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7/20

~予兆~

異世界から帰還した二人。

異世界では、奇怪な遊園地と、真っ暗な部屋を見た。

あれは一体何だったのか?


現実に帰還し、クラスメイト達と出会う。

そこで、クラスメイト達とたちと会話し、新たな章への幕開けを描く。


~ここまでのあらすじ~

両親の都合で、叔父(おじ)のいえに引っ越してきた主人公。

少し変わった少女、七夕(たなばた)ユメと出会う。彼女は変っている。出会ってすぐ、クラスメイト達のまえで制服を脱ぎ捨てるという、蛮行(ばんこう)を行った。

そんな彼女の提案で、深夜の学校に忍び込むことになる。

そこで、異世界へ通じる(とびら)が開かれる。

扉の先では、遊園地、黒く()りつぶされて不気味な部屋を発見した。これらは、一体、何なんなのか。疑問が渦巻く。だが、目覚めると自室へ帰還していた。

……驚きの中、その日、叔父(おじ)の店を手伝う労働(ろうどう)が待っていた。

店では実際に、商品の販売(はんばい)を行い、小遣い、五千円をゲットする。

そして、翌日、学校へ向かうの主人公であった~。





 月曜日。

「あんた、昨日何していたの!?」

 健斗は学校の机の上に自分の荷物を置いた。

七夕(たなばた)か」

「何よ、人の名前を適当に呼んで。私には、ユメと言うちゃんとした名前があるんだからね」

「そうだった」

「いいわよ。友達の(あかし)として、ユメと呼んでいいわよ」

「ありがとう。そう言えば、週末はどうしてた?」

 ユメは肩をすくめた。「あなたこそ」

 健斗は家の手伝いをしていたと伝えた。

「何度も会おうとしたのよ」

「そうなの?」

「普通、そうでしょう!?」ユメは(にら)んだ。「深夜の学校であんなスペクタルな体験したら、誰かに話したくたくなるものでしょう、普通!」

「まあ、確かに」

 ユメは吐息を()らした。

「あなたもだいぶ変ね」

「そうかな」

「そうでしょ」ユメは肩をすくめた。「そもそもわたしと仲良くなろうなんて男子、なかなかいなし」

「美人に見える!」

「わたしには、()()のモの字もないのよ」

「そうかな。可愛いと思うけど」

 佐々木がやって来た。

「おい。お前たち、ずいぶん仲良さそうだな」

「ただのお(おしゃべ)りよ」

 健斗は佐々木を見た。彼は、このクラスで初めて会話した男子だ。新聞部に所属していて、情報通(じょうほうつう)で通っている。

「何か(よう)か?」

 佐々木は、健斗を教室の(はし)まで連れだした。

「おまえたち、どういう関係だ!?」

「何のことだよ」

「あの、変人と仲がよさそうに見える」

「変人はひどいよ」

「あいつ笑っていたぞ。いいか! あいつは、変わり者で、クラスから浮いた存在として扱われている。知っているな? あいつが、小学生の時にやらかしたえエピソードを?」

「まあ」

「いちおう説明しておくが、深夜の学校に忍び込んだり、警察署の保管庫にまで忍び込んだ女だぞ。分かるな? ヤバい女なんだ。その事は、このクラス、いや学年全体も知っている。だから、取扱注意(とりあつかいちゅうい)の女なんだよ」佐々木は深呼吸した。「それなのに、一体どうやって、あの女と会話している? そもそも、どうやって仲良くなったんだ?」

「一緒に出掛けて」

 佐々木は目を見開いた。「まさか、デートしたのか!?」

「二人で()()()()、という意味でなら」

 佐々木は、天を(あお)いだ。

「お前と言う男は、罪深(つみぶか)い奴だ! あの女は、変わり者ということさえのぞけば、その美貌(びろう)は、学年……いや、全国区だぞ」

 健斗はユメを見た。

「まあ、確かに目鼻立ちは、整っているな」

「き、貴様! あの美貌(びろう)を見てそれだけか!?」

「付き合いたいのか?」

 佐々木は床に手を突いた。「断じて違う」

「だったら」

 佐々木は大きく息を吸った。「俺が言いたいのは、あの女とどうやって仲良くなかったのかだ。そもそも、貴様に言っておかなければならい。あの女は見てくれがいいのは、分かっているな?」

