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~動き出した影~

学校の七不思議を追って行くと、異世界への扉が開かれた。

奥には、暗く奇妙な部屋があった……。

主人公とヒロインは、その部屋が、現実の誰かの部屋だと推測する。

そして、その人物を追って行くが。


 健斗を誰もいない教室に呼び出された。

「何か(よう)?」

 ユメはにやりと笑った。

「な、何だよ」

 健斗は教室に隅に追いやられた。

「わたし、楽しいことを見つけたのよ」

(いや)な予感しかしない……」

(なに)か、聞きなさいよ」ユメは健斗を(にら)みつけた。

 ユメは健斗を(ゆか)に押し(たお)した。

「わたしの命令は絶対なの!」

 健斗は背中を打って(うめ)いた。

「あなた、言ってたわよね。わたしを守るって。それに、私はこう言ったわ。あなたは、きっとすごいことをしでかしてくれるって?」

 首をふった。「忘れた……」

「やめてよね」ユメはにやりと笑った「あなたは、わたしの命令にしたがえばいいの。それの意味するところは、わたしの望む場所に連れて行けって意味なの!」

 丁度そのとき、廊下を数人の生徒が通りかかった。

 まずい状況だ。健斗は押し倒され、上には、ユメが馬乗りになっている。

 通りかかった生徒は、(あわ)てて走り去った。

「絶対、誤解されたな」

「わたし、気にしない」

「ぼくは気になる……」

「とにかく、今夜、午後の九時に、校門のまえに集合よ」

 健斗は(うめ)いた。「まさか、もう一度、行くのか!?」

「必要なことだもの」

「勘弁してくれ」

 ユメは健斗のネクタイを引っ張り上げた。

「わたしの命令は、絶対なの」

 ユメは立ち上がると、立ち去った。

 健斗は、ゆっくり起き上がると、吐息を()らした。







 その日の、午後九時。

「じゃあ、行ってみましょう」

 二人は、三階にある非常階段の先から、異世界へと通じる(あな)に入った。

「本当に来ちゃったわね」

 健斗は頷いた。「帰るときは、どうしたらいいんだろう」

「以前は、目覚めたら自室にいたのよね」

「時間がたつと戻れるって事?」

「きっとそうよ。そうに違いないわ」ユメは頷いた。

 二人は、(きら)びやかな遊園地を抜けると、その先にある真っ暗な部屋にやって来た。

「やっと辿りつた」

「まえと、同じ光景だ。黒く塗りつぶされた部屋が広がっている!」

「本当にこれだけなのかしら?」

「この先に、まだ(なに)かあると思っているの?」

「考えすぎよね」

 健斗は、壁に張られた、小説の応募要項(おうぼようこう)を見た。「部屋の人物は、小説家に興味があったのかな?」

「住人の存在が気なる」ユメは懐中電灯で、部屋を照らした。「これは、私の勝手な想像だけど、現実世界での誰かの部屋なのかも」

「突然だな」

「ここは、異世界よ。現実から隔離された世界なのに、誰かの部屋が存在しているなんて変よ。これって、異常な光景だわ」ユメは首を傾げた。「考えたのには、理由がある。だってここの部屋には、誰かが住んでいるが気配がまるでないの。ここには、部屋だけがこつ然と存在している感じがするのよ」

「じゃあ、なぜ部屋がある?」

「それを調べるのよ」

 健斗は部屋を眺めて、手がかりを探した。部屋のすみに、黒く塗りつぶされ、生徒手帳が落ちていた。中には、顔写真があり、黒く()りつぶされている。表紙には、学校の紋章がプリントされている。「なぜこんなものが……?」

 ユメは微笑(ほほえ)んだ。「私の推理は、あながち間違っていないかもね」

「手帳を見る限り、同じ学校の生徒みたいだ」

「だとしたら、なぜ、彼、or彼女だったのかしらね」

 健斗は部屋をもう一度見渡した。

「部屋に、天井から()るされたロープと、壁に()られた応募要項がある」

「住人の趣味趣向かな」

「きっとそうよ」ユメは言い切った。「この部屋を見てよ」

「部屋が、黒く塗りつぶされて、気味が悪い……」

「わたしの直感によれば、部屋の人物の人物の深層心理が映しだされているのかも」

「どいう事?」健斗は尋ねた。

「現実にある本来の部屋は、黒く()りつぶされてもいないし、天上から首つり用のロープが()るされたりしてはいないのかも」

 健斗は手を打った。「なるほどな。ここは、その人物の深層心理が現れた世界。だから、現実では、ただの部屋だったりしても、異常な部屋にみえたりしたのか」健斗は、頷いた。「だとしたら、この黒い部屋の住人の心は、そうとう心がボロボロなはずだ」

「心配よね」ユメは、頷いた。「壁に()られた、応募要項の紙。きっと、現実の世界では、人生に行き詰っているんのよ」

「そう考えると、この光景に納得がいく」

「手がかりはこのくらいみたいね」

「もう、ここに用意はなさそうだ」

「あと、もう少しだけ」ユメは部屋全体を見渡した。

 床に、家族写真。……両親のかおは()りつぶされ、本人の顔も見えない。

「もういいわよね」

 健斗は(きびす)を返した。

 突然、扉が閉ざされた。

 ユメは体を硬直(こうちょく)させた。

「何かいる!」

 健斗は、咄嗟(とっさ)にユメを(かば)って、まえに立った。

「何か襲ってくるわ!」

 二人は身構えた。

 次の瞬間、部屋全体にノック音が(ひび)いた。

「怖い……!」

 健斗はユメをぎゅっと包み込んだ。

「大丈夫」

 暗闇あから影が現れた。その手には、刃物が光った。

「今すぐ逃げないと」

 ユメは叫んだ。「なぜ、こんなものが襲ってくるの!」

 健斗は叫び返した。

「この部屋に侵入した僕たちとは、異物だと思って排除(はいじょ)しようとしている!」

「嫌よ」ユメは健斗の(そで)を握った。

「言ったじゃないか」健斗は声を上げた。「ここは、この人物にとって深層心理。そこに勝手にしたぼくたちは、侵入者でしかない。ここで、勝手に動き回るぼくたちを、目障りだと感じたに違いない!」

