~予兆~
異世界から帰還した二人。
異世界では、奇怪な遊園地と、真っ暗な部屋を見た。
あれは一体何だったのか?
現実に帰還し、クラスメイト達と出会う。
そこで、クラスメイト達とたちと会話し、新たな章への幕開けを描く。
~ここまでのあらすじ~
両親の都合で、叔父のいえに引っ越してきた主人公。
少し変わった少女、七夕ユメと出会う。彼女は変っている。出会ってすぐ、クラスメイト達のまえで制服を脱ぎ捨てるという、蛮行を行った。
そんな彼女の提案で、深夜の学校に忍び込むことになる。
そこで、異世界へ通じる扉が開かれる。
扉の先では、遊園地、黒く塗りつぶされて不気味な部屋を発見した。これらは、一体、何なんなのか。疑問が渦巻く。だが、目覚めると自室へ帰還していた。
……驚きの中、その日、叔父の店を手伝う労働が待っていた。
店では実際に、商品の販売を行い、小遣い、五千円をゲットする。
そして、翌日、学校へ向かうの主人公であった~。
月曜日。
「あんた、昨日何していたの!?」
健斗は学校の机の上に自分の荷物を置いた。
「七夕か」
「何よ、人の名前を適当に呼んで。私には、ユメと言うちゃんとした名前があるんだからね」
「そうだった」
「いいわよ。友達の証として、ユメと呼んでいいわよ」
「ありがとう。そう言えば、週末はどうしてた?」
ユメは肩をすくめた。「あなたこそ」
健斗は家の手伝いをしていたと伝えた。
「何度も会おうとしたのよ」
「そうなの?」
「普通、そうでしょう!?」ユメは睨んだ。「深夜の学校であんなスペクタルな体験したら、誰かに話したくたくなるものでしょう、普通!」
「まあ、確かに」
ユメは吐息を漏らした。
「あなたもだいぶ変ね」
「そうかな」
「そうでしょ」ユメは肩をすくめた。「そもそもわたしと仲良くなろうなんて男子、なかなかいなし」
「美人に見える!」
「わたしには、もてのモの字もないのよ」
「そうかな。可愛いと思うけど」
佐々木がやって来た。
「おい。お前たち、ずいぶん仲良さそうだな」
「ただのお喋りよ」
健斗は佐々木を見た。彼は、このクラスで初めて会話した男子だ。新聞部に所属していて、情報通で通っている。
「何か要か?」
佐々木は、健斗を教室の端まで連れだした。
「おまえたち、どういう関係だ!?」
「何のことだよ」
「あの、変人と仲がよさそうに見える」
「変人はひどいよ」
「あいつ笑っていたぞ。いいか! あいつは、変わり者で、クラスから浮いた存在として扱われている。知っているな? あいつが、小学生の時にやらかしたえエピソードを?」
「まあ」
「いちおう説明しておくが、深夜の学校に忍び込んだり、警察署の保管庫にまで忍び込んだ女だぞ。分かるな? ヤバい女なんだ。その事は、このクラス、いや学年全体も知っている。だから、取扱注意の女なんだよ」佐々木は深呼吸した。「それなのに、一体どうやって、あの女と会話している? そもそも、どうやって仲良くなったんだ?」
「一緒に出掛けて」
佐々木は目を見開いた。「まさか、デートしたのか!?」
「二人で出かけた、という意味でなら」
佐々木は、天を仰いだ。
「お前と言う男は、罪深い奴だ! あの女は、変わり者ということさえのぞけば、その美貌は、学年……いや、全国区だぞ」
健斗はユメを見た。
「まあ、確かに目鼻立ちは、整っているな」
「き、貴様! あの美貌を見てそれだけか!?」
「付き合いたいのか?」
佐々木は床に手を突いた。「断じて違う」
「だったら」
佐々木は大きく息を吸った。「俺が言いたいのは、あの女とどうやって仲良くなかったのかだ。そもそも、貴様に言っておかなければならい。あの女は見てくれがいいのは、分かっているな?」
健斗は頷いた。
