「あぁ!ナセータちゃんはその行動力が、気持ちが、勇気がある!それに……………困ったら俺らに頼ることだってできるんだ。」
ナセータは大粒の涙を流し目を輝かせる。
「行きたい!助けに!わたし、頑張りたいの!」
祈はナセータを見て笑った。
「一緒に行こう。ナセータ。」
「うん!祈さん、琉さん、里恵さん、直人さん……………!」
里恵も直人も微笑む。
「あっ、そういえばなんで私達の名前を知っているの?」
里恵が言う。3人は確かにと顔を見合わせる。
「本にそう書いてあったの。やっぱりあの本の内容は現実だったの!」
ナセータは4人に本を見せる。〝未来書紀〟すごく分厚い本だった。だがナセータはその本をすべて暗記しているかのように迷わずページを開く。
「ここ!〝己のピンチを助けてくれるのは男女4人組の能力者。草薙祈、火神琉、青龍院里恵、玄武直人。この本、このページは代々受け継ぐために書き記したものである。エスリー村、村長。」
4人は目を見開く。
「なんで名前を知っているんだろう?」
里恵が言う。ナセータは言う。
「わからない。でも、お父さんは先代の村長、つまりわたしのご先祖様に未来透視の魔法を使える人がいたんじゃないかって、」
直人は口を開く。
「ま、詳しくわかんないならそれでいいんじゃね?オレ等が助けることに変わりはねぇしな」
祈も笑っていう。
「そうね。必ず助けよう。」
琉も頷く。ナセータが本を握りしめ琉の手をとる。琉がナセータを見るとナセータは琉を見て笑う。
「行こう。」