 持っていた懐中電灯が点滅した。一瞬、暗闇になる。

 健斗は気配を探った。

 視界の先に、影が動いた。

 刃物が、(にぶ)く光った。

「襲ってくるわ!」

 もう一度、懐中電灯の光が点滅(てんめつ)し、光が消えた。

「穴よ、出口が見えたわ!」ユメは指さした

「どこだ!?」健斗は目を()らした。

「ほらあそこ」ユメは壁際(かべぎわ)にある|《・》()()()()|》《・》を指差した。

「きみから先へ、入れ」

 健斗はユメを守るように後に立った。

「あなたも早く」

 穴に入った。

 影が二人のあとを追た。

 振り返ると、影が(せま)ってきている。

「急げ」

 ユメは暗い穴の中を()って進んだ。

 二人はとにかく、暗い穴の中を進んだ。穴は、一本道で奥に向かって()びている。

 健斗は、途中、衣服を()いで、迫り来る(かげ)から身を守った。

 突然、赤黒(あかぐろ)い水が流れ出した。

「何よこれ!?」ユメが悲鳴を上げた。

「いいから、前に進んで!」

「でも、気持ち悪いわ」

 健斗は足元を流れるものを見た。血のようだった。

 ユメは、そのまま直進した。

 突然、背後から、赤黒い水が流れだし、二人を押し流した。

 二人は、暗い穴の底へ流されて行った。



 翌日。学校。

「うん。本当に、帰還できてよかった」

 ユメは自信満々に頷いた。「当然よ。帰って来られなかったら、私たち失踪したことになっちゃうものね。それに、突然私がいなくなったら、わたしのファンが泣くわ」

 健斗は無視して(そら)の向こうを見た。

 やがてチャイムが鳴って、昼休みとなった。

「さ、行きましょう」

 ユメは、屋上の壁のさきにあった異世界と、現実とのつながりを探すため、奔走(ほんそう)した。まずユメが向かったのは、上級生の校舎だった。それから、学校中を探し回って、あの部屋と関係がありそうな人物の聞き込みをした。フットワークは軽く、生徒会にまで向かって、名簿を入手した。

 そして、三名の生徒が選ばれた。

 理由につては、壁に応募要項があったことから、小説家を目指している者が怪しいと睨んだ。

 選ばれた生徒の中には、文芸部の生徒が二人混じっている。

「あなたたち三人に、質問よ」ユメは慇懃(いんぎん)に言った。

 健斗は四人のやり取りを見守った。

「この中に、自殺を考えている人はいる?」

 三人は首をふった。

 健斗は肩をすくめた。突然、見知らぬ人物から呼び出しを受け、呼び出された部屋で自殺願望はあるかと問われて、頷くものはいない。

「なら、質問を変えるわ」ユメは、三人に小説家を目指す理由を尋ねた。

 三人は、それぞれ目的を語った。

 一人は、作家になりたかったから。

 一人は、野心のため。

 最後の一人は、ただ書くのが好きで、べつに小説にかになりたいと思った訳ではないと語った。

 結局、誰が目的の人物か分からぬまま昼休みは終わった。




 帰り際。

「どうして、見つからなかったのかしら」

 健斗は肩をすくめた。

「そんなに簡単に見つかるもんじゃないさ」

「嫌よ」ユメは睨んだ。「わたしは、さっさと解決して、真相を突き止めたいのよ」

 ユメは鞄を持つと、颯爽(さっそう)と下校した。

 健斗はゆっくり立ち上がると、教室を出た。

「あの」少女は言った。

 健斗はその女を見た。目鼻顔立ちは整っている。童顔で、目がぱっちりしているイン場を受けた。「どうしたの?」

 少女は名を言った。それから、自分たちが探している人物について、知っている事があると言った。

 健斗は非常階段の辺りまで移動すると、事情を聴いた。彼女によれば、その人物は斎藤(さいとう)みほと言う人物で、今回の騒動に関係しているらしい。

「なぜ、その人物だと思ったの?」

「あなたたちが学校中を回って、人探しをしているのは有名でしたから」

「理由を教えて?」

 紗希は頷いた。。

「同じクラスメイトなんです。あなたたちの話を聞いてから、様子が変だったので」

「なるほど」健斗は頷いた。「もう一度、名前を聞いても?」

花咲(はなさき)です。紗希(さき)と言います」

「可愛らしい苗字だね」

 肩をすくめた。「祖父が田舎(いなか)出身ですので、その名残りらしくて」

「なるほど」

「よければ、案内しましょうか?」

 健斗は、頷いた。ユメはいなかったが、真相を確認するため、先に一人で確認しておくことにする。彼女の提案で、隣のクラスに向かった。

 その人物は、帰り支度をしていた。

 健斗が話しかけると、その人物を逃げ出した。

 二人は、追いかけたが、彼女を見失ってしまった。




 翌日。

「なるほどね」ユメはにやりと笑った。

 健斗は、彼女に伝えたのを後悔した。

 ユメは走り出した。

ここまで、お付き合い有り難うございます。

三日おきくらいに投稿してきます。

よろしくお願いします☆

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