体育祭編 3話体育祭前日
私は自分の部屋で身支度をしながら考える。
あの初めての係会の日、飯田先輩、かっこよかったな。本気で自分の仕事、やりたいことに向き合ってて、やりたいことに向き合ってる、だったら天鬼先輩もか。
「………………………………」
なんか、最近はほんとに沢山の人と関わってるな。本当は、あんまり深く関わるのはできるだけしたくないけど………。
でもまぁ、これが私の本質なんだろうな。
私は壁にかけてある時計をチラリとみて、玄関に向かう。靴を履き、誰もいない部屋に向かって
「いってきます…………」
と、小さく呟いて玄関を後にした。
* * *
放課後 英語科教室
「天気も問題なさそうだが、障害物なんかの荷物は屋根のある校舎に置いておこう。」
『はーい!』
飯田先輩が全員に話す。
「ついに明日本番だな!」
「今からドキドキしてるよ!」
「オレ綱引きでる予定なんだけどさ__」
周りの生徒がガヤガヤと話し始める。飯田先輩は微笑み話す。
「みんな明日が本番で楽しみな気持ちは十分にわかるが、明日をいいものにするためにも、今から最終確認しに行くぞ!!」
ワァー!!って教室中が盛り上がる。どこにそんな要素があるんだか。
「…………………………」
まぁ、悪くないけど。
「………………………」
晴輝がすごく驚いた顔でこっちを見てくるけど、
「何?」
「いや、祈が微笑んだと思って、、」
「私をなんだと思ってるの?」
「いや、微笑んだのが驚いたっていうより、微笑み方にっていうか、なんていうか、」
曖昧な回答。何が言いたいのかよく分からないや。そう思っていると難しい顔をしていた晴輝がこちらを向いてニカッと笑って言った。
「その顔も好きだぜ!」
「……………………」
私は突然のことすぎて目を見開く。
「あー。晴輝くんがまた女の子たぶらかしてるー。」
「別にたぶらかしてねーよ!!」
「ほんとにぃー?」
「別にほんとのこと言っただけだろ!」
「あー。そのセリフもアウトでしょ!」
「なんでだよ!!」
晴輝と一は軽く言い合いを続ける。
「祈さん。晴輝はやめた方がいいと思いますよ。」
「なんてこというんだ!!失礼なやつめ!!!」
急に話を振られて少しびっくりし頬あたりに汗が垂れる。
「大丈夫だよ。晴輝のこと別に男の人として好きじゃないから…………!」
「なんか、それはそれでちょっと悲しいんだけど!」
私と一は軽く笑い、晴輝は軽く睨むと不満そうに口を開く。
「お前らひでぇー………」
晴輝がそんなことを言っている間に周りはゾロゾロと教室から出て外に移動している。
「私達もそろそろ行かないとね」
「そう、だね。」
* * *
数時間後 グラウンド
「ふぅ、とりあえず私達の仕事はこれで全部かな、?」
「そうだねー」
晴輝は相槌を打ちながら周りを見渡す。私もそれに釣られて周りを見る。
「!」
「青組ー!!いくぞー!!!!」
『おーー!!!!』
遠くの方にいる応援団だ。団演技の練習か………私も振りもう一回予習しとこうかな………。考え事をしてたら応援団から目を離してなかった。
「応援団も頑張ってるなー!」
「………………そうだね。」
青色のたすき掛けをし、同じ色の鉢巻をする。たすきは応援団の特権だ。
「あのなげーやつマジでかっけぇよなぁー!オレもしたい!!」
「じゃあ応援団やればよかったんじゃない?」
「やりたいって思った時にはもう立候補期間がすぎてたんだよー」
「それは残念。」
応援団もかなりの人数がいるが私は特に迷うことなく琉と直人を見つける。普段はあまり見せない真剣な表情。指の先までピンと伸びていて、すごい、全員が団結してるって感じ。男子の割合が多めだけどちらほら女子もいる。私と晴輝は応援団に釘付けになってしまい、作業なんて忘れてずっと練習をみていた。
