燃え尽きた(作者が)
地面が、揺れた。この星もろともが動かされるかのような揺れ。僕はその場で【辿嶺翼】を発動させて、崩れかけの家の中に戻ろうとした。しかし、さっき喉を潰されていた明の細腕が僕を抱きしめる。
「行っても、多分もうダメだよ。あの揺れは酷かったから。...でも、神すら凌駕する力があれば...」
思念に耽った明。なんだかんだで初めて、明が仕事している気がする。ただ、そんな失礼なことを考えても伝わらないほどに明の思考は深いところまで沈んでいるのか、何か呟くごとに言葉が速くなっていっている気がする。
「空はダメ天の怒りが降り注ぐからでも陸も海でも変わらないダンジョンもおそらくは...ぁ。良いこと思いついた」
手をポンと打った明は、僕の方を見つめて、言った。
「『人類魔滅計画』、なんてどうだい?」
「...えー、どうも。たまに隕石が降る地からこんにちは、澪です」
「流石にここまでくると大変だねっ。でも、こんなふうにっ!隕石を切るのが楽しい明だよっ!」
【隕石、うちに降って家亡くなった...。】
【まあ、最後の最後でも配信見ている俺たちもなかなかだけどな】
「ふふ、そうだねっ。まあ、今日は〈人間にして人間じゃないもの〉計画を実行しようと思うんだよっ!」
嬉しそうにいう明を撫でる。配信の方もタガが外れたのか、登録者130人程度の僕の動画でも投げ銭が入る。まあ、今回のが成功すれば、だけど。
「まず大前提として、神がいるということを信じてください。あと、語られるような良い神なんかじゃないです。自衛のために世界をぶっ壊すような邪神みたいなもんです」
【ふぇ?】
【ついに厨二病に...】
「違いますよ!隕石が降ってくるのはそれの前段階です。人類の殲滅のための、前段階」
「ここにおいて人類とは、『スキルを所有する"人類"』を指します。つまり、スキルを剥奪すれば問題ないということです。ちょっと父親に実験台になってもらったんですが、隕石が多く降るここで試して見たら父には当たりませんし砕けたものも当たりませんでした」
「まあ、隕石がグニャって軌道変えたからねっ。私たちはそもそも人じゃないし」
【ああ、そういえばイグジストなんちゃらだったな...。】
「まあ、そういうことです。もしくはこれを強行する主神を殺せば良いんですが...その主神が誰かわからない以上、こういう消去的手段しか取れず...
【ダンジョン壊せば良いんじゃないのか?例えば、近くのダンジョンを壊してラスボス出すとか...】
なるほど。確かにSSSランクの魔物が複数存在しているあそこのボスなら神様もいそうですね。じゃ、頭に取り付けて...よし!明、レッツゴー!」
「おー!」
ダンジョンは、いつもの暗い感じではなく蛍光色に光るコケに覆われてイメージが大きく変わっていた。
ダメージ系トラップも多く配備され、いつもよりも凶悪になっている。そんなところを超えて、おそらく最終区に当たる873区へ全力で飛翔する。明を捉えて全力で飛び続けるのはなかなかにきついけど、意外と問題ないようだ。
切削メインで、真下に飛んでいく。ある程度すると、これ以上削れないところまで来た。
「えー、〈電磁加速砲〉でぶっ飛ばしますね。【機神の砲塔】、【魔神の華弾】、兵種〈大口径電磁加速砲〉、砲塔へ魔力収斂。...完了。斉射まで、残り30」
キュィィィンと、普通でないような音が鳴る。直線上にできた距離はおよそ3km。できたレールガンの弾丸の口径は765mm、砲塔は2700m。予想される初速は10200m毎秒。おそらく貫通できるだろう。
「...チェック」
放出する。トリガを引いた2秒後、弾丸が放たれ...黒い壁を貫通した。そして。
『いったぁぁぁ!?』
そんな悲鳴が、上がった。
『もう、何すんだよ!こちとら人間の処理に忙しいのに!...ぁ。えっと...初めまして...かな?』
「かな、じゃないんですが。死んでもらって良いですか?」
『よくないわ!そもそも、なんでこのクリフォトが露出してるんだよ!折角神の意向で作ったとってもすごいところになる予定だったのに!守護者のブラックドラゴンとかフェンリルとかもいなくなってるし!』
...ものっすごい聞いたことがある。さらに言えば、その能力を持っている気もする。
『え!?君がやったの!?...ああでも、擬似的とはいえこちらの領域に来てるし...』
何かをモゴモゴと言う『神』に、僕は冷徹に照準する。魔伐スキルの全部をエネルギーにして、一発限りの【必滅の魔弾】を作り出す。
心臓に照準すると、しばらく待機。多分そのうちこっちに何かを聞いてくるだろうし。
『ねえ、神になる気は
「毛頭ありません」
容赦なく引き金を引く。『神』が血を吐き、消滅した。
《...あー、えと。蒼月澪は、〈神殺し〉になりました。おめでとう。...殺されたのがアナウンスになって、それを聞くって結構キツくないかな!?ああでも、まあ【必滅の魔弾】を作れたのは凄いね。取り敢えずは...お疲れ様?ああ、あと主神の力は君にあげるから、全人類およびダンジョンは好きに使えるからね。それに隕石を降らせるのもないし...ま、がんばれ!》
...この主神め...!
そう思いながらも僕は全人類からスキルを剥奪し、ダンジョンを消し去った。