人外への転生
《草田 剛久の存在消滅確認》
《草田 剛久のスキルを〈世界の意志〉に返上》
《〈存在せざる者〉の新たな存在、『蒼月澪』を〈世界の意志〉に確認...認証されました》
《〈存在せざる者〉として蒼月澪を構築...並びに、スキルの再選定...終了》
《草田 剛久と蒼月澪の記憶及び思考同調...同調率93%。代替案として、欠損部の記憶を蒼月澪の記憶として補填...終了》
《続けて、身体設定...終了》
《思考パターン「〈世界の意志〉発覚」確率0.0000000002%...正常閾値内》
《擬似〈存在せざる者〉として、蒼月澪の思考補助ユニット〈碧屋 明〉を追加作成...終了。覚醒まで、あと5秒》
「ふうぅぅぅっっっっくぁぁぁあああっつぅ!!!」
「わぁっ!?澪くん!?」
僕の目が自然に開いた瞬間、僕はそんな言葉を発していた。僕を抱き締めていたルカが驚いて手を離す。
場所はやっぱりうちの地下。多分、僕が女として生きるっていう宣言をしてから大して時間はたっていないんだと思う。いやぁ、なんだか走馬灯を見ていた気がするけど生還できたから良かった。
「そうだねぇ!私も、こんなに可愛い娘と一緒にいれて嬉しいよっ!」
その言葉と共に、後ろから抱きつかれた。敵襲か!?...ま、敵なんているわけないけど。
「そうだよっ!私は敵じゃなくて、君の思考補助ユニットさ!」
「...で?君は僕が復活する時に困らないように作られた〈存在せざる者〉みたいなものだと」
「多分ねっ。〈世界の意志〉って言う、なんか神さんがえいやこいや言ってるのに作られたのが私さっ!よろしくね!」
「...ふぅん?で、名「碧屋 明だよっ!」明か。なんで言葉にアクセントが多いの?」
その言葉に明は一瞬悩むそぶりを見せたけど、
「細かいことはわかんない!私を作った神さんだって万能じゃぁないってことだね!」
笑顔で言った。笑顔が眩しい。あと可愛い。
「冗談じゃぁない!私は見てるだけでいいのさ!百合百合な関係は真っ平ごめん!」
「...( ゜д゜)」
思わず顔が顔文字みたいになった。危ない危ない。
「...んー、でもまあ?思考補助ユニットとしてはなるべく上位者の選択に沿わにゃならんし...ま、私にどぉしても甘えたいってんなら私に甘えりゃいいさ!ウェルカムだよ!...って、いきなり飛び込むんだ」
名の通り緑の長髪を持つ明の長身に突っ込む。もともと僕の背は背は高かったけど、性転換の際に縮んだらしい。残念だ。
「私だって残念さ。男前な澪さまの姿も見てみたかった気もすんだけどねっ!」
なんか惚れちゃいそう。明をみてるとドキドキする。
「...わ、私が好きなのかい?ちょっと、それは困る...///」
あ、照れてる。もしかして、僕の思考を読んでるのかな?...って、思考補助ユニットって言ってたしそうなのかも。
立ち直った明は、僕に指をビシッと向けた!そして高らかに言う!
「蒼月澪さま、カネを払って検査してみるといい!きぃっと、たぁんまり変わってることが山ほどあるさ!」
...まぁ、確かに。普通ならそうなるよね。
「む?普通なら、ってなんさね?その先は思考しないようにするなんて、澪さまも悪いお方さ」
ああ、やっぱり思考読んでる。なら、思考で会話できそう。
「いやね?うちに、能力どころか種族とかレベルとか能力の細かいのとか、測れる機械があるんだよね。それで測ればいいんじゃないかなって」
「...なぁるほど!だからさっき『普通なら』って考えてたのか!さすが澪さま、略してさす澪!」
「わあ、なんか嬉しくなーい」
とか言いつつ、僕は地上に戻った。ルカは寝るとかなんとかで、下にいたままだった。
「...なんだ?澪、今日は肉取ってきたと思ったら女体化か。大方、ルカにホラゲーやらされたなー?」
「あってるけどあってないかな。あ、精密検査機貸してくんない?」
「ん?まあいいけど...何かあったか?」
「まあ、ちょっとね。能力の代償を支払わなくて良くなったというか...。」
「へぇ、そりゃすごいな」
上に行って、居間には父さんがいた。うちの左横にある『草田商店』(商店とは言うけど、半ば便利屋みたいなところもある)オーナー、兼土日にのみ開く『Cafe Kusada』オーナーの草田 武人だ。毎回思うけど、受け継いだ漢字はなんで「武」から「剛」に変わったんだろう。謎だ。読みが「たけ」とか?