「ちょっと二人ともー…………。」
『!!』
一が少し遠くから軽く走って呼びかける。
「応援団ばっか見てサボらないでよ………………。」
「別にサボってはねぇよ。仕事もちゃんとこなしたし。」
「じゃあこの障害物達、屋根の下に持って行って………!」
「うぃーすっ」
晴輝が軽く返す。
「もぉー。晴輝くんいい加減すぎ!」
「一応言っとくが応援団を先に見出したのは祈だからな!?」
「じゃあ祈さんも同罪!やること終わらせてから遊んでよぉ、!」
「あっはは、ごめんごめん!」
「どこに笑う要素があったのさ、、?!」
初めて会った時はずぅーっと晴輝の後ろにいた一とも、今はこんな風に会話できるようになったんだ。少しだけ感銘を受ける。
「そろそろ終わるところも多いだろうから、自分たちの仕事が終わったところから順次解散でいいぞ!!」
遠くの方から飯田先輩の声が聞こえてくる。姿は見えない、団演技の練習で太鼓を使っているところもあるのによく通る声だった。そんな声の大きさにも驚いたが、声だけで飯田先輩って分かるようになっているのにも驚きだった。
「んじゃ、この障害物、屋根の下に持ってってオレらは解散にするか!」
「うん。そうだね。明日は早いし。」
晴輝と一が話しているのに私は頷く。2人もそれを確認してそれぞれ運ぼうと障害物の近くへと移動した。
* * *
祈の部屋
こうやって、大きな行事が楽しみだって思うのは久しぶりだな。私はベットに寝っ転がりながら思う。去年は参加しなかったから私にとっては中学での初めての体育祭。それが余計に私を興奮させた。窓からはオレンジ色の光が差し込んでおり、私の目に差した。
「……………………」
私は目をぎゅっと瞑り、片腕で両目を隠した。数十秒ほどそんな体勢をキープしていたけれど私は片目から少しずつ目を開く。腕をどけ、両目をしっかりと開けた。腕を使わず、足でつけた勢いだけでベットから起き上がり、窓に近づく。6月上旬、18時59分。空は茜色に染まっていて、部屋にある時計の分針が1番上を指したと同時に少し遠くの広い学校からチャイムが聞こえた。耳を澄ませるとかすかに聞こえてくる。
「19時になりました。学園内に残っている生徒は速やかに下校しましょう。19時になりました。学園内に残っている生徒は速やかに下校しましょう。」
暁学園の放送。19時が最終下校時間だ。
私は窓の側を離れてまたベットにダイブする。夜ご飯何にしよう。寮でずっと一人暮らしをしていると流石に迷う。これが食べたいってリクエストなんかももらえないし。里恵とか、天鬼先輩はいつもどうしてるんだろう。聞いてみようかな……。私はまた腕を使わず起き上がる。スマホに手を伸ばし、里恵とのトーク画面を開く。えっと……。[夜ご飯何にする?]っと………。スマホを軽く放り投げようとした時、スマホからブッとなる。
[祈ちゃんから連絡なんて珍しい!!]
[私は今日は親子丼にするよー!]
[まあ、ギリギリまで作業してたからまだ部屋に付いてすらないんだけどね!笑]
返信はっや。実行委員は大変だな。19時ギリギリまで仕事してたなんて………。で、晩御飯は親子丼か……。私はそのままスマホで親子丼の作り方を調べる。
へぇ。結構簡単。
私は冷蔵庫まで行き材料があるか確認する。卵と、鶏肉と__。
[遅くまでお疲れ]
[私も親子丼にするよ。ありがと。]
よっし。えっと、確かまずは……。私は作業に取り掛かろうとキッチンへ向かおうとしたがすぐにブッと通知がなる。
[お役に立てたなら何より!]
[明日は頑張ろうね!!]
「……………………………」
こんなメッセージまで来るなんて思ってなかったから少しびっくりしたけど悪い気なんて全然しなかった。私はすぐに[もちろん]って打って送信ボタンを押した。




