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体育祭編 2話係委員

いのりちゃんが見えなくなるまで私は手を振り続ける。見えなくなった後も、少しの間祈ちゃんがいた場所を見つめる。特に意味はない。ただの癖だ。

ブッー

! ポケットに入れていたスマホの通知がなる。私はスマホを取り出し、きたメールの内容を確認した。






次の日、教室

私達はいつも通り祈ちゃんの机の周りに集まっている。私は席に座っている祈ちゃんの前に立ち、両手を合わせ懇願する。


「ほんっとぉーにお願い!!」

「…………………」


祈ちゃんはびっくりしている。目を普段より大きく開けて、私を見てくる。


「な、何で私が………」

「〜〜!お願いします!!」


私が何をここまでお願いしているのか、それは係委員の申し出だ。


「僕からも!お願い!草薙くさなぎさん!」

「!……………」


私と一緒にお願いしているのは私と同じく学級委員の桐山真司きりやましんじくん。


「僕の方でお願いできる人には全員お願いしたけど1人足りなくて……立候補者も誰もいないし………」


昨日の夜きた連絡は()()だ。私がここまでお願いできるメンバーなんてそんないないし……、直人なおとりゅうくんは応援団だし………、もう祈ちゃんしかいないんだよね。


「お願い、お願い!」

「僕もお願いできる友達ってそんな多くないから…一応あと1人のところまで集まれたけど………」

「……………わ、私に務まると思ってるの…?」

『…………………』


私と桐山くんは黙る。少し見つめあって同時に口を開く。


『思う!!』

「!?なんで!?」

「だって祈ちゃん器用だし!」

「うんうん。たまに草薙さんを見るけど、なんでもパパッとこなすタイプですごいなって思ってたんだ。」


うん。事実。祈ちゃんは何でも器用にこなす。約1年間関わってきてるから分かる。

祈ちゃんは相変わらず黙って少しおどおどしていたが、


「いいんじゃない?係委員。やってみたら?」

『!』


急に琉くんが喋り出した。隣では直人もうんうんと微笑みながら頷いている。なんで2人がこんなに祈ちゃんを推してくれるのかはわからないけど、ナイスすぎる!ここでお願いすればいけるかも!


「祈ちゃん!お願い!!」

「〜〜!…………ハァ……今回だけ特別だよ?」

『!!!』

「わぁ〜!!祈ちゃんありがとう!!大好きぃ〜!!」

「ありがとう!草薙さん!!」


私は祈ちゃんに抱きつき、桐山くんは祈ちゃんの手をとって上下にぶんぶんと振っている。


「あっははぁ〜…………」


祈ちゃんは少し困りながら呆れている感じがしたけどそんなことはどうでもいいくらい私は安心したのだ。






教室、放課後


私は教科書を机でトントンしながら揃える。確か里恵りえの話によると今日の放課後から係委員の打ち合わせがあるんだよね。そういえば他の係委員メンバー聞いてないけど誰なんだろ?桐山さんが集めたって言ってたし、私とはあんま関わったことない人だよね。そもそも私と関わってるメンバーが少ないけど………。私はそんなことを考えながら琉、里恵、直人、鈴仙さんあたりの顔を思い浮かべる。

行かなくちゃ。確か教室は___。私席を立ち上がり扉の方をくるりと向く。


「あー草薙、さん!」

「!」


話しかけられ、声の方を向くと男子生徒が2人立っていた。おどおどして後ろに隠れている長袖猫背の人と、少し緊張してそうなツンツン頭の人。えーっと、確か名前は……。私は必死に名前を思い出す。頭からつま先まで、目線を行き来させ考える。ツンツン頭の方が察してくれたのか口を開いた。