「今すぐ貸して欲しいのさっ!この通り、頼むよっ」
明が飛び出してきて、父さんに頭を下げた。父さんは意外そうな顔をして、
「ありゃ、この人は澪の配信してる姿と似てるなぁ。ドッキリか何かか?」
「ドッキリじゃないさ!私は私、碧屋 明としてしっかり生きてるのさ!」
その言葉に、明が心外そうに眉を寄せて言った。ちょっとだけ怒ってるのが口調から感じられる。
「怒ってないさ!私は、怒るなんてそんな不合理なことはしないよっ!」
ナウ、なんだけどなあ。
「...ま、貸すのはわかった。ちょっと出してくるから、待ってろ」
父さんはそういうと、家を出て左へ行った。大方、隣から出してくるんだと思う。
「ほれ、これが精密検査機だ。スキルは可視スキル、不可視スキル、魔伐スキルの全部がレベルと一緒に見られて、レベルと性能、性別に種族が見られる。じゃ、えっと、明さん?精密検査機の電極を貼ってやってくれ。裸じゃないとできないから、俺はちょっと出てる」
「りょうかい!さあ、服をはだけさせるのさ!」
とか言いつつ、明は僕の服をしっかりと脱がせて行く。服の下が肌着一枚だったことに一瞬顔を険しくしたけど、一つのため息で許してくれた。
そして冷たくてぺたぺたする電極みたいなのを僕の体に貼って行く。背中に3箇所、お腹に2箇所、胸に5箇所、首の左右に1箇所ずつ、おでこに1個、太ももの裏に1個ずつ、鼠径部のやや上側に3箇所。全部で18箇所に電極が貼られた。
「ちょぉっとくすぐったくて変になるかもだけど、落ち着いてやればいいさ!」
5分ご。
「ぅん...ひゅぁっ!?」
電極が一斉に剥がされ、明に抱きしめられた。
「やっぱり思った通りさ!騙されたと思って、現実を受け入れな!」
明が出してきた紙には以下のことが書いてあった。
名称:蒼月澪
性別:女
年齢:9歳
種族:〈存在せざる者〉
Lv.1
STR:560
AGI:560
VIT:560
DEX:560
INT:560
Magic points:計測不可
生来スキル:〈辿嶺翼〉Lv.Ⅰ〈聖蒼剣〉Lv.Ⅰ〈魔力収斂〉Lv.X〈破壊神の如く〉Lv.Ⅰ〈全射必中〉Lv.X
魔伐スキル:〈神龍の息吹〉Lv.Ⅰ〈神狼の加護〉Lv.Ⅰ〈魔神の華弾〉Lv.Ⅰ〈屍神の絶唱〉Lv.Ⅰ〈忘却の魔滅〉Lv.X
追加能力:〈創造の神子〉Lv.X
「...なんじゃこりゃぁぁあ!?」
「あ、ついでに私のも出てきたねっ!」
名称:碧屋 明
性別:女
年齢:16歳
種族:擬似〈存在せざる者〉/思考補助ユニット
Lv.1
STR:560
AGI:560
VIT:540
DEX:540
INT:570
Magic Points:計測不可
スキル:なし
追加能力:〈主人に愛を、敵に雷を〉Lv.X〈主人の右腕〉Lv.X
「...しぃっかり、丸裸にされちった。ってか、私は澪さまに尽くすのがスキルでも決まってるんだね!」
「...真っ白に燃え尽きたような顔してどうした?すっかり髪色も蒼銀になって」
僕は燃え尽きた。身体中からぷすぷすと煙が出て、今にも崩れ去りそうな精神状況だ。
「だったら私を頼ればいいよっ!多少ならぎゅってしてあげれるからねっ!」
「ぎゅー」
「そ、そういうことじゃないんだよっ///」
「女同士、か...。昔、母さんもそんな時期があったなぁ...。」
僕と、僕にギュッとされて照れている明を見て父さんが言う。僕はお姉ちゃんに甘えるような感じなんだけどなぁ...。まあ、姉なんていなかったけど。
「...明ちゃん、澪くんは私のだから。だから手を離して」
「離して、って言われても私は澪さまの僕だから...。澪さまが自分の意思で離れたいってされない限り私はこのままだよっ?」
「...澪くんのバカ...。」
なんでか侮辱された。妹よ、どうしたのだ。...というかいつの間に?