 健斗は頷いた。

「となれば、分かるだろう。あの女はモテた」

「モテなかったって、聞いてるけど?」

「断じてあり得ん。まず、この学校に入学した当時、彼女はもともと有名人だった。分かるよな。学校に忍び込んだり、警察署に忍び込んだすれば、悪い意味で有名人だ。そんな(うわさ)の中、この学校に入学した。それはもう、すごかった。他校もふくめ、彼女を見ようと生徒が集まってきた。そして、驚いた。なぜなら、やばいと噂されていた女を見てきたら、イスに座っているのは、ルックス最強の美少女だったからだ。あまりの衝撃に、ファンクラブも出来たほどだった」

「それはすごい」

 佐々木は頷いた。「だが、それも長くは続かなかった。しょせんルックスだけで、中身がいちゃった子となれば、ファンは人はすぐに去って行った」

「そのあとは?」

「彼女は、一人ぼっぴちに戻った」佐々木は考え込んだ。「それから、彼女はよけいに人を寄せ付けなくなった。もともと、誰かと行動をとものするような奴じゃなかった。ファンがいた頃も、誰一人として心を開かなかったし、近寄ることさえ、許さなかった。だけど問題はここからだ。お前があらわ得た瞬間、彼女は変った。俺にもよく分からんが、おまえにだけは心を開き、いっしょに行動し、まして当時から一度も見せなかった、笑顔を見せている。その中心にはお前がいる。おれは新聞部だ。この事態に、なぜなのか気になるのは当然だろ?」

