鏡の聖域編 4話鏡の聖域の歴史
「クレアドルーン…………………………」
里恵そう呟く。紅葉はそんな里恵をニコニコしながら見つめる。里恵はしばらく黙った後、口角を上げ口を開く。
「一般ギルド所属の青龍院里恵よ」
「…………………………」
紅葉は少しびっくりしていたがまたすぐに笑って言う。
「あっはは!知ってるよ!」
里恵も微笑む。だがすぐにハッとし、慌てながら口を開く。
「そうだ、祈ちゃん!」
「祈ちゃん?」
紅葉や、勝彦達が少し驚きながら里恵を見る。その様子に気付いた里恵が説明する。
「えっと、同じギルドの子で、学校……というかクラスも一緒で、昼休みに一緒にいたんだけど、私が聖域にきちゃったから……………」
『…………………………』
紅葉達は何も言わずに里恵を見る。里恵は少しまるまりながらまた口を開く。
「心配してるか…………………………も…………」
「……?里恵?」
里恵の様子が少し変になり、紅葉が問う。里恵がさっきとは少し違う、悲しそうな声で口を開く。
「心配…………してくれてるかな………?」
「…………………………里……恵………?」
『………………………………………』
少し気まずい空気が流れる。紅葉がなんて声をかけようか迷っているそのとき、
『きやぁぁぁぁぁぁ!!!
うおぉぉぉぉぉぉ!!!』
上の方から数人の叫び声が聞こえる。声的に女の子が1人、男の子が2人。里恵達は上をみあげる。
「っ!?みんな!?」
『えっ!?』
里恵が3人を見て驚き、その言葉をを聞いたクレアドルーンのみなは里恵を見る。そんな事をしているうちに3人は落ちてきた。
琉はスタッとかっこよく着地した。落ちてきた祈は駿にお姫様抱っこでキャッチされており、
「あ、ありがとうございます……、?」
「え、あ、いや、はい……」
みたいな会話をしている。直人は、この聖域が中央が空いているような建物みたいなものだったこともあり、下に落ちかけたのを勝彦や薫に腕などをつかまれていた。
「す゛み゛ま゛せ゛ん゛」
「あっはは〜〜、間一髪〜…」
祈が駿からおろしてもらった後里恵を見つける。
「里恵!」
「祈ちゃ_!」
祈が里恵に抱きつく。
「もぉ~…………心配したんだよ?」
「!………………うん………………ありがとう……………」
里恵は少し泣きそうになりながら答える。
「遅くなってごめんね……大丈夫だった?」
「たくっ、世話かけやがって…」
歩いてきた琉と直人が言う。里恵は2人を見て笑顔で頷く。
「うん。大丈夫…ごめんね、迷惑かけて…」
「全然気にしなくていいよ…!」
「オレは気にするけどな笑」
「もぉ~…!笑」
4人で笑い合う。そのとき紅葉が口を開く。
「ねぇ!その人たちってもしかして!」
「うん!私のギルドメンバー!」
「やっぱり!」
紅葉のテンションが上がる。駆け寄り祈の手を紅葉が握る。
「ねぇねぇ!もしかしてあなたが祈?中2?私と同い年!能力は何?それから__」
「!??!?」
祈はびっくりしている時、紅葉の後ろに数人が立つ。
「紅葉。またクセが出ているぞ。びっくりしているだろ?」
「えっと、あなたが祈ちゃん?紅葉ちゃんがごめんね?」
「ほんと、どっからそんなに質問と体力が出ているんだよ?」
勝彦、薫、駿が止めに入る。紅葉は目を3人にパチパチさせた後、祈に謝る。
「ごめんね!びっくりしちゃったよね!私は、紅葉。調査隊ギルド、クレアドルーンに所属している中学2年生!」
「…………………………わ、私は…祈、草薙祈。」
「!よろしくね!祈!」
祈は少し驚きながら紅葉と会話する。その様子を少しあきれながら見ていた勝彦が話しに、入る。
「驚かせてしまってすまないね。」
勝彦が話しはじめた瞬間全員が勝彦の方を見る。
「私は宮木勝彦。調査隊ギルド、クレアドルーンのギルド団長だ。ほら、君たちも…」
『!』
勝彦が薫と駿に合図する。
「私は木原薫よ。よろしくね。」
「僕は楓駿。」
駿が話し終わったあと、紅葉が笑顔で話し始める。
「私は、炎月紅葉!クレアドルーン所属の中学2年生!みんなの名前は?」
祈、琉、直人が顔を見合わせ祈が話し始める。
「草薙祈です。私達は、全員同い年、同じ学校の能力者なの。」
「火神琉です。よろしくね。」
「玄武直人。他のギルドに会うなんて始めてだな。」
勝彦は微笑みながら話し始める。
「そうか、全員紅葉と同い年……」
『…………………………』
「…………いい目をしているね」
『?』
「気にしなくていいさ」
勝彦が話し終わった後、琉がすぐに話し始める。
「あの、ここは…………」
「ここは鏡の聖域。地球の様々な鏡が聖域と繋がっているのさ。」
「ありとあらゆる、鏡……………」
次は祈が話し始める。
「もともとこんな感じだったんですか?」
「え?」
「小綺麗だけど、なんていうか、手入れされてない、廃れてる感じがして、暮らしているようなものも居ないし…………………………」