「あー。オレは日向晴輝ひゅうがはるき。こっちは木下一きのしたはじめ。おどおどしてて頼りなさそうだけど、ちょー運動神経いいから!」

「あ、えっと、私は草薙祈……えっと、2人が係委員メンバー?」

「そうそう。一緒に英語科教室まで行こうぜ。」

「あっ、英語科教室だったっけ?忘れちゃってて」

「あっはは!英語科!英語科!今さっき真司から聞いてるから大丈夫だと思うよ!」


真司……あぁ、桐山さんか。そんなことを考えながら私達は教室を出る。


「テカお前そろそろどけよ!笑」

「だっ、だってぇ〜……………!」


いい人たち、そうでよかった。木下さんは……人見知り?なのかな……。日向さんはちょっとチャラそう……制服着崩してるし……。でも学級委員の桐山さんといるってことは意外と真面目だったりするのかな……。でも直人も着崩してて学級委員と一緒にいるけど、真面目ではないからな…、いい奴ではあるけど。


「ひゅ、日向さんと、木下さんはなんで係委員を?」

『??』


2人は同時に振り返る。木下さんは長い髪の毛が顔にかかっててよく表情が見えない。


「なんで、かぁ〜。まぁ、1番の理由は真司に誘われたからだなぁ。真司(アイツ)いい奴なんすよ。オレ結構テストとか悪い点とっちゃうんすけどいっつも助けてくれて、1人でなんでも頑張っちゃうタイプだからほっとけないし、頼ってくれるのが嬉しくて、」

「うん……………そう、だね………真司くん、すごい……人だから。」


日向さんは困り眉で笑顔を見せながら話した。木下さんも、小声だった。でも2人とも多分、ううん。絶対、桐山さんが大事で大切で、特別なんだ。あたたかい………。なんか、いいな。


「てか日向さんとか全然呼び捨てしてもらって構いませんよ。下の名前で呼んでくれたっていいし!」

「これから多分………関わること、多くなる………し、」

「お!コイツがこんなこと言うなんてスッゲェ珍しぃんすよ!」

「ちょっと晴輝くんうるさい……。」


日向さんが木下さんと肩を組む。木下さんも口ではああ言ってるし、顔も嫌そうなのに、嫌がって、ない。


「ありがとう。晴輝、一。」

『!!』


晴輝はニシッと笑って、一は小さく微笑んだ。


「2人も私のこと下の名前で呼んでいいよ?敬語?も、全然いらないし!」

「まじ?じゃあ祈って呼ぶわ!!」

「祈……さん…。」


私は小さく笑う。こうやって、同年代のたくさんの人と関わるなんて、いつぶりだろう。ちょっと、ワクワクする。多分これがほんとの“私”なんだろう。みんなと関わること(こういうこと)が好きなんだろう。

私はそんことを考えながら英語科教室に向かって歩いていた。





ガラガラ

教室の扉を開ける。何名かはもう席についていて、近くの人と話している。前に立っていた司会っぽそうな高等部の3年生が笑顔で口を開く。


「あっ!え〜っと、その制服で赤い上履きだから……中等部の2年生であってる?」

「はい。」

「そっか!じゃあここの席に座ってね!」

「ありがとうございます。」

「いいや全然!みんな集まるまでは好きに話してていいからね!」

「はい……。」


私達は指定された席に座る。やっぱり人数がかなり多くなるからぎゅうぎゅうだ。えっと、3人ずつで、それが1学年(ひとがくねん)8クラスだから、3×8で24、それが中高あわせて6学年だから、24×6で…………144!?え、そんなにこの教室に押し込むの?無理じゃない……?