「となれば、分かるだろう。あの女はモテた」
「モテなかったって、聞いてるけど?」
「断じてあり得ん。まず、この学校に入学した当時、彼女はもともと有名人だった。分かるよな。学校に忍び込んだり、警察署に忍び込んだすれば、悪い意味で有名人だ。そんな噂の中、この学校に入学した。それはもう、すごかった。他校もふくめ、彼女を見ようと生徒が集まってきた。そして、驚いた。なぜなら、やばいと噂されていた女を見てきたら、イスに座っているのは、ルックス最強の美少女だったからだ。あまりの衝撃に、ファンクラブも出来たほどだった」
「それはすごい」
佐々木は頷いた。「だが、それも長くは続かなかった。しょせんルックスだけで、中身がいちゃった子となれば、ファンは人はすぐに去って行った」
「そのあとは?」
「彼女は、一人ぼっぴちに戻った」佐々木は考え込んだ。「それから、彼女はよけいに人を寄せ付けなくなった。もともと、誰かと行動をとものするような奴じゃなかった。ファンがいた頃も、誰一人として心を開かなかったし、近寄ることさえ、許さなかった。だけど問題はここからだ。お前があらわ得た瞬間、彼女は変った。俺にもよく分からんが、おまえにだけは心を開き、いっしょに行動し、まして当時から一度も見せなかった、笑顔を見せている。その中心にはお前がいる。おれは新聞部だ。この事態に、なぜなのか気になるのは当然だろ?」
健斗は頷いた。
「何が起こったのか真相を教えてくれ」
健斗は、答えなかった。
「どうした?」
「ぼくにも分からない」
「そんなはずない」佐々木は言った。「お前たち、すでにそういう関係なのか!?」
健斗は断固として首をふった。
「それはない」
ユメが大股でやって来た。
「二人で何の話しているの?」
健斗は肩をすくめた。
「な、何でもない」佐々木は言った。
「佐々木くん?」ユメは佐々木を見た。「私のことを話してなかった?」
健斗は事情を説明した。
「わたしたち、そんな不純な関係じゃないわ」
「本当かな?」
「それでさっきから、わたしの、顔や、身体を見つめていたのね」
「違う。それは間違っている……」
「黙りなさい!」ユメは佐々木を睨んだ。
「罰を与えるわ」」
「ばばばばばば、ばちゅぅ!?」
ユメは大きく拳を振り上げた。
「痛くしないから、安心して」
佐々木は震え出した。
ユメは、天高く拳を振り上げたまま動きを止めた。
「罪状は、わたしの過去について話したことや、わたしの顔や、体を舐め回すように見た罰よ」
「本当にぶたないよな……?」
ユメは、その拳を振りかざした。佐々木は、頭を強打され倒れた。そして、ゴロゴロと床を転がった。
クラスの目撃者たちは、顔を引きつらせて硬直した。
「本当にやるとは!?」健斗は慌ててユメの前に立った。
「彼が悪いんだよ」
「本当にそうなのか?」
「うそを吐くから。だって、わたしの顔や身体を見ていたのは事実よ」
「目に入ったくらいだ」
「だからって、私の過去を話すのを許可した覚えはないわ」ユメは、拳を振り上げた。
「何しているの?」健斗は一歩後退した。
「きみも、同罪だよ。どうして私の許可もなく、話しを聞いたりしたの?」」
健斗はヒア汗を流した。「何となく」
「勝手に、乙女の秘密を知っていいことにならないわ」
「ごめん」
「きみも、天誅だわ!」
健斗は改めてユメを見た。
ナイスバディだ。顔は美しく、豊満な胸に、細いウエスト……。
初めて気づいた。
「その目はなに?」
「きみを誤解していた」
ユメは拳を振りおろそうとして止めた。「弁解のチャンスをあげる」
「いいのか?」
「その……慈悲よ、じひ」
「ありがたい」
「調子に乗らないでよ」
「もちんだ。大切にする」
「それで、どうして私の過去の話しなんか?」