「それがわからないんだよ」
「え……?」
「殺人ギルドとの戦いはかなり歴史が長い、つまり聖域もそれなりの歴史があるといいことだ。ここで暮らしている生き物達は私たちで言う獣や妖怪。生物がいつからいるのかも分からない。聖域が最初からこうだったのか、私たちで言う、自然災害のようなものが起きてこうなったのか、あるいは……………」
「…………………………あるいは、なんですか?」
「もう殺人ギルドに襲われた後なのか…………」
『!!』
「……………………………………」
「……なんのために私達能力者がいるんですか?……助けられなかったら能力者の存在意義がないじゃないですか!?どうして……………」
祈は手で顔を伏せる。
「祈………………………」
琉は祈に声をかける。
「なんのために能力者が命をかけて戦っているのよ!聖域を助けるためでしょ!?じゃあ助けられなかったら能力者ってなんのためにいるの?なんのために能力が与えられたの?欲しくて手に入れた力じゃないからって…………………………簡単に放棄していいようなことじゃないでしょ!!?」
『………………………………………』
「はぁっはぁっ…………………………」
「祈…………………………」
琉が泣きながら息切れを起こす祈に肩を撫でながら優しく声をかけた。
「どれだけ頑張っても、最善を尽くしても、手に入らないものがあるんだよ。努力は必ず報われるとか言うけれど、その〝報われる〟が、本当に欲しいものとは限らないんだ。」
「はぁっ、で…でも……………!」
「祈…………………………」
「なんで助けられなかったの…………………………?」
『…………………………』
全員が祈の方を見ていた。里恵も直人も紅葉も薫も駿も、すこし気まずそうに何かをそれぞれ思っていた。そんななか勝彦はゆっくりと祈の方に歩き出し祈の身長に合わせてかがみ、口を開いた。
「祈くん。」
「!……勝彦…さん……………」
「すまなかった。」
「え?」
「能力者とはいえ、君はまだ子供だ。そんなに考えてしまうと思えず、軽率な発言をしてしまって申し訳ない。」
「そん、な……勝彦さんが謝ることじゃ……………!」
「君は、そう思って、言ってくれると思っていた。一つ聞かせてほしい。君がそのように涙を流すのは助けてやらなかった能力者への怒りか?それとも、助けられなかった自分への後悔か?はたまた別のものか…」
「後悔とは少し違う気がします。でもそれに、近い、というか……」
「ふむ。じゃあ君が気に病む必要もどこにもないだろ」
「……………え?」
「君は、まだ能力者になって、聖域をしって一年くらいだろう。この聖域を見つけたのは私が能力者になりたて、ざっと10年くらい前のことだ。10年前から鏡の聖域はこのような状態だった。君が気に病む必要なんてないんだ。」
「…………………………でも……」
「まず、こうなっているのが殺人ギルドのせいと確定している訳でもないしな!」
勝彦はハハッと笑う。祈は勝彦を見つめる。
「まあ、もしこの先。祈くんが聖域を救えなくって大丈夫だ。そのためにギルドメンバーや私たち他のギルドがいるんだからな!」
「…………………………」
「そうだよ祈ちゃん!大丈夫!」
里恵が口を開く。琉は微笑み、直人もニカッと笑う。祈は3人を少し見つめた後微笑んで言う。
「うん。…………ありがとう」
それをみていた紅葉は微笑んでボソッと呟く。
「いいメンバーだね……」
何かが聞こえた気がして薫が紅葉の方を見る。紅葉は微笑みながら祈たちをみている。その様子を見た薫は目線を紅葉から祈たちにむける。
少しの間無言が続く。その時、ガコン!!!という大きな音がした。全員が音のする方をみる。上から崩れた大きな残骸が薫に向かって落ちてくる。
「薫さん危ない!」
「わっ!」
駿が薫を押し、2人は床に座り込む。もう少しで下敷きになるところだった。
祈と紅葉は2人を見た後、上を見る。紅葉は少し睨んでいる。
「ドラゴン……!!」
紅葉が口を開く。
そこにいたのはドラゴン。紅葉にはそのドラゴンに見覚えがあった。里恵とあった最初らへんの時に出てきたドラゴン。紅葉は何も言わずにドラゴンを睨む。その様子を見た祈は口を開く。
「あのドラゴンってやっつけちゃってもいいやつ?」
「……………」
紅葉は勝彦の方を見る。勝彦は少し考え口を開く。
「この聖域は歴史が長い。私が初めて来たあの時からこのドラゴンがいた。他のドラゴンもいるのかと思っていた時期もあったがどうやらそうではないらしい。目的がわからずただ暴れているだけ、そろそろ楽にしてやれ。」
「………………つまり、やっちゃっていいってことですよね?」
祈が聞く。勝彦はゆっくりと頷く。
「じゃあ………………」
琉、里恵、直人が祈の近くに歩いて行く。
「ちゃっちゃっと終わらせちゃお」