前で晴輝と一が話してる。少し小声だが席がかなり近いので聞こえてくる。


「なぁーなぁー、やっぱ高3の先輩ってカッケェな!」

「あぁー。……………まぁ、確かに………?」


やっぱ高校生って憧れるよな、天鬼あまき先輩も、来年は高校生か…。はやいなぁ、まぁ、まだ5月半ばだけど。


「祈もそう思わない!?」


急に目の前に晴輝が現れ私はびっくりする。てか、まつ毛長。近くで見ると女の子みたい。


「な、何が?」


晴輝は少しキョロキョロと見渡して手をチョイチョイとやった。私は晴輝の口の近くに耳をやり、晴輝は小声でいう。


「あの司会の先輩、イケメンだと思わない?」


私は横目でチラッと先輩を見る。

晴輝の口元から顔を遠ざけ口を開く。


「整った顔立ちをしてるね」

「タイプ?笑」

「恋愛とかよくわかんない」


うん。本当に分かんない。男子も女子も思うことは特に変わらない。…………“好き”なんて、多分思わない方がらく………懐かしい人陰を少し思い出しそう思う。


「ふぅ〜ん。ま、そのうちわかるんじゃね?」

「……………だといいね」


「はーい。集まったので会議を始めまーす!」

『!!』


司会の先輩が声を張り喋る。みんなガタバタと姿勢を整え、先輩の方を見る。


「まずは俺の自己紹介からいこうか。僕は今回、係委員会長になった高等部3年F組、飯田楼真いいだろうま。よろしくな!」

『おねがいしまーす!!』

「早速だけど、俺達係委員は決して表立おもてだって目立つような仕事をするわけではない。誰かから感謝されることも少ないだろう。そのくせ、変に教師や生徒から頼られたりな。」

『…………………………………』


みんなそれぞれ思うことがあるのだろう。確かにそうだろうな。私も、去年はあんま参加してないからなんともいえないけど、目立って行動をするのは応援団や実行委員だ。生徒から感謝とかされるのも応援団が多い。でも飯田先輩は淡々と話す。優しい表情、声色で。


「でも、俺たちは体育祭をやるにあたって必ず必要な人材だ。体育祭をうまく回せるかどうかを握っている。もちろん、握ってるのは俺たち“だけ”ではないけどな。

やりたくてここに来たわけではない人も少なからずいるだろう。でも俺は最後の体育祭、最高の物にしたい。それは“勝って最高の思いをした”ではなく、“体育祭自体が最高だった”、と高3の連中、後輩達にも思って欲しい、もちろん前者も大事ではある。できることなら最後だし勝ちたいよ。前者を叶えたい気持ちがつよかったら俺は応援団をやっているだろうな。

でも俺がいるのは係委員(ここ)だ。“体育祭”を最高の思い出にするために、お前ら協力してくれるか?」

『…………………………………………………』


飯田楼真(この人)は、すごいな。なんていうか、言葉では表せないけど、すごい………そう思わずにはいられないような人間だ。

ついていけるだろうか……こんなすごい人間、飯田楼真に……………。

おそらく、多くの人がそう思ったのだろう。しばらくの間この教室には重く気まずい空気が流れていた。だか多分それは数分。いや、数十秒だったと思う。


パチ、パチ、


ゆっくりと1人の人が拍手をし始めた。気になり後ろを振り返ると高3の先輩が立ち上がって微笑んでた。


「いやぁ。すごいね飯田くんは。オレ感動しちゃったよ!オレ勝つことに意味があるんだって思ってた、もちろん、大事ではあると思うけど………そっか、最後だもんな。オレも、誰が勝っても負けてもいい体育祭にしたい。そのためにオレが必要なら、全力で協力するぜ!!」


ニカッとその先輩は笑う。


「わ、私も先輩方と一緒に、い、いい体育祭にしたい、です!!」


同い年の女子生徒も立ち上がり声を上げる。その生徒をはじめとしてどんどん立ち上がり声を出し始める。


「オレも」

「僕……も」

「わたしもできることあるかもしれない……」


ワイワイとしてきた教室で晴輝に手を差し出される。後ろには一もいる。


「祈もやろうぜ!」


言われなくてもそのつもりだよって、まぁ、言わなくてもわかるか。


「うん!」


私は晴輝の手をとる。


「お前ら……………」


飯田先輩は涙を拭って、声を張り上げる。


「よっしゃあ!!全力で頑張るぞーー!!!!!」

『おぉーー!!!!!』

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