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体育祭編7話 体育祭

生徒席に帰ってきたいのりたちに対し数名が褒め沢山の質問をする。一番に話しかけたのは意外だがはじめだった。


「祈さん惜しかったね。あの緑のアンカーの子、結構速かったと思うのに、ゴールした時、祈さんがスタートした時よりも差が縮まってたよ。」

「え?そうだった?勝てなかったことが結構悔しくって差とかあんま気にしてなかったよ。」

「嫌でも本当に、あの子サッカー部の子でしょ?草薙くさなぎさん部活入っているわけでもないのによくあそこまで縮めたと思うよ。」


真司しんじも笑顔で褒める。それに対して祈はへへっと嬉しそうに微笑む。そんな気の抜けたような表情を見たりゅうも思わず微笑む。いつも見せる優しそうな表情だ。


「おい琉。そろそろいくぞ」

「あ、うん!」


直人なおとに呼ばれた琉は足早にその場を後にする。普段であれば祈に一声かけるはずだがその時は何も言わずに離れていく。それに気づいた祈は少し不思議がって口を開く。


「頑張ってね。」

「あ、う、うん。ありがと。」


ぎこちない返事。何かに動揺でもしているかのような琉は早く祈から離れたくて仕方がないようだ。それを察したのか祈は軽く微笑み流し目をして一や真司との会話を続けた。




***




直人のやつ、怒ってるかな。祈に手を引かれた時のアイツの不安そうな、悲しそうな顔が頭から離れない。まあ、無理もない。俺だって祈が直人の手を引いていったらあんな表情にでもなるだろう。好きな人が、別の男の手を引いていったんだから………


「ごめん、待たせた」

「珍しいなお前が待たせるなんて」

「はは、まぁね」

「………………………」


思ったよりも直人の反応はいつも通りで普通だった。気にしてないのだろうか、いやそんなはずはない。次の競技のために向かっている足がすごく重いように感じる。ちゃんと歩けているのか不安になるくらいに……。


「お前さ、そんなに気にしなくてもいいから!」

「…………え?」

「本当に分かりやすい!心配してくれるんならもうちょっとさりげない気遣いを_____」


そんなに顔に出ちゃってたか。全く意識してなかった。直人はいつも通りに軽い文句を言ってくる。そこで俺は気づいたんだ。


「わりぃ!一歩先に行っちゃったかもな!!」

「!」


直人コイツ相手に気なんか使う必要なかったなって。直人はまたいつものニカッとした笑顔を見せて


「なんだと〜!調子乗ってるとオレがすぐに追いついてやる!」

「ははっ!どんどん差つけちゃうよーだ!」


そうだ忘れてた。俺と直人は親友で、相棒で、恋敵ライバルだ。「遠慮なんていらないぜっ!」って言ってくれたんだった。多分これで気を使うっていうのは直人に対して失礼なんだ。






***






閉会式

「えー今回の優勝は______」


係の人が紙を見ながらマイクに向かって喋る。


「青団です!」


わぁッと会場が盛り上がる。祈は軽くガッツポーズをし、琉と里恵りえは表情が明るくなる。直人は「当たり前だろ」とでも言いたそうな表情で笑っている。


「それでは青団団長さんは前に出てきてください!」


「何かありますか?」

「そうですね、やっぱり最後の体育祭で優勝できたのはすっごく嬉しいです。青団のみんな本当にありがとう!最高だぜ!!」


また会場がわって盛り上がる。「団長サイコー!」とか、拍手なんかの色々な音が校庭に響きながら閉会式は進んでいった。




***




空は澄んでいて、賑やかさの中に少し静かさが混じる校庭。生徒で片付けをしている最中だ。


「やったな!優勝だよ優勝!」

晴輝はるき盛り上がりすぎ。」

「そういう祈だって顔が嬉しそうだけどな!」


晴輝と祈で話していると一が軽く文句を言ってくる。


「ちょっと話してる暇があったら手を動かしてよ」

「へっへーん!こっちのパイプはもう抜き終わってるもんねー!」

「じゃあ他のとこ手伝ってよ!」


祈達3人はテントの片付け。初めの頃と比べだいぶ仲良しになった3人は片付けの最中も笑顔が絶えない。すごく眩しい笑顔だ。

少し遠くの方では里恵がスピーカーを片付けている。運んできたスピーカーをテーブルに置き、祈達の方をみる。そんな里恵に小道具を持った琉と直人が近づき口を開く。


「なあ里恵。この道具どこに持ってけば_____」


里恵が2人の方を見ず、祈達の方ばかり見るので2人もつられてそちらを見る。


「私、能力者になる前から祈ちゃんのこと知ってたんだよね。」


急に話し始めた里恵にゆっくりと2人は首を動かす。


「噂とか、廊下でたまにすれ違ったりとか。その頃はなんていうか、噂とかも相まって不良とかそんな感じの子だと思ってたんだよね。でも、関わるようになって最初の頃は人見知りなのかなとか、あんま騒ぎたくないような子なのかなとかって思ってたんだけど、別に祈ちゃん、人見知りじゃなさそうだし、ああやって明るく騒いだりするの嫌がってたら嫌ってたりしなさそうなんだよね。むしろ、それが楽しそうで、好きなようにも見える。でも………人との関わりを、肯定的に見てないと思うんだよね。」

『…………………………』


琉と直人は無言のまま里恵を見て、その後祈を見る。祈の笑顔は明るく眩しくて、すごく楽しそうで。


「私、祈ちゃんのこと知りたいって思ったの。最近、特に……」

「………………。オレも、アイツのこと知りたい。」

「うん。俺も……。」




多くの人に影響を与えた体育祭だった。知りたいと思った人がいた。なりたいものがある人がいた。また明日から前のような変わらない日々が続いていく、だがそれは前までとは少し違う新しい日々に多分なっていくのだろう。

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