エルフの聖域編 13話ナセータその2
「…………………………」
里恵は何も言わず悲しそうな顔をしながら映像を見続た。
「今の…ナセータの過去?」
里恵は唾を飲み込む。
(もし今見たものが本当なら、私は………………………)
里恵は目を瞑り胸に手をあてて考え、目を再び開ける。
「行かなきゃ…………ナセータのところへ…」
「…………………………」
ナセータは何も言わずに里恵を見つめる。目を里恵からそらしナセータは口を開く。
「見たのであればわかるでしょ?わたしはみんなが嫌い……………誰も私のこと…見てくれない……………」
ナセータは涙をこぼす。
「私は見てるよ。ナセータ」
「え……」
「見てる。ナセータのこと…私だけじゃない。祈ちゃんも琉くんも直人もナセータのこと見てる。」
「…………………………」
「ナセータが見てほしいのは私や直人達じゃないかもしれない、でもこれだけは知ってほしい。私達は、少なくとも私はナセータのこと嫌いじゃない!……………好きだよ…」
「っ…!…………………………」
ナセータは目を大きく開く。
「ずっと…寂しかった…………ずっと怖かった………………ずっと…………………………わたしのことを…!…………見てほしかった!」
里恵も目に涙をためながらナセータの手をとり口を開く。
「その気持ち、ちゃんと大事な人に伝えなよ……………」
「話は終わった?」
『!……………』
リータが口を開き5人が一斉にリータを見つめる。
「睨むことないじゃない?話が終わるのをちゃんと待っててあげたのよ?」
「えぇそうね。それに関しては礼を言うわ。どうもありがとう。」
「…………………………」
里恵の反応に対してリータは里恵を睨む。里恵もリータを見つめる。その隙にナセータはリータの後ろにまわりこむ。
「はああぁ!」
「っ!?」
バゴン!
大きな音がなる。ナセータは祈の近くに着地する。少し傷を受けたリータがナセータを見つめながら口を開く。
「無詠唱魔法なんて使えたのね……………おかげで死にかけたわよ…」
「お前は時間をくれたけどオレはあげねぇぜ!」
「なっ!」
後ろにまわりこんだ直人がナイフを複数投げる。リータはナイフをすべてよける。
「はぁ、…………数ありゃいいってもんじゃないわよ…!扱いがこれじゃあ意味がない!」
「ははっ」
「?…何がおかしいのよ…」
「いやぁ〜まんまと作戦に引っかかってくれて嬉しくって!」
「は?作戦?」
「あぁそうだよ。オレはもともとナイフをお前に当てるつもりなんてなかった」
「っ!まさか」
琉が直人の後ろから現れ銃をリータに向ける。
「琉!やっちゃって!」
「気が散るからちょっと静かにしてて」
「っ!」
リータが逃げようとする。しかしリータは足が動かせない。
「な、なんで…」
「フェリシーの作った魔法の砂なの。貰ったやつ持っておいてよかった。」
ナセータが小さな瓶をリータに見せながら言う。リータはナセータを睨む。
琉は高く跳び、目を細めながら狙いを定める。
(大丈夫。この距離ならいける…!)
琉が引き金を引こうとした時、リータが叫ぶ。
「ソールド!!!」
その瞬間ソールドがリータの目の前まで移動する。
「っ!?」
(だめ…このままじゃソールドさんに当たったちゃう。)
琉がバランスを少し崩した瞬間、リータからソールドを縛っているのと同じような縄がでてきて琉の首を絞める。
「あ゛がっ……」
琉は手に持っていた銃を落とす。
「っ…琉!」
祈が剣を抜いて助けに行こうとした瞬間リータが口を開く。
「動かない方がいいんじゃない?」
「?、………………………」
リータが琉を縛っている縄をきつくする。
「がっあ゛ぁ゛……………」
「っ!」
祈は動くのをやめた。リータはニヤリと笑う。
「そうだなぁ。ナセータ。」
「!……………なに?」
「この子。殺してほしくないよね?」
「!…もちろん、」
「じゃあ………………………」
全員がリータを見る。
「あなたを殺してあげる。」