健斗は言葉を選んだ。間違えれば、命はない。
「やっぱり、ただの興味本位だ」健斗は言い放った。「ただ何となく、きみの過去の話を聞き、ついでに聞いたあとで、ルックスにも興味を持ってしまった!」
「はあ、それどういう事?」
「そのままの意味だ。君はナイスバディ―だ!」
ユメは拳を固めた。「つまり、開き直ったという事ね」
健斗は大げさに首肯した。
「最大の侮辱だわ!」
「それが現実だ。ぼくは、君のすばらしさに今気づいた」
「死ぬ覚悟はできているでしょうね」ユメは腕まくりした。
健斗は、制服のシャツを脱ぎ捨てた。
「打ち込んで来い」
「は!? 何言ってんのよ」ユメは絶句した。「わたしを試すつもり!?」
健斗は言った。「ぼくは言ったはずだ。君と出会ったときに、きみを守ると。自分でもその言葉の意味はよく分からない。でも、覚悟を決めたという意味において、ぼくは、君にその覚悟を示そう」
「意味不明だわ」
健斗は大きく気を吸った。「打って来い!」
「あなたバカよ」
健斗は頷いた。
「そんなに私のパンチは甘くないわよ」
「受けて立つ」
ユメは大きく振りかぶると、クラス中が見守る中、正拳を構えた。
「私、空手をやっていたの!」
クラスの連中は、ユメが一方的に制裁を加えようとしていると思っている。
「拝見!」
ユメは、正拳を放った。それは、見事、健斗の腹に命中した。
健斗は、足を震わせながら耐え抜いた。
脚は、小鹿のように震えている。
「耐え抜いたぞ」
「やるじゃないの」ユメは額の汗をぬぐった。
「これが、ぼくの覚悟だ」
「意味不明だけど、あなたのこと認めてあげなくちゃね」
倒れていた、佐々木は起き上がった。
「あの、ボクは?」
「あなたは許されていないわ」
「慈悲を」
ユメは考えた。「いいわ。あなた私のパシリになりなさい」
「パシリとは?」
「使いパシリの略よ。私が、お腹がすいたら、焼きそばパンを買ってきなさい。そして、のどが乾いたと言ったら、冷たいコーヒー牛乳を買ってきなさい。つまり、わたしの奴隷よ」
「断ることは?」
「許さないわ。もし、断ったら、私の身体を舐め回すように見ていたと、体育の脳ミソが筋肉で出来ている、鮫島先生に言いつけるから」
「ご慈悲を」
ユメは慇懃に言った。「昇格を考えるわ。最初は、パシリ。平民。課長、部長。そして、副隊長のように、地位を格上げしてあげる」
「がんばります」佐々木は握手を求めた。
「その手は?」
「仲直りの印にと……」
「ぐぎゃああっッ」
健斗は震えた。「一点の狂いもない、素早い目つぶし!」
「気安く、わたしの間合いに入り込まないで」
佐々木はごろごろと床を転げ回った。
「お前は、悪魔だ」
そして、佐々木は、涙目で起き上がった。「何でも、言ってください。ぼくの取り柄は、情報収集や、足が使えますので」
「いいわ。期待しているからね、佐々木君」
「頑張ります」佐々木は疑問を口にした。「さ、最後に、聞いてもいい?」
「何よ」ユメは髪を払った。
「どうして、健斗だけそんなにとくべつなの?」
ユメはもう一度、髪を払った。「特別じゃないわ」
「そうかな? そう見えるけど」
「彼は、わたしという存在を、特別にしてくれるかもしれない」
「どいうこと?」
「出会った瞬間に、何かを感じたのよ」
佐々木は首を傾げた。
ユメは笑う。「彼は、きっと何かを引き起こしてくれるはずよ」
「どういう意味?」
健斗は肩をすくめた。
「これから凄いことが起こるわよ」
健斗はなぜか身震いした。
「やっぱり、いっちゃっていますね」
ユメは、何事もなかったかのように、席に座った。
そして、ホームルームが始まっていく。
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