エルフの聖域編 12話ナセータその1
「大っ嫌いって………」
祈が驚きながらつぶやく。ナセータはリータを睨んですぐに笑う。
「あっはは!リータ様わたしが演じてるって知ってたんだぁ。じゃあリータ様の前とかで演じる必要なかったんじゃん!」
ナセータは笑い、また続ける。
「あっはは…………」
声はだんだんと小さくなっていく。ナセータは俯き、少し時間がたったあと、鼻をすすり遠くの方を見てまた口を開く。
「ばっかみたい……………わたし…………」
祈が少し前にでてナセータに近づこうとしながら口を開く。
「ナセェ__」
「嘘なんかつかないでよ………」
祈が言い切る前に琉が喋る。下を向いていた琉は顔を上げ、目に少し涙をためながら普段より強い口調で喋る。
「みんなのことが嫌い?そんなの嘘だ!付き合いの短い俺ですら分かる!」
「っ!…………でもみんな!言うもの…!なんであの子なんだろう?、あの子が男だったらシリカさんは……って!みんな!みんな!お父さんも、フェリシーも、おじいちゃんも!ほんとうにみんなが好きなのは!生きててほしかったのは!っ……〜〜!……………………………………………………………お母さんであって、わたしじゃ……………ない……………」
『………………………………………』
ナセータは大粒の涙をこぼしながら息をきらしている。祈も、琉も、直人も、リータだって何も言わなかった。だが数十秒たったあと、琉は口を開く。
「でもナセータは____」
「わたしはっ!みんなのことが大事なのに、その人たちからいらないって思われて言われるわたしの何を分かってるの!?」
ナセータは顔を上げて琉を見る。また数十秒程沈黙が流れたが琉が優しく微笑みながらゆっくりと話し始める。
「嘘だよ。村人のことが嫌いなんて……。今自分で大事って言っちゃったしね。」
「………………………そう、だね。…………でもやっぱり時々思っちゃうんだ。………お母さんに会いに行きたいなって……」
ナセータは苦しそうな表情を見せ、琉から離れ戦闘態勢をとる。琉も追いかけようとするがすぐにナセータが魔法を唱え始める。
「ザ・ガーディアン・_________」
「!琉!離れて!!」
祈が大きな声で叫ぶ。
「ッ!間に合え!」
直人がナイフを投げる。
タッタッタッ
走る足音が奥から聞こえだし、高く飛び琉の前まで走る。
「____ライフ!!!!」
ナセータの出した槍が琉の前まできた時、誰かがバリアで槍を跳ね返した。
「ふぅ~。間に合ってよかった……!」
里恵が琉にニコッと笑顔を見せながら喋った。琉は腰をぬかし里恵を下から見上げる。
「…………………………」
「……お~い。全然喋んないけど、大丈夫?」
祈と直人がが小走りで琉と里恵の方までくる。
「大丈夫か!?琉!」
「里恵ほんとナイスタイミング…!それに、無事そうでほんとによかった。」
「まぁ〜ね〜♪」
里恵は祈と直人にテヘペロ♪っとウィンクを見せ、琉に手をだす。琉は里恵の手をとり立ち上がる。4人はナセータを何も言わずに見つめた。
『………………………………………』
「……………はぁっ………はぁっ…………………………」
里恵がナセータの方まで歩いてゆく。地べたに座り込んでいるナセータに視線を合わせようと里恵もしゃがむ。
「ナセータ。」
里恵の声を聞き顔をナセータが上げる。
「私別れた先で見たの。ナセータの過去のこと……」
「………っぇ…?」
数十分前
「いったぁ〜」
里恵が体をさすりながら立ち上がる。里恵はまわりを見渡す。
「これ……………」
里恵は壁に手を添える。
「鏡?」
里恵はまた、まわりを見渡す。
「!!……………っ!」
鏡が急に光だし、里恵は目を瞑る。
「オギャー!オギャー!」
「はぁっ……………はぁっ……………」
「?」
声が聞こえ里恵は目を開ける。
「っ!うわぁ!」
鏡に映像が映し出されている。鏡に映っているのは赤ん坊と若い男性と女性。
「これ……………もしかしてナセータ?」
「っ!」
また鏡が光だし里恵は目を瞑る。里恵は目をゆっくりとあけ、また映し出されている映像を見る。ベッドに横たわって、苦しそうな若い女性。赤ん坊を抱いて心配そうに女性を見つめる男性。それから医者らしき人物。
「はぁ…ふぅ…………………………」
「シリカ、大丈夫か…………」
「あぅっ」
「…………………………ナセータ…」
「出産の体への負担がかなり大きいようです。多分もう二度と………………………」
「そんな、それじゃあ!」
里恵の背中の方の鏡の映像が変わる。里恵は振り向きまた映像を見つめる。優しそうな表情をする女性と幼い女の子。
「ナセータ…」
「ん〜?」
「今日はお母さんと一緒にクッキーを焼こっか」
「クッキー!?うん!」
里恵はまた振りかえる。幼い女の子と男の子。それから大人のエルフ達。
「ナセータ。今日は何作る?」
「今日はね。お城!わたしとフェリシーのお城!」
「可哀想に……シリカさん。もうすぐでしょ?」
「本当に。シリカさんよくしてくれてたから悲しいわ。」
「あの子が男の子で生まれてくればよかったのに…」
「時期村長は誰になるのかしら…」
「フェリシーくんじゃない?村長の家系の血を継いでるし…………」
「…………………………」
「……………」
「ナセータ。あっちの砂場で遊ぼ!」
里恵が驚きながら映像を見続ける。次にうつったのは車庫で話しているナセータとおじいさん。
「お母さんはいつ帰ってくると思う?」
「そうだなぁ。…………………………ナセータちゃん。もう一度お母さんに会いたいか?」
「……………うん。もう一度。一緒にご飯とか食べたい。」
「…………………………。よし!そんなナセータちゃんにはこの本をあげよう。」
「“未来書記”?なぁに?この本…」
「これはな君のご先祖さん達がいつか使う時がくるからとわしに託した本なのじゃよ。「いつかその時がきたらその時の村長家系の人に渡してくれ」ってな。」
「ふぅ~ん」
里恵がまた振りかえる。夜。カーテンのしまっまた部屋でお酒を飲む男性とそれをチラ見するナセータ。
「シリカ……っ!…………………………」
「…………………………」
ナセータはしゃがみ下を向く。“未来書記”。この本が目に入り夜通しベッドで本を読み続ける。
里恵はまわりを見渡す。また夜で真っ暗な部屋でベッドに寝っ転がっているナセータ。
「みんな。ほんとにうまく隠せてるって思ってるのかな……………」
天井をみていたナセータは横を向き、目を閉じる。
「ばっかみたい……………ほんとうに……」
また少しナセータが目を開け口を開く。
「み~んなだいっきらい…………………………」