でもまあ、せっかくきてくれたことだし。僕は明に回していた腕を放して、ルカに寄っていく。
「ぎゅー」
「...!澪くんっ!」
「わっ!?」
ぎゅってすると、抱きしめ返された。しかも結構力が強い。
「瑠依さん、澪さまを放せっ!」
そう言って明が無理やり救出してくれなければ、脂肪の塊である双丘によって窒息死してたかもしれない。窒息死はわからないけど、少なくとも窒息しかけたしね。
窒息しかけたせいで大きい胸に恐怖を覚えた僕は、胸があんまりない明に抱きつく。
「ちょっ!?澪さま!?」
明が驚いていたけど、だからといって抱きつくのをやめるわけにはいかない。でもまぁ、後ろからの視線が痛いし...いっちょ、正当化しよっかな。
「明がさっき助けてくれたから、それのお礼だよ。僕が助けを必要としている時に助けてくれたら、明は僕にお願いしていいよ」
「...お願い?どういうことさね?」
「たとえば、抱きしめてほしいとか、撫でて欲しいとか。明が決めていいよ?」
「!?じゃ、じゃあ...その...」
「なに?」
「...や、やっぱりなんでもないよっ!」
「...?そっか」
なんだか、その時は明の白皙の顔が赤くなっているように思えた。なんでだろ?
蛇足程度に説明。
草田 剛久ステータス
Lv.74
STR:222
AGI:222
VIT:222
DEX:222
INT:222
Magic Points:?(計測されなかった)
生来スキル:〈ンソケ〝キッ〉Lv.Ⅺ〈堕落の蒼剣〉Lv.Ⅶ〈闇夜の翅棘〉Lv.Ⅷ
魔伐スキル:〈覇龍の吐息〉Lv.Ⅳ〈神狼の爪〉Lv.Ⅲ〈魔王の弾幕〉Lv.Ⅴ〈屍軍の歌唱〉Lv.Ⅹ(10)〈忘却の集魔〉Lv.X(正確には、こいつはやってない)
...ってな感じで、母体に対して非常に強いです。
辿嶺翼:闇夜の翅棘の上位互換。魔力消費なしで棘翼を最低3対召喚する。魔力消費によって、最大35対まで増やせる。翅棘は一枚の棘翼に1200枚ある(翅棘:300枚)。一枚一枚に必中が付与されていて、何枚かに重ねることで属性付与可能。もちろん飛行もできる。
聖蒼剣:堕落の蒼剣の上位互換。蒼月澪と共に作り出された剣、〈蒼剣クラディレンス〉を魔力量によって伸ばす。最大14700m。電離圏まで伸ばせる。大きくすることもできる。最大で60mまでだが、威力は絶大。
魔力収斂:新スキル。魔力によって物質を創造できる能力、魔力を収斂させ〈神器〉と呼ばれる武器の模造品を作成する能力、魔力のこもった物体を相手に必中させる能力がある。最後のやつだけはンソケ〝キッから引き継いだのだと思われる。
神龍の息吹:神龍のブレスを出す。
神狼の加護:フェンリルを呼び出したり、魔力に大きな耐性を得る。
魔神の華弾:魔力のこもった弾丸を生成し、保持できる。射出機構があれば活躍できそうだが...?
屍神の絶唱:敵にレジスト不可の毒、腐敗、魅了、隷属、忠誠効果を与える。解除可能(部分的な解除も可能)
忘却の魔滅:魔物を自動的に召喚する。
創造の神子:魔力構造のある物質を創造できる。つまり、魔力さえあれば戦艦さえ創造可能。
主人に愛を、敵に雷を:〈主人〉へ与えられる致死攻撃を自らを身代わりとして防ぐ。また、敵対者に対する攻撃能力が80%増加。
主人の右腕:〈主人〉及び自らの『叛逆』を可能とする。