 健斗は頷いた。

「何が起こったのか真相を教えてくれ」

 健斗は、答えなかった。

「どうした?」

「ぼくにも分からない」

「そんなはずない」佐々木は言った。「お前たち、すでにそういう関係なのか!?」

 健斗は断固として首をふった。

「それはない」

 ユメが大股(おおまた)でやって来た。

「二人で何の話しているの?」

 健斗は肩をすくめた。

「な、何でもない」佐々木は言った。

「佐々木くん?」ユメは佐々木を見た。「私のことを話してなかった?」

 健斗は事情を説明した。

「わたしたち、そんな不純な関係じゃないわ」

「本当かな?」

「それでさっきから、わたしの、顔や、身体(からだ)を見つめていたのね」

「違う。それは間違っている……」

「黙りなさい!」ユメは佐々木を(にら)んだ。

(ばつ)を与えるわ」」

「ばばばばばば、ばちゅぅ!?」

 ユメは大きく拳を振り上げた。

「痛くしないから、安心して」

 佐々木は震え出した。

 ユメは、天高く(こぶし)を振り上げたまま動きを止めた。

「罪状は、わたしの過去について話したことや、わたしの顔や、体を()め回すように見た(ばつ)よ」

「本当にぶたないよな……?」

 ユメは、その(こぶし)を振りかざした。佐々木は、頭を強打され(たお)れた。そして、ゴロゴロと床を転がった。

 クラスの目撃者たちは、顔を引きつらせて硬直(こうちょく)した。

「本当にやるとは!?」健斗は慌ててユメの前に立った。

「彼が悪いんだよ」

「本当にそうなのか?」

「うそを吐くから。だって、わたしの顔や身体(からだ)を見ていたのは事実よ」

「目に入ったくらいだ」

「だからって、私の過去を話すのを許可した覚えはないわ」ユメは、拳を振り上げた。

「何しているの?」健斗は一歩後退した。

「きみも、同罪だよ。どうして私の許可もなく、話しを聞いたりしたの?」」

 健斗はヒア汗を流した。「何となく」

「勝手に、乙女(おとめ)の秘密を知っていいことにならないわ」

「ごめん」

「きみも、天誅(てんちゅう)だわ!」

 健斗は改めてユメを見た。

 ナイスバディだ。顔は美しく、豊満な胸に、細いウエスト……。

 初めて気づいた。

「その目はなに?」

「きみを誤解していた」

 ユメは拳を振りおろそうとして止めた。「弁解(べんかい)のチャンスをあげる」

「いいのか?」

「その……慈悲(じひ)よ、じひ」

「ありがたい」

「調子に乗らないでよ」

「もちんだ。大切にする」

「それで、どうして私の過去の話しなんか?」

 健斗は言葉を選んだ。間違えれば、命はない。

「やっぱり、ただの興味本位だ」健斗は言い放った。「ただ何となく、きみの過去の話を聞き、ついでに聞いたあとで、ルックスにも興味を持ってしまった!」

「はあ、それどういう事?」

「そのままの意味だ。君はナイスバディ―だ!」

 ユメは拳を固めた。「つまり、開き直ったという事ね」

 健斗は大げさに首肯した。

「最大の侮辱だわ!」

「それが現実だ。ぼくは、君のすばらしさに今気づいた」

「死ぬ覚悟はできているでしょうね」ユメは(うで)まくりした。

 健斗は、制服のシャツを脱ぎ捨てた。

「打ち込んで来い」

「は!? 何言ってんのよ」ユメは絶句した。「わたしを(ためす)すつもり!?」

 健斗は言った。「ぼくは言ったはずだ。君と出会ったときに、きみを守ると。自分でもその言葉の意味はよく分からない。でも、覚悟を決めたという意味において、ぼくは、君にその覚悟を示そう」

「意味不明だわ」

 健斗は大きく気を吸った。「打って来い!」

「あなたバカよ」

 健斗は頷いた。

「そんなに私のパンチは甘くないわよ」

「受けて立つ」

 ユメは大きく振りかぶると、クラス中が見守る中、正拳(せいけん)を構えた。

「私、空手をやっていたの!」

 クラスの連中は、ユメが一方的に制裁(せいさい)を加えようとしていると思っている。

拝見(はいけん)!」

 ユメは、正拳を放った。それは、見事、健斗の腹に命中した。

 健斗は、足を震わせながら耐え抜いた。

 脚は、小鹿のように(ふる)えている。

()()いたぞ」

「やるじゃないの」ユメは額の汗をぬぐった。

「これが、ぼくの覚悟だ」

「意味不明だけど、あなたのこと認めてあげなくちゃね」

 倒れていた、佐々木は起き上がった。

「あの、ボクは?」

「あなたは許されていないわ」

「慈悲を」

 ユメは考えた。「いいわ。あなた私のパシリになりなさい」

「パシリとは?」

「使いパシリの略よ。私が、お腹がすいたら、焼きそばパンを買ってきなさい。そして、のどが乾いたと言ったら、冷たいコーヒー牛乳を買ってきなさい。つまり、わたしの奴隷(どれい)よ」

「断ることは?」

「許さないわ。もし、断ったら、私の身体を舐め回すように見ていたと、体育の(のう)ミソが筋肉で出来ている、鮫島(さめじま)先生に言いつけるから」

「ご慈悲を」

 ユメは慇懃(いんぎん)に言った。「昇格(しょうかく)を考えるわ。最初は、パシリ。平民。課長、部長。そして、副隊長(ふくたいちょう)のように、地位を格上げしてあげる」

「がんばります」佐々木は握手(あくしゅ)を求めた。

「その手は?」

「仲直りの印にと……」

「ぐぎゃああっッ」

 健斗は震えた。「一点の狂いもない、素早い目つぶし!」

「気安く、わたしの間合いに入り込まないで」

 佐々木はごろごろと床を転げ回った。

「お前は、悪魔だ」

 そして、佐々木は、涙目で起き上がった。「何でも、言ってください。ぼくの取り柄は、情報収集や、足が使えますので」

「いいわ。期待しているからね、佐々木君(いぬ)

「頑張ります」佐々木は疑問を口にした。「さ、最後に、聞いてもいい?」

「何よ」ユメは髪を払った。

「どうして、健斗だけそんなにとくべつなの?」

 ユメはもう一度、髪を払った。「特別じゃないわ」

「そうかな? そう見えるけど」

「彼は、わたしという存在を、特別にしてくれるかもしれない」

「どいうこと?」

「出会った瞬間に、何かを感じたのよ」

 佐々木は首を傾げた。

 ユメは笑う。「彼は、きっと何かを引き起こしてくれるはずよ」

「どういう意味?」

 健斗は肩をすくめた。

「これから凄いことが起こるわよ」

 健斗はなぜか身震(みぶる)いした。

「やっぱり、いっちゃっていますね」

 ユメは、何事もなかったかのように、席に座った。

 そして、ホームルームが始まっていく。


ここまでお付き合い下さりありがとうございます。

数日おきに投稿してきます。


よろしくお願います☆

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